23 / 56
再会
しおりを挟む
「本当に大丈夫か?パパが一緒にいようか?」
過保護なパパに、何度目か数えるのをやめた返事をする。
「大丈夫。だって宣戦布告するだけだもの」
すでに三日前からレイの目撃情報は、王宮に届けられている。
アークラインの王都の食事処や宿屋などに、聖女らしき女性がいたという報告がセドリック様に上がっているはずだ。
呆れたことに、セドリック様は結婚後一年経ってもレイニー様を探していた。
王太子妃はそれで良いわけ?
確かトゥーン伯爵令嬢だったのよね?
それで、母親がローズリッテの父親と再婚して伯爵家は陞爵して公爵家になった。
ローズリッテの父親は、娘を王太子妃にしたかったから、その令嬢がセドリック様の婚約者になり結婚した。
うーん。
政略結婚だから、浮気も許してるということ?
セドリック様のことは何とも思ってなくて、単に王太子妃になりたかったというやつかしら?
王太子妃の考えはわからないけど、セドリック様がレイニー様を好きなのは間違いないわね。
結婚しても探しているくらいだもの。
そんなに好きだったのなら・・・
婚約解消を申し出て欲しかったわ。
ローズリッテの父親は許さなかったでしょうけど。
レイは黒のウィッグをかぶる予定だったのだけど、パパが変化の魔法をかけてくれた。
髪色も瞳も、あの頃のレイニー様になったレイは、サウロン様から受け取った薬を自分のテーブルにある紅茶のポットに投入していた。
さっき、聖女発見の報告を受けたセドリック様が、レイが待つこのカフェに向かったそうよ。
今、私は平凡な茶髪の、レイと同い年くらいの少女の姿で、レイから少し離れた席に座っている。
名乗りを上げる時に、パパがローズリッテの姿に変化させてくれることになっているの。
まずは薬入りのお茶を飲まさなきゃだから、ローズリッテの姿ではいられないのよ。
そういえば、入れた薬が随分多かった気がするけど、何の薬なのかしら。
パパもノインも、私が気にする必要のないものだって教えてくれないのよ。
入口がザワザワとした様子に、私に振り返ったレイに頷き返す。
来たみたいね。
「レイニー!ああっ、本当にレイニーだ!どこにいたんだ?ずっと探していたんだぞ!」
ズカズカとレイの前までやって来たセドリック様は、抱きしめんばかりの勢いだ。
レイは冷静に、目の前の席に座るように促す。
「どうした?レイニー。何で何も言わない?あの可愛らしい声でセドリックと呼んでくれ」
「・・・」
レイは何も言わずに、ポットから紅茶を注ぐと、セドリック様の前に置いた。
「殿下」
カップを持ち上げたセドリック様に、護衛が制止の声をかけるけど、セドリック様は護衛を睨みつけてそのままカップの紅茶を飲み干した。
過保護なパパに、何度目か数えるのをやめた返事をする。
「大丈夫。だって宣戦布告するだけだもの」
すでに三日前からレイの目撃情報は、王宮に届けられている。
アークラインの王都の食事処や宿屋などに、聖女らしき女性がいたという報告がセドリック様に上がっているはずだ。
呆れたことに、セドリック様は結婚後一年経ってもレイニー様を探していた。
王太子妃はそれで良いわけ?
確かトゥーン伯爵令嬢だったのよね?
それで、母親がローズリッテの父親と再婚して伯爵家は陞爵して公爵家になった。
ローズリッテの父親は、娘を王太子妃にしたかったから、その令嬢がセドリック様の婚約者になり結婚した。
うーん。
政略結婚だから、浮気も許してるということ?
セドリック様のことは何とも思ってなくて、単に王太子妃になりたかったというやつかしら?
王太子妃の考えはわからないけど、セドリック様がレイニー様を好きなのは間違いないわね。
結婚しても探しているくらいだもの。
そんなに好きだったのなら・・・
婚約解消を申し出て欲しかったわ。
ローズリッテの父親は許さなかったでしょうけど。
レイは黒のウィッグをかぶる予定だったのだけど、パパが変化の魔法をかけてくれた。
髪色も瞳も、あの頃のレイニー様になったレイは、サウロン様から受け取った薬を自分のテーブルにある紅茶のポットに投入していた。
さっき、聖女発見の報告を受けたセドリック様が、レイが待つこのカフェに向かったそうよ。
今、私は平凡な茶髪の、レイと同い年くらいの少女の姿で、レイから少し離れた席に座っている。
名乗りを上げる時に、パパがローズリッテの姿に変化させてくれることになっているの。
まずは薬入りのお茶を飲まさなきゃだから、ローズリッテの姿ではいられないのよ。
そういえば、入れた薬が随分多かった気がするけど、何の薬なのかしら。
パパもノインも、私が気にする必要のないものだって教えてくれないのよ。
入口がザワザワとした様子に、私に振り返ったレイに頷き返す。
来たみたいね。
「レイニー!ああっ、本当にレイニーだ!どこにいたんだ?ずっと探していたんだぞ!」
ズカズカとレイの前までやって来たセドリック様は、抱きしめんばかりの勢いだ。
レイは冷静に、目の前の席に座るように促す。
「どうした?レイニー。何で何も言わない?あの可愛らしい声でセドリックと呼んでくれ」
「・・・」
レイは何も言わずに、ポットから紅茶を注ぐと、セドリック様の前に置いた。
「殿下」
カップを持ち上げたセドリック様に、護衛が制止の声をかけるけど、セドリック様は護衛を睨みつけてそのままカップの紅茶を飲み干した。
119
あなたにおすすめの小説
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。
ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」
夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。
元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。
"カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない"
「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」
白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます!
☆恋愛→ファンタジーに変更しました
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる