悪役令嬢？寝言は寝て言え〜全員揃って一昨日来やがれ〜

二度目はない

「も、申し訳ございません！フロライン公爵令嬢様！フロライン公爵夫人様！そしてガロード子爵令息様」

　レッチェル伯爵夫人が、マルチナの頭を押さえつけて共に頭を下げる。

　うーん。
こんなに常識ある母親から、どうしてこんな非常識が生まれたんだろう。

　これは父親の血とか？
レッチェル伯爵はどういう人なんだろ。後で、お父様たちに聞いてみよう。

「おっ、お母様っ？何をなさるの？いっ、痛いっ！」

「レッチェル伯爵夫人！マルチナが痛がっている！」

「王太子殿下は黙っていてください。婚約者の家を没落させたいのですかっ？」

　あら、まぁ。
止めようとした王太子にまで、言い返しているわ。

　分からんでもないけど。

　いくら王太子といえど、ここで私たちに謝罪もせずに、謝罪した伯爵夫人を貶める発言なんかしたら・・・

　王家の子供は王太子のジェラートだけだけど、王家の血を引いている子供は他にもいるのよ？

　実際、うちのお父様も王位継承権第六位かなんかだし。

　公爵家は王族との婚姻とかの関係で、王族の血が濃薄ではあるけど入っているのよね。

「没落って・・・そんな大袈裟な」

「そもそも、我が娘が伯爵令嬢なのは事実です。それを指摘されたからといって、何故それが虐めになるのですか？フロライン公爵令嬢様はそんなことをおっしゃらないと思いますが、たとえおっしゃったとしても、マルチナの言動に問題があり、それを注意する上でのことに違いありません」

「お母様っ！どうして私よりアレーシア様の味方をするの！酷いわ！」

「酷いのは貴女の言動よ。周囲をご覧なさい。王太子殿下の婚約者に相応しくないと思われる言動をしていることにいい加減気付きなさい！」

　確かにね。
婚約披露パーティーで起こす騒動じゃないわ。

　そして、私の名前を勝手に呼ぶなよ。

　伯爵令嬢だよね？その程度のマナー、伯爵家で教わっているよね？

「レッチェル伯爵夫人。今回はお祝いの席ということで見逃しますわ。ですが、次はありませんわよ。それから・・・旦那様、王太子教育及び王太子妃教育を再度徹底してくださいませ」

「・・・分かった。教育係に伝えておく」

　お父様が直接王太子殿下たちの教育をしているわけではないけど、宰相として教育係の任命や、教育の進み具合などの報告を受けているらしい。

　お母様に言われたら・・・
了承するしかないよね。

　お父様はとにかくお母様ラブだし。
お母様ってば、お父様が否と言ったらそのまま実家に帰るとか言いそうだもん。