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第二章
幸せな朝の風景
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「おはよう愛しいティアナ、お手をどうぞ」
王立学園の馬車停めで、あたしが馬車から降りるのをエスコートされながらアルスト殿下は朝から出迎えて下さった。
「おはよう御座います、アルスト殿下」
ここは王族以外の一般生徒が使用する馬車停めなので、周りには沢山の生徒たちが居る。そんな中、あたしはアルスト殿下に手を取られながら、ゆっくりと馬車から降りる。そしてそのままスッポリと殿下の腕の中へと引き寄せられる。
「あぁ、今日も良い香りだね」
アルスト殿下はあたしを抱きしめながら、髪の匂いを嗅いでおられる。
「で、殿下……皆が見ております……」
あたしは真っ赤になりながらも、この毎朝の恒例行事をどこか受け入れてしまっている。でも、それでも、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「いいんだよ、見たい奴には見せておけば。ね、可愛い私のティアナ。キスしていいかい?」
「あ……」
優しい笑みであたしの顔を覗き込みながら、顎を持ち上げられる。こんな所でどうしよう……。
「おれの前で何をしている」
あたしに続いてローゼン公爵家の馬車から降りてきたタクトお兄様がベリベリッとアルスト殿下を引き剥がし、あたしを自分の背に隠す。
「婚約者として朝の挨拶をしているだけじゃないか」
むきーっ! とアルスト殿下がタクトお兄様に抗議の声を上げるが、その声も虚しく今度はスクトお兄様が馬車から降りて来たのでそのまま首根っこを掴まれて教室の方へと連れて行かれてしまう。
「あっ、こら! スクトまで邪魔するんじゃないっ」
「はいはい、朝からお戯れが過ぎますよ~アル殿下。はい、ハウス!」
「犬扱いするな! 私の麗しのティアナ~、また後でねーっ」
ズルズルと引きずられていくアルスト殿下に手を振りつつ、ほっと胸を撫で下ろすあたし。やだわ、思わず殿下のペースに乗せられて皆の前でキスされてしまう所だった。もうっ、殿下ったら。
「……ったく、朝から騒々しいやつだ」
やれやれ、といった感じで大きく息を吐いてあたしの方を見るタクトお兄様。
「毎朝毎朝、アルは懲りないな。お前も毎日大変だな」
「いえ……その、わたくしは殿下が傍に居て下さるだけで嬉しいので……」
ああっ、タクトお兄様になんて事を口にしてしまったのかしら。お兄様ったら、あんぐりとお口を開けてらっしゃるわ。恥ずかしい……。
「お兄ちゃんは時々、お前の事が心配になるよ……あんな変態王子と両想いだなんて。まぁ、仲が良いにこした事はないんだがな……なんだか複雑だ」
ガックリと項垂れながら、あたしの背に触れるか触れないかぐらいに手を置いて一緒に歩き出すタクトお兄様。その紳士的な振る舞いに、周りに居るご令嬢たちから小さな悲鳴と吐息が聞こえてくる。
双子の兄であるタクトお兄様は将来有望な騎士として頭角を既に現していて、ガッシリと鍛え抜いた身体に美しいお顔立ちでご令嬢たちから熱視線を受けている。一方、スクトお兄様の方は同じお顔立ちであるけれど、細身の身体つきで次期宰相候補として名をはせている。日々勉学に励み、その理知的な雰囲気からこれまたご令嬢たちからの熱い眼差しを受けている。
もっとも最近になって、どちらの兄達も婚約者が出来たのでそれを聞いて倒れてしまったご令嬢たちが沢山居ると聞いた。それでも兄達に恋焦がれるご令嬢はまだまだ多いらしい。妹のあたしから見ても、二人の兄達はとても素敵な男性だと思うもの。
「どうした?」
あたしの頬が少し緩んでいるのに気付いたタクトお兄様。あらやだ、少し顔に出てしまったのね。淑女教育を受けてるのにダメですわね。と、心の中で反省する。
「いえ、お兄様たちの妹に生まれて良かったなと思っただけです」
そう言ってニコリとお兄様に微笑かけると、タクトお兄様は何だかお辛そうな顔をして天を仰いだ。
「……お兄様?」
「ティアナ…………そういう可愛い顔は、絶対にアルの前ではしてはいけないよ?」
「可愛い顔?」
「あいつが暴走するから。アルの前だけでなく、他の男の前でもダメだからね」
お顔を何故か赤くされたまま、真剣な表情であたしに注意をして下さるタクトお兄様。ただお兄様に笑いかけただけなのですけど、変なお兄様。
「よく分かりませんけど、気を付けますわ」
昔からそうですけど、最近益々タクトお兄様が過保護になられてる気がするのですけど……。気のせいかしら……。
王立学園の馬車停めで、あたしが馬車から降りるのをエスコートされながらアルスト殿下は朝から出迎えて下さった。
「おはよう御座います、アルスト殿下」
ここは王族以外の一般生徒が使用する馬車停めなので、周りには沢山の生徒たちが居る。そんな中、あたしはアルスト殿下に手を取られながら、ゆっくりと馬車から降りる。そしてそのままスッポリと殿下の腕の中へと引き寄せられる。
「あぁ、今日も良い香りだね」
アルスト殿下はあたしを抱きしめながら、髪の匂いを嗅いでおられる。
「で、殿下……皆が見ております……」
あたしは真っ赤になりながらも、この毎朝の恒例行事をどこか受け入れてしまっている。でも、それでも、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「いいんだよ、見たい奴には見せておけば。ね、可愛い私のティアナ。キスしていいかい?」
「あ……」
優しい笑みであたしの顔を覗き込みながら、顎を持ち上げられる。こんな所でどうしよう……。
「おれの前で何をしている」
あたしに続いてローゼン公爵家の馬車から降りてきたタクトお兄様がベリベリッとアルスト殿下を引き剥がし、あたしを自分の背に隠す。
「婚約者として朝の挨拶をしているだけじゃないか」
むきーっ! とアルスト殿下がタクトお兄様に抗議の声を上げるが、その声も虚しく今度はスクトお兄様が馬車から降りて来たのでそのまま首根っこを掴まれて教室の方へと連れて行かれてしまう。
「あっ、こら! スクトまで邪魔するんじゃないっ」
「はいはい、朝からお戯れが過ぎますよ~アル殿下。はい、ハウス!」
「犬扱いするな! 私の麗しのティアナ~、また後でねーっ」
ズルズルと引きずられていくアルスト殿下に手を振りつつ、ほっと胸を撫で下ろすあたし。やだわ、思わず殿下のペースに乗せられて皆の前でキスされてしまう所だった。もうっ、殿下ったら。
「……ったく、朝から騒々しいやつだ」
やれやれ、といった感じで大きく息を吐いてあたしの方を見るタクトお兄様。
「毎朝毎朝、アルは懲りないな。お前も毎日大変だな」
「いえ……その、わたくしは殿下が傍に居て下さるだけで嬉しいので……」
ああっ、タクトお兄様になんて事を口にしてしまったのかしら。お兄様ったら、あんぐりとお口を開けてらっしゃるわ。恥ずかしい……。
「お兄ちゃんは時々、お前の事が心配になるよ……あんな変態王子と両想いだなんて。まぁ、仲が良いにこした事はないんだがな……なんだか複雑だ」
ガックリと項垂れながら、あたしの背に触れるか触れないかぐらいに手を置いて一緒に歩き出すタクトお兄様。その紳士的な振る舞いに、周りに居るご令嬢たちから小さな悲鳴と吐息が聞こえてくる。
双子の兄であるタクトお兄様は将来有望な騎士として頭角を既に現していて、ガッシリと鍛え抜いた身体に美しいお顔立ちでご令嬢たちから熱視線を受けている。一方、スクトお兄様の方は同じお顔立ちであるけれど、細身の身体つきで次期宰相候補として名をはせている。日々勉学に励み、その理知的な雰囲気からこれまたご令嬢たちからの熱い眼差しを受けている。
もっとも最近になって、どちらの兄達も婚約者が出来たのでそれを聞いて倒れてしまったご令嬢たちが沢山居ると聞いた。それでも兄達に恋焦がれるご令嬢はまだまだ多いらしい。妹のあたしから見ても、二人の兄達はとても素敵な男性だと思うもの。
「どうした?」
あたしの頬が少し緩んでいるのに気付いたタクトお兄様。あらやだ、少し顔に出てしまったのね。淑女教育を受けてるのにダメですわね。と、心の中で反省する。
「いえ、お兄様たちの妹に生まれて良かったなと思っただけです」
そう言ってニコリとお兄様に微笑かけると、タクトお兄様は何だかお辛そうな顔をして天を仰いだ。
「……お兄様?」
「ティアナ…………そういう可愛い顔は、絶対にアルの前ではしてはいけないよ?」
「可愛い顔?」
「あいつが暴走するから。アルの前だけでなく、他の男の前でもダメだからね」
お顔を何故か赤くされたまま、真剣な表情であたしに注意をして下さるタクトお兄様。ただお兄様に笑いかけただけなのですけど、変なお兄様。
「よく分かりませんけど、気を付けますわ」
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