私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

文字の大きさ
87 / 105

87.立ち位置〜ウィリアム視点〜

 フローレンス公爵家。
マデリーン王国設立時からある、最古参の公爵家だ。

 だからこそ、フローレンス公爵家に令嬢が生まれれば王子の、可能なら王太子の婚約者となるのが当たり前とされていたし、公爵はもちろん公爵夫人も王家への忠言をする存在だった。

 理解はしていた。
だけど公爵も夫人も、そしてアイシュも権力を振りかざすようなことはなく、むしろ他の公爵家や侯爵家の当主を立てるような言動をしていたから、忘れていたんだ。

「領地譲渡の書類は、すでに陛下の印璽はいただいております」

「・・・」

 僕は、父上から渡された書類数枚に目を通す。
 確かにそこには、父上の印璽が押されていた。

 だがそれらはどれも最近の日付ではなく、数年前からそれこそ十年以上前のものまである。

 どういうことだ?
何故、領地譲渡などをそんな昔から?

「どういうことですか?父上」

「・・・フローレンス公爵家は、王家並みに血を重んじている。だから歴代子供は二人以上存在した。だが、夫人は子が出来にくい体質らしくてな、アイシュ嬢の時に難産で次の子を望めば母体が危険だと言われたのだ。母親の体質は娘に受け継がれやすいから、フローレンス公爵家から婚約の辞退は何度かあった。だが、確定でもないことだと婚約を押し通したのだ。子が出来ぬ理由でなら、お前に側妃でも愛妾でも持たせれば良いと思ってな」

「そんな・・・」

「婚約が決まったことで、公爵は嫁いだ妹にどうするか確認したらしい。フローレンス公爵家を継ぐかということをだ。だが妹君は伯爵家に嫁いでいてな、分不相応だと断ったそうだ。嫁いだ時点で自分は伯爵家の人間だと。夫である伯爵も、その両親も弁えた人間で、妻の言い分を認めたらしい。まぁ、得られるのは権利だけでなく義務もだからな。欲をかけば、失うものも多い。そこでフローレンス公爵は、領地を少しずつ譲渡し始めていたようだ」

 アイシュが王家に嫁げば、後継がいなくなるから?
 だが、アイシュに子が二人以上出来ないとも限らないだろう?

「王家のスペアを考えても、三人以上は子を産まなければならない。だからこそ私も側妃を娶ってミリアが生まれた。それがだからだ。フローレンス公爵は第二夫人を娶ることを拒む代償に領地を手放したのだろう」

 そうか。
母上も難産で、僕の後に子は望めなかったという。

 だから父上は、側妃を迎えてミリアが生まれたということか。

 アイツが僕によそよそしいのは、自分の立ち位置を良く理解していたからだったのか。



感想 214

あなたにおすすめの小説

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

もうあなた達を愛する心はありません

佐藤 美奈
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。 差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。 理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。 セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。