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聖女の本領

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 エモンド様から渡されていた魔道具は、離れた場所にいても声を届けることができるというもの。

 あの人、本当に天才なんだわ。

 ルーカス様と一緒に、西側へと急ぐ。

 店主は、ポーションを西側に集めていると言っていた。

 この国で扱われているポーションは、万能薬ではない。

 あくまでも、本人の体力を活性化させるためのものだ。

 体力は回復するが、同時に体内にある病の元も活性化するのだ。

 つまりは元々免疫力の弱い子供や老人は、活性化した病巣に余計に苦しむことになる。

 病気の元を取り除く薬を処方してから、ある程度回復したのちにポーションを使うのが正しいのだ。

 もちろん、元々免疫力の高い人間は、ポーションの力を借りて回復できるのだけど。

「お姉様!」

「フロラリア!どんな状況なの?」

 フロラリアとエモンド様は、西側の入り口で私たちを待っていた。

「とにかく子供や老人の熱が下がらないようで、世話をしようにも女性も寝込んでいる人が多くて、病気から回復した男の人ではなんとも・・・」

「症状の重いところから回りましょう。フロラリア、聖女の癒しの魔法なら病の元は断てるはずよ。エモンド様はその後にポーションを飲ませてください。それから、これは魔力回復薬です。フロラリアの手が冷たく感じたら飲ませてください。魔力欠乏症の前兆ですから」

「はいっ!必ず!」

 フロラリアは目を離すと無茶してしまうから、エモンド様にしっかりお願いしておく。

 私が一緒にいれば良いんだけど、状況が状況だ。

 私もフロラリアとは別に、動いた方がいいだろう。

「ルーカス様、私たちも行きましょう」

「ユースティティア様、でも、ポーションでは回復しきれないのですよね?」

「ええ。聖女の癒しの魔法が有効ですね」

 戸惑った様子のルーカス様に、私は肝心なことを言っていなかったことを思い出した。

「大丈夫です。私は聖女ではありませんが、同じ力は使えますから」

「え?」

「私はフロラリアに聖女の力を与えた女神なのです。寿命を終えた後、私は女神にことが決まっています。ユースティティアとしての体はただの人間ですが、女神としての能力は持っています」

「女・・・神・・・」

 私が女神なことは、国王陛下や王妃様、第一王子殿下、そして私のお父様とお母様、フロラリアしか知らない。

 いわゆる国家機密というやつだから、婚約者になったルーカス様にお伝えしていなかったわ。

 基本的に漏れてはいけないことだから、本来なら婚姻するまでは教えない予定だった。

 でも、人の命の方が大切だもの。
それに、ルーカス様なら信じられるきがするの。
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