転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな

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モブ、決意する。

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「アイル様!」

 シキが耐えきれないように、私を抱きしめた。
 その声と体が少し震えていたのは、それほどまでに私のことを案じてくれていたということだ。

 私はその背中に手を回した。
自分の魔力を対価に差し出してまで、私を死なせたくないと願ってくれた人。

「シキ・・・好き」

「俺も、アイル様を心からお慕いしております」

 ぎゅっと抱きつけば、私を抱きしめたまま、シキがベッドへと私を戻した。

 つまり、その・・・
まるで押し倒されてるみたいな状態で。

 恥ずかしいと、頭の片隅では思うのに、シキの青い瞳がジッと私から離れないから、私も目を逸らせない。

「アイル・・・様」

「シ・・・キぃ」

 近づいてくる顔に、まるでねだっているみたいな、甘い声が出た。

「愛しています。この艶やかな黒髪も、意志の強そうな黒曜石の瞳も、容易く手折れそうな体も、甘い声も、エリル様をとても可愛がられているところも、ご両親の伯爵夫妻を大切にされているところも、ご友人のご令嬢を危険を顧みずに助けに行かれるところも、全て、全て、愛しくてたまらない・・・」

 み、耳が死ぬ。
シキの口から紡がれる口説き文句に、頭がクラクラする。

 こんなに想ってくれてる人に、私は何を返せているの?

「シキを忘れていた時ね、神様に言われたの。私の死を覆すために、魔力を対価に差し出してくれた人がいるって。その人は、必要なら自分の命すら対価にしただろうって。私はそれがシキなら良いのにって思っちゃったの。そして、その人のことを私が好きだったって聞いて、それがシキだってストン!って思えた」

「アイル様がいない世界など考えられなかった。だから、魔力を対価に使うことは自然でした。そのせいで俺を忘れても、アイル様が幸せに笑っていてくれるなら、我慢できると思ってたんです」

「シキ」

「そんな俺に、王太子殿下たちは言ったんです。俺がそばにいなければ、アイル様は本当の笑顔にはならないって。だから、必ず婚約者になれって」

 ヴェルハルトたちが?
そう、なんだ。イレーヌやカレリアたちも覚えてたから、声をかけてくれたんだ。

 この時間軸にもティアラはいる?
それとも、ちゃんと乙女ゲーム通りに来年に転入してくる?

 もう、自分がモブだからって、逃げたりしない。

 ヴェルハルトもイレーヌも、みんなみんな大切な人たちだもの。

 私は、シキと幸せになるの。
だから、ティアラには負けない。

「アイル様?」

「シキがいてくれるなら、私は笑顔でいられる。だから、離れないで」

「ずっとおそばに・・・」

 シキの言葉は吐息になって、私の唇に降ってきた。
 私はその温もりから離れないように、その背中にしがみつくのだった。

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