転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな

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モブ、涙する。

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「夢・・・本当に?」

 ちゃんとヴェルハルトはイレーヌのそばにいる?

 シキの指が、そっと私の涙を拭ってくれる。優しい温もりに、少しだけ震えが治った気がした。

「泣かないで下さい、アイル様。大丈夫です。殿下はレジスタ公爵令嬢様のことをとても大切にされています」

「それに、あの男爵令嬢が誰にいじめられたって?そんな馬鹿なことを信じるのは、脳筋のオリバーくらいだよ」

 カイルの言葉に、再び震えが来た。
そう。オリバーはティアラの言葉だけを信じて、私を殴ろうとまでしていた。

 あの時、ヴェルハルトたちが来ていなかったら、私は殴り飛ばされていたんじゃないだろうか。

「あ、ごめん。怖いことを思い出させて。本当にごめんよ。君の婚約者殿が怖いから、泣かないで?」

 慌てたようなカイルに、思わずフッと笑みが浮かんだ。

 シキが怖いからって。
確かにシキは、私のことを大切にしてくれるけど、いくらなんでも侯爵子息のカイルに、何かしたりしないわ。

「それに、あの2人は王宮で拘束してるから、安心して?」

「拘・・・束?」

「倒れた君を運ぼうとした彼を、止めようと暴れたからね。殿下が護衛に拘束させた。それでも喚き散らすから、僕が魔法で眠らせた。ちゃんと牢に入れるように言っておいたから、大丈夫」

 牢に・・・
ちょっと体から力が抜けた。

 私は思っていたよりあの2人のことを、恐怖していたみたいだ。

 何を言っても聞いてもらえず、暴力まで振るわれそうになったのだ。
 それに・・・
ティアラのあの目。

 ゾッとした。

「アイル様っ?」

「シキ・・・怖い。ティアラの目が・・・ひぅ!」

 息がうまくできない。

 縋り付くように伸びた私の手を取って、シキがベッドで眠る私の上に、覆いかぶさるようにして抱きしめてきた。

「大丈夫です。ゆっくり息を吸って。俺がずっとおそばにいます。2度とアイル様をこんな目に合わせたりしません」

「やだ、いや。シキが・・・シキ、やだ」

「何がお嫌なのですか?」

「シキがティアラに近づくの、やだ。いや、嫌なの」

 シキは私を安心させるように、何度も背中に手を回して、撫でてくれる。

 ティアラのことが、怖い。
あんな目をするなんて。

 あれは人を憎む目だ。人を恨む目だ。
ヒロインが・・・私の大切なヒロインがする目じゃない。

 転生者だからなのだろうか。だから、あんなに歪んでしまったのだろうか。

 そして、カイルは呪詛と言った。
そんな力を持った相手に、私は・・・
私の大切な人たちを誰も近づけたくない。
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