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一章 吸血鬼
第三滴 プリムラ
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樹齢千年の巨木。それを囲むように、円形に木々が生えていた。自然でなったものではなく、何者かの手によるものだ。
──吸血鬼。そう、この森に住む吸血鬼達の仕業。
サリバとケイは、巨木の中に入って行った。それは、「吸血鬼会議」と呼ばれる話し合いを行うためだ。巨木の中には空洞があり、そこに円卓席を設けている。
中に入ると他の吸血鬼達はすでに揃っており、サリバとケイが最後であった。と、その時。
「遅いわよ!ケイ!」
かなり苛立った様子の女性の怒号。ケイはバツの悪そうな顔をして、声の主を仰いだ。そこには、ピンクのウェーブがかった髪に、黄金の瞳の女吸血鬼が仁王立ちで待ち構えていた。
彼女の名前はプリムローズ。皆からは「プリムラ」とか「姉さん」と呼ばれており、姉のような存在で
「吸血鬼の女王」である。
……怒らすと怖い。
「よ、よぉ!プリムラ!朝から元気だなーお前は。そんなに怒ると禿げるぞ」
ケイは引きつった笑みで手をぴょこっと立て、余計な一言を吐いた。周りの吸血鬼達は一斉に固まったり、呆れたような顔をしたり、耳を塞ぐ者もいる。
「アンタってやつはぁぁぁああぁぁ!!」
プリムラは、ワナワナと拳を震わせて大きく振りかぶる。
「百回死んでこぉぉぉぉい!!」
ドゴォッ!!とすごい音を響かせて、ケイは宙を舞う。そして、ズドン!という音とともに床に落ちた。
「プリムラ……ケイが悪いが、もう少し加減してやってくれ……」
サリバが、倒れたケイを横目で見やってプリムラに告げる。ケイはピクピクと動いてはいるが、朝からサリバに突き落とされたりプリムラにぶっ飛ばされたりして、すでに血は足りなくなっているだろう。
プリムラは大きくため息を吐くと、サリバに哀れみの目を向けた。
「ごめんなさいねサリバ。いつもいつも、このバカを起こしに行かせちゃって。サリバじゃないと起きないから……。でも、ケイなんか血だらけだったわね。」
「突き落とした。」
サリバは飄々と答える。
「突き落としたぁ!?」
プリムラと周りの吸血鬼達が唖然としてサリバとケイを交互に見やった。しれっとした顔のサリバと、血だらけでピクピクと動いているケイ。どこからどう見ても、サリバが「吸血鬼の王」じゃなかろうか。周りの吸血鬼達はそう思う。
しかし、本物の「吸血鬼の王」は今そこでのびているケイにほかならないのだ。
皆は思う。「何故……こいつが長なんだ」と。
強いことは認めよう。ここにいる全員が束になってかかったとしても、ケイには絶対に勝てないと。
「「「「(でも普段これじゃなぁ……)」」」」
全員が同じ考えを抱き、絶望の顔に染まる。
「……とりあえず、サリバも席につきなさいよ。そこのバカはほっといていいわ。」
プリムラの一言で皆ハッとして、絶望オーラは掻き消えた。サリバはプリムラの言葉に従い、席につこうとするが…
「待て……サリバ」
いつの間に起き上がったのか、ケイがサリバを後ろから羽交い締めにしていた。
「……っ!」
油断した。ケイの前では油断してはならないのに。
特に、今のような──空腹状態の時は。
ケイは周りが見えていないようで、吸血鬼が血を吸う時にする、「エサのバイタルチェック」を行い始める。クンクンとサリバの首筋を嗅ぎ、
「やっぱサリバ……美味そうな匂いする…」
牙をあてがう。
ケイの鋭く尖った牙の先が、首筋にズブッと刺さった瞬間。
「食事はここでするなぁぁぁ!!」
プリムラのスキル「強撃」が発動し、ケイは吹っ飛び巨木から飛び出て地面に刺さった。
「すまない、プリムラ」
サリバは首筋を抑えながらプリムラに頭を下げた。
「いいのよ、アンタは悪くない。悪いのはアイツ!」
プリムラは地面に刺さったケイを指さして言う。
「そこで頭冷やしなさい!」
「……腹減った。なんなんだよプリムラのやつ……
ほんとかわいげがねー女だな」
ケイは地面に刺さったまま毒突くと、黒い空を見上げた。雨はまだ、止みそうにない
──吸血鬼。そう、この森に住む吸血鬼達の仕業。
サリバとケイは、巨木の中に入って行った。それは、「吸血鬼会議」と呼ばれる話し合いを行うためだ。巨木の中には空洞があり、そこに円卓席を設けている。
中に入ると他の吸血鬼達はすでに揃っており、サリバとケイが最後であった。と、その時。
「遅いわよ!ケイ!」
かなり苛立った様子の女性の怒号。ケイはバツの悪そうな顔をして、声の主を仰いだ。そこには、ピンクのウェーブがかった髪に、黄金の瞳の女吸血鬼が仁王立ちで待ち構えていた。
彼女の名前はプリムローズ。皆からは「プリムラ」とか「姉さん」と呼ばれており、姉のような存在で
「吸血鬼の女王」である。
……怒らすと怖い。
「よ、よぉ!プリムラ!朝から元気だなーお前は。そんなに怒ると禿げるぞ」
ケイは引きつった笑みで手をぴょこっと立て、余計な一言を吐いた。周りの吸血鬼達は一斉に固まったり、呆れたような顔をしたり、耳を塞ぐ者もいる。
「アンタってやつはぁぁぁああぁぁ!!」
プリムラは、ワナワナと拳を震わせて大きく振りかぶる。
「百回死んでこぉぉぉぉい!!」
ドゴォッ!!とすごい音を響かせて、ケイは宙を舞う。そして、ズドン!という音とともに床に落ちた。
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サリバが、倒れたケイを横目で見やってプリムラに告げる。ケイはピクピクと動いてはいるが、朝からサリバに突き落とされたりプリムラにぶっ飛ばされたりして、すでに血は足りなくなっているだろう。
プリムラは大きくため息を吐くと、サリバに哀れみの目を向けた。
「ごめんなさいねサリバ。いつもいつも、このバカを起こしに行かせちゃって。サリバじゃないと起きないから……。でも、ケイなんか血だらけだったわね。」
「突き落とした。」
サリバは飄々と答える。
「突き落としたぁ!?」
プリムラと周りの吸血鬼達が唖然としてサリバとケイを交互に見やった。しれっとした顔のサリバと、血だらけでピクピクと動いているケイ。どこからどう見ても、サリバが「吸血鬼の王」じゃなかろうか。周りの吸血鬼達はそう思う。
しかし、本物の「吸血鬼の王」は今そこでのびているケイにほかならないのだ。
皆は思う。「何故……こいつが長なんだ」と。
強いことは認めよう。ここにいる全員が束になってかかったとしても、ケイには絶対に勝てないと。
「「「「(でも普段これじゃなぁ……)」」」」
全員が同じ考えを抱き、絶望の顔に染まる。
「……とりあえず、サリバも席につきなさいよ。そこのバカはほっといていいわ。」
プリムラの一言で皆ハッとして、絶望オーラは掻き消えた。サリバはプリムラの言葉に従い、席につこうとするが…
「待て……サリバ」
いつの間に起き上がったのか、ケイがサリバを後ろから羽交い締めにしていた。
「……っ!」
油断した。ケイの前では油断してはならないのに。
特に、今のような──空腹状態の時は。
ケイは周りが見えていないようで、吸血鬼が血を吸う時にする、「エサのバイタルチェック」を行い始める。クンクンとサリバの首筋を嗅ぎ、
「やっぱサリバ……美味そうな匂いする…」
牙をあてがう。
ケイの鋭く尖った牙の先が、首筋にズブッと刺さった瞬間。
「食事はここでするなぁぁぁ!!」
プリムラのスキル「強撃」が発動し、ケイは吹っ飛び巨木から飛び出て地面に刺さった。
「すまない、プリムラ」
サリバは首筋を抑えながらプリムラに頭を下げた。
「いいのよ、アンタは悪くない。悪いのはアイツ!」
プリムラは地面に刺さったケイを指さして言う。
「そこで頭冷やしなさい!」
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