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第二章
第三十一話 終焉の幕開け
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タクト様がローゼン公爵家の馬車を手配して下さって、我がピスケリー伯爵家の邸まで送って下さった。その馬車の中で、王宮に居たタクト様の元へカーマインが知らせに行ってくれたのだと知った。カーマインもいきなり現れた黒装束の男たちに襲われ、不覚にも意識を失ってしまったらしい。
気が付いたら御者と共に馬車の中に押し込められていて、慌てて外に出ると邸の前には意識を失って倒れているウェルが居てわたしの姿はどこにも見当たらず。邸の奥に居て無事だった両親たちに倒れたメイド達の介抱を任せた後、馬を走らせタクト様の元へ指示を仰ぎに行ったとの話だった。
「それで、弟たちは無事なんでしょうか」
「あぁ、アスウェルは打撲はしているが大きな怪我はないらしい。使用人たちも無事だ」
「良かった……」
わたしのせいで家族や使用人たちまで巻き込んでしまった事で、ヒロインへの怒りの気持ちが増した。自分さえ良ければいいのか。なんであんな人がヒロインに転生してしまったのだろう。
「あ……そうだ、ダンスパーティ! ティアナ様は大丈夫でしたか?」
「ん? あぁ……そうだな…………」
少し微妙な顔をされて、遠くに視線を泳がせるタクト様。
「……何かあったんですか」
「んー……あったというか、あり過ぎたというか」
ポツリ、ポツリと王宮での出来事を話して下さった。ダンスパーティ会場のある大広間のバルコニーで、ヒロインがティアナ様にマジックアイテムを使って操ろうと術を発動した。それを直に目撃した殿下とスクト様が阻止し、その場でヒロインを捕えて今は地下牢に入れられているそうだ。
そして殿下とスクト様が、ヒロインにわざと近付いていた事をタクト様は知った事。ティアナ様にも殿下がお話されて、今は王宮で殿下並びにスクト様たちが事後処理の為駆け回っているとの事。どうやら、わたしが殿下に協力していた事は知らされてない様だった。恐らく話せばまたタクト様が嫉妬されるから、それを殿下が面倒がって、内密にしておいたんだな……と思った。
「そんな大変な中、わたしの為に来てくださったのですか」
「あっちはほぼ片がついていたし、ゼフィーの危機に来ないでいられる訳がないだろう」
真剣な表情でわたしを見つめるタクト様。
「おれが、どれだけお前を心配したか……無事な姿を見るまで生きた心地がしなかった。だが、怪我をさせてしまった事はおれの落ち度だ。すまない」
「そんな、これはわたしが勝手に怪我しただけです」
「それでも! それでも、お前をさらわれた事自体がおれの落ち度だ。もっと警護を増やしておくべきだったのだ」
「タクト様……」
俯くタクト様の頬に手を伸ばす。タクト様の頬にわたしの手が触れると俯いていた顔を上げて、悔しさをにじませた瞳でわたしを見つめ返す。そんなタクト様が何だかとても愛おしく見えてしまって、わたしは背を伸ばして……ちゅっ、とタクト様の唇にキスをした。
「…………!」
思わず自分からしてしまったけど、恥ずかしくなって今度はわたしの方が俯いた。
「そんなに想って頂けて、わたしは幸せ者です。ありがとう御座います」
「あ……あ、あぁ。いや、それほどでも……」
タクト様も口元を手で押さえながら顔を赤くされたまま、下を向かれた。暫しの間、二人とも俯いたままで何とも恥ずかしい空気が流れる。
「…………ああ! もうっ!」
と、急にタクト様が声を上げて……。俯いていたわたしの顔を両手で挟み込み、上を向かされたかと思ったら……わたしの唇をタクト様の唇で塞がれた。そのまま深く深く口づけをされ、幸せすぎる時間にわたしは酔いしれる。
「……っ、ホント可愛くて困る」
わたしを抱きしめながらタクト様が耳元で呟く。うはっ、耳元でイケメンボイス! マジでやばいんですけど!
「わたしだって、タクト様が素敵すぎて困っちゃいます……」
そう返すとタクト様は「かなわないな、ゼフィーには」と笑って、ぎゅうぎゅうと抱きしめる腕を強める。そして、ヒロインやレオ様たちの処分が正式に下され、落ち着いてから出掛ける約束をした。
気が付いたら御者と共に馬車の中に押し込められていて、慌てて外に出ると邸の前には意識を失って倒れているウェルが居てわたしの姿はどこにも見当たらず。邸の奥に居て無事だった両親たちに倒れたメイド達の介抱を任せた後、馬を走らせタクト様の元へ指示を仰ぎに行ったとの話だった。
「それで、弟たちは無事なんでしょうか」
「あぁ、アスウェルは打撲はしているが大きな怪我はないらしい。使用人たちも無事だ」
「良かった……」
わたしのせいで家族や使用人たちまで巻き込んでしまった事で、ヒロインへの怒りの気持ちが増した。自分さえ良ければいいのか。なんであんな人がヒロインに転生してしまったのだろう。
「あ……そうだ、ダンスパーティ! ティアナ様は大丈夫でしたか?」
「ん? あぁ……そうだな…………」
少し微妙な顔をされて、遠くに視線を泳がせるタクト様。
「……何かあったんですか」
「んー……あったというか、あり過ぎたというか」
ポツリ、ポツリと王宮での出来事を話して下さった。ダンスパーティ会場のある大広間のバルコニーで、ヒロインがティアナ様にマジックアイテムを使って操ろうと術を発動した。それを直に目撃した殿下とスクト様が阻止し、その場でヒロインを捕えて今は地下牢に入れられているそうだ。
そして殿下とスクト様が、ヒロインにわざと近付いていた事をタクト様は知った事。ティアナ様にも殿下がお話されて、今は王宮で殿下並びにスクト様たちが事後処理の為駆け回っているとの事。どうやら、わたしが殿下に協力していた事は知らされてない様だった。恐らく話せばまたタクト様が嫉妬されるから、それを殿下が面倒がって、内密にしておいたんだな……と思った。
「そんな大変な中、わたしの為に来てくださったのですか」
「あっちはほぼ片がついていたし、ゼフィーの危機に来ないでいられる訳がないだろう」
真剣な表情でわたしを見つめるタクト様。
「おれが、どれだけお前を心配したか……無事な姿を見るまで生きた心地がしなかった。だが、怪我をさせてしまった事はおれの落ち度だ。すまない」
「そんな、これはわたしが勝手に怪我しただけです」
「それでも! それでも、お前をさらわれた事自体がおれの落ち度だ。もっと警護を増やしておくべきだったのだ」
「タクト様……」
俯くタクト様の頬に手を伸ばす。タクト様の頬にわたしの手が触れると俯いていた顔を上げて、悔しさをにじませた瞳でわたしを見つめ返す。そんなタクト様が何だかとても愛おしく見えてしまって、わたしは背を伸ばして……ちゅっ、とタクト様の唇にキスをした。
「…………!」
思わず自分からしてしまったけど、恥ずかしくなって今度はわたしの方が俯いた。
「そんなに想って頂けて、わたしは幸せ者です。ありがとう御座います」
「あ……あ、あぁ。いや、それほどでも……」
タクト様も口元を手で押さえながら顔を赤くされたまま、下を向かれた。暫しの間、二人とも俯いたままで何とも恥ずかしい空気が流れる。
「…………ああ! もうっ!」
と、急にタクト様が声を上げて……。俯いていたわたしの顔を両手で挟み込み、上を向かされたかと思ったら……わたしの唇をタクト様の唇で塞がれた。そのまま深く深く口づけをされ、幸せすぎる時間にわたしは酔いしれる。
「……っ、ホント可愛くて困る」
わたしを抱きしめながらタクト様が耳元で呟く。うはっ、耳元でイケメンボイス! マジでやばいんですけど!
「わたしだって、タクト様が素敵すぎて困っちゃいます……」
そう返すとタクト様は「かなわないな、ゼフィーには」と笑って、ぎゅうぎゅうと抱きしめる腕を強める。そして、ヒロインやレオ様たちの処分が正式に下され、落ち着いてから出掛ける約束をした。
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