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87.立ち位置〜ウィリアム視点〜
フローレンス公爵家。
マデリーン王国設立時からある、最古参の公爵家だ。
だからこそ、フローレンス公爵家に令嬢が生まれれば王子の、可能なら王太子の婚約者となるのが当たり前とされていたし、公爵はもちろん公爵夫人も王家への忠言をする存在だった。
理解はしていた。
だけど公爵も夫人も、そしてアイシュも権力を振りかざすようなことはなく、むしろ他の公爵家や侯爵家の当主を立てるような言動をしていたから、忘れていたんだ。
「領地譲渡の書類は、すでに陛下の印璽はいただいております」
「・・・」
僕は、父上から渡された書類数枚に目を通す。
確かにそこには、父上の印璽が押されていた。
だがそれらはどれも最近の日付ではなく、数年前からそれこそ十年以上前のものまである。
どういうことだ?
何故、領地譲渡などをそんな昔から?
「どういうことですか?父上」
「・・・フローレンス公爵家は、王家並みに血を重んじている。だから歴代子供は二人以上存在した。だが、夫人は子が出来にくい体質らしくてな、アイシュ嬢の時に難産で次の子を望めば母体が危険だと言われたのだ。母親の体質は娘に受け継がれやすいから、フローレンス公爵家から婚約の辞退は何度かあった。だが、確定でもないことだと婚約を押し通したのだ。子が出来ぬ理由でなら、お前に側妃でも愛妾でも持たせれば良いと思ってな」
「そんな・・・」
「婚約が決まったことで、公爵は嫁いだ妹にどうするか確認したらしい。フローレンス公爵家を継ぐかということをだ。だが妹君は伯爵家に嫁いでいてな、分不相応だと断ったそうだ。嫁いだ時点で自分は伯爵家の人間だと。夫である伯爵も、その両親も弁えた人間で、妻の言い分を認めたらしい。まぁ、得られるのは権利だけでなく義務もだからな。欲をかけば、失うものも多い。そこでフローレンス公爵は、領地を少しずつ譲渡し始めていたようだ」
アイシュが王家に嫁げば、後継がいなくなるから?
だが、アイシュに子が二人以上出来ないとも限らないだろう?
「王家のスペアを考えても、三人以上は子を産まなければならない。だからこそ私も側妃を娶ってミリアが生まれた。それが義務だからだ。フローレンス公爵は第二夫人を娶ることを拒む代償に領地を手放したのだろう」
そうか。
母上も難産で、僕の後に子は望めなかったという。
だから父上は、側妃を迎えてミリアが生まれたということか。
アイツが僕によそよそしいのは、自分の立ち位置を良く理解していたからだったのか。
マデリーン王国設立時からある、最古参の公爵家だ。
だからこそ、フローレンス公爵家に令嬢が生まれれば王子の、可能なら王太子の婚約者となるのが当たり前とされていたし、公爵はもちろん公爵夫人も王家への忠言をする存在だった。
理解はしていた。
だけど公爵も夫人も、そしてアイシュも権力を振りかざすようなことはなく、むしろ他の公爵家や侯爵家の当主を立てるような言動をしていたから、忘れていたんだ。
「領地譲渡の書類は、すでに陛下の印璽はいただいております」
「・・・」
僕は、父上から渡された書類数枚に目を通す。
確かにそこには、父上の印璽が押されていた。
だがそれらはどれも最近の日付ではなく、数年前からそれこそ十年以上前のものまである。
どういうことだ?
何故、領地譲渡などをそんな昔から?
「どういうことですか?父上」
「・・・フローレンス公爵家は、王家並みに血を重んじている。だから歴代子供は二人以上存在した。だが、夫人は子が出来にくい体質らしくてな、アイシュ嬢の時に難産で次の子を望めば母体が危険だと言われたのだ。母親の体質は娘に受け継がれやすいから、フローレンス公爵家から婚約の辞退は何度かあった。だが、確定でもないことだと婚約を押し通したのだ。子が出来ぬ理由でなら、お前に側妃でも愛妾でも持たせれば良いと思ってな」
「そんな・・・」
「婚約が決まったことで、公爵は嫁いだ妹にどうするか確認したらしい。フローレンス公爵家を継ぐかということをだ。だが妹君は伯爵家に嫁いでいてな、分不相応だと断ったそうだ。嫁いだ時点で自分は伯爵家の人間だと。夫である伯爵も、その両親も弁えた人間で、妻の言い分を認めたらしい。まぁ、得られるのは権利だけでなく義務もだからな。欲をかけば、失うものも多い。そこでフローレンス公爵は、領地を少しずつ譲渡し始めていたようだ」
アイシュが王家に嫁げば、後継がいなくなるから?
だが、アイシュに子が二人以上出来ないとも限らないだろう?
「王家のスペアを考えても、三人以上は子を産まなければならない。だからこそ私も側妃を娶ってミリアが生まれた。それが義務だからだ。フローレンス公爵は第二夫人を娶ることを拒む代償に領地を手放したのだろう」
そうか。
母上も難産で、僕の後に子は望めなかったという。
だから父上は、側妃を迎えてミリアが生まれたということか。
アイツが僕によそよそしいのは、自分の立ち位置を良く理解していたからだったのか。
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