どうぞお好きになさってください

みおな

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60.うちを舐めるな

「そうか。パイライト王国か」

 ユークレース王国王太子執務室。

 側近からの報告に、ルウは持っていたペンで机をコツコツと叩いた。

 パイライト王国の伯爵令息、オルテガ・エピドート。

 くすんだ金髪に濃褐色の瞳をしていて、それなりに整った容姿をしている。

 だが本質は、例え親や恋人でもあっさりと見切る冷酷な男だ。

 エピドート伯爵家の次男だが、元々は孤児でエピドート伯爵に養子として十歳の時に迎えられた。

 どうやらそれもパイライト王家の策略で、間諜として育てていた彼ら孤児を貴族とすることで、他国に潜り込ませやすくしているようだ。

 そして今回、オブシディアン王国の子爵令嬢の婚約者としてオルテガを送り込んだ。

 目的は、オブシディアン王国の瓦解。

 第二王子が王位を継ぐ意思がないこと。第一王女がまだ立太子するには年若いことを踏まえてのことだ。

 それでも、第一王子のユリシスが愚かな言動をしなければ。

 あのままアメトリン公爵令嬢のティファと婚姻していれば。

 おそらくは、オルテガは婚約を解消し、別の任務に就いただろう。

 ユリシスとティファの婚約解消が引き金となり、これを機会にユリシスを謀殺し、その罪をユークレース王国になすり付けるための接触だ。

 何故、ここまでルウが知っているかというと、ティファと婚約出来た時に周辺について徹底的に調査したからだ。

 ルウは本気でティファのことを好きになったので、ティファを傷付ける可能性をことごとく潰すつもりでいた。

 その一連の中で、パイライト王国の動きを知った。

 ルウは、別にユリシスがどうなろうと心底どうでもいいし、ティファも未練はなさそうだが、それでも殺されたり処刑されれば多少は何か思うところがあるかもしれない。

 愚かな行動をせずに、新たな婚約者でも決めて勝手に幸せになってくれれば、ティファも何も憂うことがないと思うのだが、ユリシスのティファへの執着を見る限り、それは難しそうだ。

 ならばせめて、幽閉コースで行ってもらいたい。

 幽閉ならば、ティファも何も気に病むこともないだろう。

「オブシディアン王国の方はあくまでも監視で、助けたりはしないだろう。殺されるようなことがあれば、ティファが憂うかもしれない。パイライトの暗殺者の好きにさせるな。処分はお前たちに任せる」

「はっ」

 暗殺者を殺したところで、パイライト王国が何か言ってくることはない。

 そもそも、自分たちがオブシディアン王国の第一王子を殺そうとしているのだから、言ってこれるわけがない。

「あまりユークレース王国うちを舐めるな」

 
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