はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな

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第五十七話

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「まだ辞退してないのかよ。没落侯爵家のくせに!」

 その声に、私は足を止めました。

 護衛に視線を向けると、静かに頷かれます。

 チラリと物陰から覗くと、二人の少年がジェレミーの前に立っています。

 あの後、顔は確認しましたから間違いなく彼らがテクノ伯爵令息とリップル子爵令息ですわね。

 しかし、カリスタ伯爵家から抗議されなかったとはいえ、こうも愚行を繰り返すなんて。

 ・・・いえ。そういえば、侯爵家の嫡男でありながら、元婚約者様も同じように愚行を繰り返していらっしゃいましたわね。

 こういう輩は、一定数沸くように出来ているのかしら?

 何故ブレンディ侯爵家が没落したのか、それに考えが及びませんの?

 直接の理由は、融資金を返却出来ないからですけど、どうしてそれを急に求められたのかに考えが及ばないと?

 彼らは次男ですけど、そういう噂は貴族の間にすぐに広がるものです。

 それに、十一歳ですわよね?

 という理由くらい、理解できそうですのに。

 ああ。もちろん、婚約を解消したとしても、ブレンディ侯爵家と元婚約者様が誠実であったなら、融資は続ける予定でしたわ。

 婚約ではありませんから、婚約と融資は別問題でしたもの。

 さて、またジェレミーに絡んでいる彼らには、少しお灸を据えた方がいいかしら。

 彼らが何と言おうと、ジェレミーはすでにカリスタ伯爵家の一員。

 そのジェレミーに絡むということは、カリスタ伯爵家に喧嘩を売っているということですもの。

「私の弟に、何かご用かしら?」

 少しヒールの音を立てながら近付くと、令息二人はビクッと体を震わせました。

 まさか、誰もいないと思っていたのかしら?

 それとも、前回苦情が来なかったから大丈夫だと思った?

「え・・・あ、う・・・」

「没落侯爵家だなんて。そうなったのか、ご両親から聞かれていないのかしら?それとも、テクノ伯爵家とリップル子爵家は、カリスタ伯爵家を敵に回しても平気ということかしら?ふふふっ、お家に帰って、ご両親に聞いてみて下さいな。ジェレミーにこう言ったんだけど、って。うちの両親は、とても私とジェレミーを大切にしてくれていますのよ。ご両親もそうだとよろしいわね?」

 大抵の家は、家を取りますわよ。
何故なら、当主として使用人や領民に責任があるから。

 それは仕方のないことです。

 テクノ伯爵とリップル子爵が次男を切り捨てるかどうかは知りませんけど、カリスタ伯爵家の持つ商会を敵に回す貴族家はないでしょう。

 それをすればどうなるのか、前例がありますものね。
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