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侍従、震える。
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「シキがティアラに近づくのいやなの」
アイル様は、多分深い意味はなく言ったに違いない。
だけど、その言葉は俺に甘く響いた。
その嫉妬に似た言葉に歓喜すら覚える。
ベッドに横たわるアイル様を抱きしめながら、何度も背中を撫でる。
「大丈夫です。俺はあんなのに近づいたりしませんから」
たとえ近づいても、あんなのにどうこうされることはないが、アイル様に不安をカケラも感じさせたくない。
「シキ・・・そばに、いて」
「絶対におそばを離れたりしません」
「・・・えーと、馬に蹴られたくはないけど、僕がいるの忘れてない?そういうのは、2人きりになってからにしない?」
フェルゼン様の声に、腕の中のアイル様が、ピクリと震えた。
せっかく、いい雰囲気だったのに。
大体、2人きりでこんな雰囲気になったら、歯止めが効かなくなる。
俺は、そっとアイル様の上から体を離した。
と。
俺の服の袖がグイ!と引かれる。
視線をやると、アイル様の細い指が、俺の服をぎゅっと握っていた。
「アイル様?」
「え、あ、う・・・ごめんなさい」
どうやら、無意識に袖を握っていたらしい。
可愛い。
まるで俺が離れるのが嫌だって言ってくれているみたいだ。
「・・・表情変わんないけど、絶対喜んでるよね?まぁ、気持ちはわかるけど。なんか、可愛いよ・・・いや、ちょっと待って。そういう意味じゃないから!僕はエリル嬢に婚約者になってってお願いしてるから!」
俺の視線に慌てたように言うフェルゼン様に、ため息を吐く。
アイル様の大切な妹君のエリル様との婚約というだけでも、イラつくんだが?
だが、フェルゼン様がいてくれたおかげで、アイル様が大事に至らなかったのも事実だ。
「それで、フェルゼン様。アイル様に悪影響は残っていないのでしょうか?」
「あー、うん。ちょっと恐怖とかの感情面での影響はあるみたいだけど、そこは婚約者殿がどうにかすれば良い話だから。呪詛は完全に抜けたみたいだ。良かったよ、あの場にいて。すぐに対処出来たのと、元々対策してたのが功を奏したね」
「フェルゼン様がいて下さったおかげです」
アイル様にもしものことが有れば、あの女を八つ裂きにしても気が済まなかっただろう。
俺は、アイル様の手の甲をゆっくりと撫でながら、フェルゼン様に頭を下げる。
俺の袖を掴んでいたアイル様は、それに気づいて急いで手を離そうとしてたけど、俺はその手をぎゅっと握って、離すつもりはない。
「さて、と、あの女はヴェルハルト殿下を狙ってるということか」
フェルゼン様の言葉に、アイル様が顔を上げた。
「あの・・・彼女は多分、ハーレムエンド・・・いえ、あの、キンバレー様を始めとして全員を狙っているのだと思います」
アイル様は、多分深い意味はなく言ったに違いない。
だけど、その言葉は俺に甘く響いた。
その嫉妬に似た言葉に歓喜すら覚える。
ベッドに横たわるアイル様を抱きしめながら、何度も背中を撫でる。
「大丈夫です。俺はあんなのに近づいたりしませんから」
たとえ近づいても、あんなのにどうこうされることはないが、アイル様に不安をカケラも感じさせたくない。
「シキ・・・そばに、いて」
「絶対におそばを離れたりしません」
「・・・えーと、馬に蹴られたくはないけど、僕がいるの忘れてない?そういうのは、2人きりになってからにしない?」
フェルゼン様の声に、腕の中のアイル様が、ピクリと震えた。
せっかく、いい雰囲気だったのに。
大体、2人きりでこんな雰囲気になったら、歯止めが効かなくなる。
俺は、そっとアイル様の上から体を離した。
と。
俺の服の袖がグイ!と引かれる。
視線をやると、アイル様の細い指が、俺の服をぎゅっと握っていた。
「アイル様?」
「え、あ、う・・・ごめんなさい」
どうやら、無意識に袖を握っていたらしい。
可愛い。
まるで俺が離れるのが嫌だって言ってくれているみたいだ。
「・・・表情変わんないけど、絶対喜んでるよね?まぁ、気持ちはわかるけど。なんか、可愛いよ・・・いや、ちょっと待って。そういう意味じゃないから!僕はエリル嬢に婚約者になってってお願いしてるから!」
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「それで、フェルゼン様。アイル様に悪影響は残っていないのでしょうか?」
「あー、うん。ちょっと恐怖とかの感情面での影響はあるみたいだけど、そこは婚約者殿がどうにかすれば良い話だから。呪詛は完全に抜けたみたいだ。良かったよ、あの場にいて。すぐに対処出来たのと、元々対策してたのが功を奏したね」
「フェルゼン様がいて下さったおかげです」
アイル様にもしものことが有れば、あの女を八つ裂きにしても気が済まなかっただろう。
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俺の袖を掴んでいたアイル様は、それに気づいて急いで手を離そうとしてたけど、俺はその手をぎゅっと握って、離すつもりはない。
「さて、と、あの女はヴェルハルト殿下を狙ってるということか」
フェルゼン様の言葉に、アイル様が顔を上げた。
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