どうぞお好きになさってください

みおな

文字の大きさ
87 / 88

87.本当の愛情じゃない

「キティ様。確かに一番の罪は、第一王子殿下にあります。あの方が王族としての義務を怠ったのがいけないのです。ですが、貴女のしたことをなかったことには出来ません」

 ティファの諭すような淡々とした声が響いたが、キティはしっかりとティファを見つめ、そして頷いた。

「分かっています。処分を受け入れます。ただ・・・両親は知らなかったんです。私がユリ・・・第一王子殿下に近付こうとしてたこと。貴族である以上家としての罰があることも、今は理解しています。ですが、もしも可能なら両親には・・・」

「そのことは、出来る限り考慮しますとしか言えませんわ。ご両親のお考えもあるでしょうから」

「・・・はい」

 キティもカトリーヌも粛々と自分の罪を認め、そして罰を受け入れた。

 それとは対照的に芋虫のように転がり、口枷を付けられているためにうめき声しか聞こえないが、今も見苦しくうめいているユリシスの姿は醜かった。

 両親である国王陛下も正妃システィーナも、弟妹であるカイルもビオラも、そして側妃マーガレットや周囲に立つ騎士も、その姿に何とも言えないような重いものが胸の奥に溜まる気がした。

 自慢の息子のはずだった。

 自慢の兄のはずだった。

 自慢の王子殿下で、王太子になり次期国王として立派に国を背負っていくはずの人だった。

 確かに、甘いところはあった。

 毒味を軽視する。

 人との距離が近く、護衛や侍従に任せて欲しいところを簡単に自分で手を出してしまう。

 手を差し出された人間は「優しい王子」として見て好感を抱くが、護衛たちは常に危機を感じて何度も苦言を呈した。

 だがユリシスは、それを軽く受け取って、態度が変わることはなかった。

 ただ、それでも。

 それでも、自慢の王子であり、息子であり、兄だった。

 確かにキティ・コンクパール男爵令嬢との出会いがきっかけだったのかもしれない。

 だが、兆候はすでにずっとあったのだ。

 ルウは、周囲の表情を眺めてため息を吐いた。

 この断罪は、オブシディアン王国のものであり、ユークレース王国のルウが口出しすることではない。

 そして、国王陛下たちがティファに願いを聞いたのは、二人の令嬢のことだけ。

 ユリシスに関しては、すでに彼らの中で罰が決まっているということだ。

 それは無理のないことだ。

 自国の中だけならまだ、収められる部分もあったかもしれない。

 だが他国を巻き込み、人がひとり死に、そして他国の王太子の婚約者に危害を加えようとした。

 ルウは特に、ティファに危害を加えようとしたことが許せなかった。

「可愛さ余って憎さ百倍と言うらしいが、そんなのは本当の愛情じゃない」
感想 242

あなたにおすすめの小説

あなたを守りたい……いまさらそれを言う?

たろ
恋愛
幼い頃に起きた事件がきっかけで実の父親に疎まれて暮らすファナ。  唯一の居場所は学校。 毎日、屋敷から学校まで歩いて通う侯爵令嬢を陰で笑う生徒達。 それでも、冷たい空気の中で過ごす屋敷にいるよりはまだマシだった。 ファナに優しくしてくれる教師のゼバウト先生。 嫌がらせをされてあまりにも制服が汚れるので、毎回洗って着替えを用意しておいてくれる保健室のエリーナ先生。 昼休みと放課後は、図書室で過ごすことが多いので、いつも何かと気にかけてくれる司書のマッカートニーさんと、図書委員の優しい先輩達。 妹のリリアンは、本人に悪気は無いのだけど、嫌なことや自分が怒られそうになると全て姉のファナに押し付ける。 嫌なことがあればメソメソと泣き姉に頼ってばかりだった。 いつも明るく甘えん坊のリリアンは顔もとても可愛らしく屋敷の中心で、使用人たちも父親も甘やかして育てられた。 一方、ファナはいずれ婿を取り侯爵家を継がなければならないため、父親に厳しく躾をされていた。 明るくて元気だったはずのファナの笑顔は、大きくなるにつれ失ってしまっていた。 使用人達もぞんざいな態度を隠そうともしない。ファナはもう諦めていた。 そんななか唯一、婚約者のジェームズだけはファナのことを優先してくれる優しい男の子だった。 そう思っていたのに……… ✴︎題名少し変更しました。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

うまくやった、つもりだった

彼岸 さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。 本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。 シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。 誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。 かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。 その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。 王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。 だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。 「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」  

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~

水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。 婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。 5話で完結の短いお話です。 いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。 お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

“いらない婚約者”なので、消えました。もう遅いです。

あめとおと
恋愛
婚約者である王子から、静かに告げられた言葉。 ――「君は、もう必要ない」 感情をぶつけることもなく、彼女はただ頷いた。 すべては、予定通りだったから。 彼女が選んだのは、“自分の記憶を世界から消す魔法”。 代償は、自身という存在そのもの。 名前も、記憶も、誰の心にも残らない。 まるで最初からいなかったかのように。 そして彼女は、消えた。 残された人々は、何かが欠けていることに気づく。 埋まらない違和感、回らない日常。 それでも――誰一人、思い出せない。 遅すぎた後悔と、届かない想い。 すべてを失って、ようやく知る。 “いらない存在”など、どこにもいなかったのだと。 これは、ひとりの少女が消えたあとに、 世界がその価値に気づく物語。 そして――彼女だけが、静かに救われる物語。