どうぞお好きになさってください

みおな

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85.それが貴女の役目です

「なっ・・・まさか?」

 ルウの言った内容に、国王陛下も正妃システィーナも唖然とした。

 ティファが愛しくて愛しくて、だからこそユークレース王国まで行ったのではないのか。

 その愛しい相手を害しようなど・・・それは愛ではないだろう。

「アメトリン嬢、すまなかった」

「国王陛下、陛下に謝罪していただく必要はありません。それに、私は私を害しようとしたことよりも、自分の軽率な行動で人がひとり亡くなっているのに、自分は騙されただけだとしか思っていないこの方が本当に・・・結局、第一王子殿下は私を好きだったわけではないのです。私を好きな自分、周囲に優しい自分に酔っていただけなのです」

 親の前で、その子供を貶すような言葉を吐くことは、ティファには苦痛だった。

 しかも相手が、自分を娘のように大切にしてくれていた国王たちだ。

 だが、言わずにはいられなかった。

 ティファはその場を見たわけではない。

 だが、ユークレース王国の王宮に来た時のカトリーヌは、オルテガ遺体に縋りついたまま声もなく泣き続けていた。

 あの姿が目の奥から消えない。

 だから、許せなかった。

 自分勝手な行動をしたユリシスのことが。

「・・・アメトリン嬢、そこの令嬢たちへの罰で何か希望はあるか?何でもというわけにはいかないが、其方の願いは出来るだけ叶えたいと思う」

 しばらく黙り込んでいた後、国王はため息の後にそうティファに尋ねた。

 確かに何でも叶えるわけにはいかないだろう。

 特にユリシスの処罰については、ユークレース王国との絡みもある。

 たとえティファが減刑を願ったとしても、ユリシスに関しては叶えられないと思う。

「私が望みを言う立場でないことは理解しています。ですが、もしほんの少しでもお聞き届け願えるのでしたら・・・カトリーヌ・ズルタナイト様にはユークレース王国にて平民の修道院にて祈りを捧げる罰を与えていただければと思います」

「そうか。認めよう」

 死んで終わりにするのは正しくないとキティは言った。

 確かに生きていれば、また誰かに出会うかもしれない。生きる意味を見つけるかもしれない。

 だけど、王族の命を危険に晒し、ユークレース王国との関係を悪くするきっかけを作ったカトリーヌは、何の罰もなく生きることは出来ない。

 抜け殻のようになった彼女を、彼女の願い通り死なせることが本当に正しいのか、ティファは悩み続けた。

「カトリーヌ様。生きるのは辛いでしょう。ですが、貴女が死ねば誰がオルテガ様のお墓に花を供えるのですか?誰が彼の冥福を祈るのですか?それは貴女の役目です」
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