どうぞお好きになさってください

みおな

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86.なかったことには出来ません

「それがあの人を愛した、貴女の義務です」

 ティファの言葉にカトリーヌの瞳の奥にほんの少しだけ光が戻る。

「私の・・・義務」

「ええ。愛したあの人のお墓に毎日祈りを捧げ、毎日花を供え、毎日起きたことを話して差し上げるのが貴女の義務です。自由を与えることは出来ません。ですが、あの人のお墓近くにある修道院で働きながらなら、お墓に祈りを捧げることは許可できます。どうしますか?」

 カトリーヌからすれば、処刑された方がだろう。

 もうこの世に、あれほど愛したオルテガはいないのだから。

 だがティファはではなく、を与えることを選んだ。

 彼女の望みを許すのではなく、彼女の罪を赦すことを。

「・・・修道院に行きます」

「自由はありませんよ?貴女は罪を犯したのです。ですから、監視も付きますし、再び愚かな行動をしそうなら、今度こそ処罰されます。それこそ死より辛い罰を。それでも耐えられますか?」

「・・・オルテガ様のお墓に毎日祈りを捧げることが出来るなら」

「国王陛下、お許し願えますでしょうか?」

 ティファの願いに、国王陛下は頷いた。

「分かった。ユークレース王国王太子殿下、よろしいか?」

「ええ。こちらでキチンと監視することをお約束しましょう」

「アメトリン嬢、もう一人に関しては?」

 国王陛下の視線がキティに移る。

 ティファはキティを振り返り、その姿を一度見つめてから視線を国王陛下に戻した。

「キティ・コンクパール様は、決して清廉潔白ではありません。貴族として正しくない言動も多くありました。ですが、第一王子殿下の身を案じて危険の中へ追いかけて来たことは評価出来ると思います。罰として、オブシディアン王国の南の修道院での奉仕活動を願います」

 南の修道院は、軽い罪を犯した貴族令嬢が行く修道院だ。

 北の監獄と呼ばれる修道院のように、冷たく厳しい場所ではない。

 気候もそうだが、その町自体が修道女の監視体制にあるため、町での買い出しなど修道院の外に出ることが出来る。

 もちろん、逃げればすぐに追っ手がかかり逃亡の罪でもっと厳しい場所へ送られることになるが、南の修道院に送られる者は自分の罪を理解している者たちなので逃亡するような者はほとんどいない。

 キティは、カトリーヌのようにユリシス好きな人を盲信しているわけではない。

 そして理解していたかどうかは分からないが、ユリシスに毒の危険を与えたことも事実だ。

 公爵家と王家の婚約を壊した責任もある。

「キティ様。過ぎたこととはいえ、なかったことには出来ません」
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