私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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92.安心できるもの

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 クライゼン王国の王太子殿下は、すぐに国王陛下に手紙を書いてくれた。

 この行動が迅速なところにも、この王太子殿下の好感度が上がった。

 そういえば、アスラン殿下とフランチェスカ様の不貞疑惑の時も、すぐに国王陛下に話をして影を動かしたのだったわ。

 こういうところが、ウィリアム殿下との差だと思う。

 クライゼン王国の国王陛下も王妃様も、私のことを本当の娘のように可愛がってくださっていたし、アスラン殿下のことで申し訳ないと感じてくださっていたから・・・

 ズルい話だけど、少しはそのことが良いように作用するといいけど。

 もちろん、フローレンス公爵家を受け入れることで、マデリーン王国との関係が悪くなるかもだから、国王としての判断になるんでしょうけど。

 それを理解した上で、アンブレラ王国の国王陛下は受け入れてくれるとおっしゃった。

 ありがたいことだわ。

 お返事待ちになったのだけど・・・

「フローレンス嬢は、その、私や両親に何か思うところはないのかい?」

 不意に王太子殿下が問いかけて来られた。

 少し不安げに揺れる瞳。
本当に・・・真っ直ぐで、お優しい人。

 裏切られたのは自分だって同じなのに。
むしろ婚約者と弟に裏切られて、それを裁かねばならなかったのだから、私よりお苦しいはずなのに。

「王太子殿下、私は確かにアスラン殿下を好きでした。フランチェスカ様のことも、初めて出来た友人だと、心から嬉しく思っていました。ですから、あの二人には強い落胆と不満を持っています。あのようなことをした後に縋りつかれても、信じられない程度には。ですが、自身の息子の罪を明らかにして、あのように厳しい判断をされた国王陛下にも王妃様にも、申し訳ないと思いこそすれ、不満などはありません。それは王太子殿下、貴方様に対してもそうです。ご自分も傷ついていながら私を気遣って下さったこと、心から感謝しております」

「・・・それは当然のことだ。私がもっと早く気付いていれば、フローレンス嬢にあのような場面を見せることはなかったものを」

「いえ。自身の目で見たからこそ、決断が出来たのです。それに・・・私には私を大切に思ってくれる家族やリュカがいましたから」

 むしろ、あのことがあるから受け入れてもらえるかもと考えてる私を、ズルいと責めても良いのに。

 やっぱり王太子殿下は、ご両親によく似てお優しい方ね。
 エヴァリーナ王女殿下におススメして良かったわ。

 エヴァリーナ王女殿下も、ご年齢の割にしっかりされていて、しかも配慮もできる方。

 この方々の治める国なら、どこかの王太子の国よりも何倍も安心して暮らせそうだわ。

 
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