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15歳

91ページ:親の気持ち

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「シエル」

 お父様が渋い顔をされている。反対されるのかな。
 そうよね。王女だし、もしかしたら政略結婚の相手がいるのかもしれない。

「父親としては、愛する娘には、想い思われる相手と結婚して欲しいと思っている」

「母親としても、シエルちゃんには幸せになってほしいわ」

「お父様、お母様・・・ありがとうございます。王女である私を、政略結婚の道具でなく、普通の娘として扱ってくださって」

 私が深々と頭を下げると、お母様に抱きしめられた。
 お父様が頭を撫でてくれる。

「だけど、私たちがどう言っても、きっとシエルは指輪に血を捧げるのだろう?」

「シエルちゃんは、昔からこうと決めたら絶対譲らないものね」

 え。そんなに頑固者だったかな。
まぁ、「こうします」的な報告が多かったとは思うけど。

「精霊王様にシエルじゃなかったって言われたら、すぐに戻って来れば良い」

「そうよ。離婚できるのか分からないけど、別居すれば良いわ。アレクセイをさっさと国王にして、一緒に郊外で暮らしましょう?」

 離婚。
離婚ってできるんだろうか。

 私はチートではあるし、婚姻したら人の理からは外れるらしいけど、それでも精霊王たちほど寿命は長くないだろう。

 離婚出来ないなら、私が亡くなるまで待ってもらえるかな。

 お父様たちは、私の決めたことならって納得してくれてるみたい。

 やっぱり、お父様とお母様の子供になれて良かった。
 
「ありがとうございます。私、行って来ますね」

「シエルなら大丈夫だと思うけど、自分の力を過信しすぎてはいけないよ。無理そうだと思ったら、精霊王様たちには悪いが、逃げなさい。どんなことをしても、生き残りなさい」

「シエルちゃん。もし、この国が滅ぶことになったとしても、それはシエルちゃんが背負うことではないの。貴女は神様じゃなく、私たちの大切な娘なの。だから、自分のことを大切にしてちょうだい」

「お父様、お母様」

「それでも、優しいシエルは、誰かのために頑張るのだろうね。だけど、私たちがそう思っていることだけは忘れないで欲しい」

 お父様の胸に顔を埋める。
こんな風に私を理解して、私を大切に思ってくれているお父様とお母様だからこそ、私の全てを以て守りたい。

 私は、そんなに出来た人間じゃない。
マモンもマズルも、貴族から平民にして辺境へと送ったし、スコンブも銀縁メガネも、あっさりと断罪した。

 魔王だって有無を言わさず倒したし、アル兄様の気持ちにだって応えなかった。

 私の守りたいものはお父様とお母様。
ただ、その中に、ノワールがほんの少し入り込んだ、それだけだ。
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