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聖女がやって来た
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「お招きありがとう御座います、エミリア様」
先日交わした約束通りニッコリと満面の笑みを携えて我がレナード公爵家に訪問して来たのは、聖女のサルビア。
エミリアもニコリと笑顔を顔に貼り付けてそれを出迎えた。
あの茶会から間もない数日後、自分から言い出したとはいえサルビアと約束を交わした事を改めて後悔する。まだイアンとの事で内心穏やかでなかったからだ。
(でも約束は約束ですものね)
自室に招き入れたエミリアは早速メイド達に手伝って貰いながら、事前に選り分けて準備していたロングワンピースやドレス等の中からサルビアに直接選んで貰った。
用意していた物は全部あげても構わなかったがサルビアの遠慮もあってか、十着程度を譲る結果となった。まぁ、それだけでも当分は困らないだろうしサルビア本人も大層喜んでいる様なので無理に押し付ける必要はないだろう。
選んだドレスはメイド達の手によって丁寧に箱詰めされ、ファフナー伯爵家の馬車へと運ばれて行った。そのまま馬車は伯爵家へ走り、荷物を下ろしてから再びレナード公爵家へ戻って来る手筈だ。
その間サルビアとはお茶を飲みながら談笑する事にした。
「私、こうしてエミリア様と仲良くなれて凄く嬉しいです」
「そ、そう。それは光栄ですわ」
(相変わらず馴れ馴れしい方ですわ)
ヒロインかもしれないサルビアとは仲良くなり過ぎるのも危険だし、かと言って嫌われてしまうのはそれ以上に危険を感じるので距離感が難しい。
「先日、初めてエミリア様とイアン殿下がご一緒の所を拝見いたしましたけど本当にお似合いのお二人で見惚れてしまいました」
「ありがとう」
「お二人は幼い頃からのお付合いなのですよね? 傍から見ても相思相愛って感じで素敵ですっ」
少し頬を染めながらうっとりとした表情で語るサルビア。本心から憧れを語っている様に見えるけど、どうなのだろう。
「ファフナーさん……とお呼びして良いかしら? ファフナーさんはご婚約者はいらっしゃらないの?」
「元々市井に下りるつもりでしたから、そんな方はいませんよ~。まぁ、そうは言っても伯爵家となった今はいずれは何処かの貴族の殿方の家に嫁がないといけなくなりましたけどね」
「聖女様ですもの、きっと素敵な殿方からの釣書が沢山舞い込んで来ますわ」
「そうですね……ただ、今迄は婚約者とか考えてもいなかったので不思議な感じです。出来る事なら恋愛もしたかったな、なんて思ったり」
「そうですわね、聖女になられて生活がガラッと一変されて大変ですわね……」
まだ互いに十三歳だ。恋に恋するお年頃というやつだ。エミリアも、もしイアンと婚約していなければ他の誰かに恋してキャーキャー言っていたかもしれない。
こうやってお話をしてみるとサルビアは普通の少女という感じで、エミリアが恐れている様な婚約者略奪や濡れ衣を着せて断罪へと追い込む様なタイプのヒロインには見えない。むしろ、至って普通の少女だ。
(聖女だからヒロインかもだなんて、わたくしの考えすぎかしら……)
だが油断するにはまだ早い筈だ。まだゲーム開始の入学式を迎えていないのだ。もしかしたら入学直前になって、転生者として前世の記憶を取り戻す可能性もある。そうしたら今のサルビアとは性格も行動も変わるかもしれない。
「また、遊びにいらして下さいね」
「はいっ、是非とも」
ファフナー伯爵家の馬車を見送りながら、果たして敵なのか味方なのか……入学までの一年ちょっとはサルビアの動向に注意しようと決めたエミリアだった。
先日交わした約束通りニッコリと満面の笑みを携えて我がレナード公爵家に訪問して来たのは、聖女のサルビア。
エミリアもニコリと笑顔を顔に貼り付けてそれを出迎えた。
あの茶会から間もない数日後、自分から言い出したとはいえサルビアと約束を交わした事を改めて後悔する。まだイアンとの事で内心穏やかでなかったからだ。
(でも約束は約束ですものね)
自室に招き入れたエミリアは早速メイド達に手伝って貰いながら、事前に選り分けて準備していたロングワンピースやドレス等の中からサルビアに直接選んで貰った。
用意していた物は全部あげても構わなかったがサルビアの遠慮もあってか、十着程度を譲る結果となった。まぁ、それだけでも当分は困らないだろうしサルビア本人も大層喜んでいる様なので無理に押し付ける必要はないだろう。
選んだドレスはメイド達の手によって丁寧に箱詰めされ、ファフナー伯爵家の馬車へと運ばれて行った。そのまま馬車は伯爵家へ走り、荷物を下ろしてから再びレナード公爵家へ戻って来る手筈だ。
その間サルビアとはお茶を飲みながら談笑する事にした。
「私、こうしてエミリア様と仲良くなれて凄く嬉しいです」
「そ、そう。それは光栄ですわ」
(相変わらず馴れ馴れしい方ですわ)
ヒロインかもしれないサルビアとは仲良くなり過ぎるのも危険だし、かと言って嫌われてしまうのはそれ以上に危険を感じるので距離感が難しい。
「先日、初めてエミリア様とイアン殿下がご一緒の所を拝見いたしましたけど本当にお似合いのお二人で見惚れてしまいました」
「ありがとう」
「お二人は幼い頃からのお付合いなのですよね? 傍から見ても相思相愛って感じで素敵ですっ」
少し頬を染めながらうっとりとした表情で語るサルビア。本心から憧れを語っている様に見えるけど、どうなのだろう。
「ファフナーさん……とお呼びして良いかしら? ファフナーさんはご婚約者はいらっしゃらないの?」
「元々市井に下りるつもりでしたから、そんな方はいませんよ~。まぁ、そうは言っても伯爵家となった今はいずれは何処かの貴族の殿方の家に嫁がないといけなくなりましたけどね」
「聖女様ですもの、きっと素敵な殿方からの釣書が沢山舞い込んで来ますわ」
「そうですね……ただ、今迄は婚約者とか考えてもいなかったので不思議な感じです。出来る事なら恋愛もしたかったな、なんて思ったり」
「そうですわね、聖女になられて生活がガラッと一変されて大変ですわね……」
まだ互いに十三歳だ。恋に恋するお年頃というやつだ。エミリアも、もしイアンと婚約していなければ他の誰かに恋してキャーキャー言っていたかもしれない。
こうやってお話をしてみるとサルビアは普通の少女という感じで、エミリアが恐れている様な婚約者略奪や濡れ衣を着せて断罪へと追い込む様なタイプのヒロインには見えない。むしろ、至って普通の少女だ。
(聖女だからヒロインかもだなんて、わたくしの考えすぎかしら……)
だが油断するにはまだ早い筈だ。まだゲーム開始の入学式を迎えていないのだ。もしかしたら入学直前になって、転生者として前世の記憶を取り戻す可能性もある。そうしたら今のサルビアとは性格も行動も変わるかもしれない。
「また、遊びにいらして下さいね」
「はいっ、是非とも」
ファフナー伯爵家の馬車を見送りながら、果たして敵なのか味方なのか……入学までの一年ちょっとはサルビアの動向に注意しようと決めたエミリアだった。
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