吸血鬼の憂鬱

うみぼうず

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一章 吸血鬼

第四滴 吸血鬼たち

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ケイ以外の吸血鬼が揃い、とりあえず会議を始めることにした。

「ケイがいなくて大丈夫なのか?」
サリバが、外で地面に刺さったまま雨に打たれているケイを見て言うと、プリムラがかぶりを振ってから
「大丈夫よ。最終的な決断はロードであるケイにしてもらう必要があるけど、話合いの時点では別にいなくてもいいの。それに、あいつが居たっていい案が浮かぶわけでもないし。」
と答える。それに対して皆がウンウンと大きく頷いた。
サリバは「そうか」と呟くとプリムラに議会の進行を一任する。

「それじゃ、今回の会議を始める前に出席をとるわ。一応ね。まずは私から、「吸血鬼の女王ヴァンパイア・クイーン」のプリムローズよ」

プリムラを筆頭に時計回りで自己紹介が始まる。
見知った顔ではあるが、中にはスキルで擬態している者もいるため、念のためにということだ。

「じゃあ次はアタシネ!」
山吹色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持った、おだんご頭の女吸血鬼が身を乗り出して言う。
「アタシは水冷シュイロンネ!
吸血鬼の司令塔ヴァンパイア・コマンダー」ヨ!よろしくネ!」
水冷シュイロンはムフフと笑うと、頬杖をついてニヤニヤしている。いや、本人はニヤニヤしているつもりはないのだが、傍から見るとニヤニヤしているようにしか見えないのだ。

次に、水冷シュイロンの隣に座っているなかなかチャラそうな男が喋り始める
「ボクはノイクライム。ノイって呼んでね。
吸血鬼の色男ヴァンパイア・ハンサムボーイ」だよ。かっこよくないよね~」
喋り方も仕草も、やはりどこかチャラい。金髪なのがチャラさを増幅しているのか、翡翠の瞳が引きつけるからそう見えるのか……。謎な男である。

「じゃあ次はオレ!」
クルンと巻いたアホ毛が特徴の犬みたいな吸血鬼が手を挙げる。
「オレはアルマス・カイン。カインでいいよ。一応
吸血鬼の騎士ヴァンパイア・ナイト」だよ。よろしくね」
心なしか耳が見える。耳が。透き通るような黄金の髪に、深い海のように青く、クリンとした瞳が余計に犬を彷彿とさせる。

カインの隣に座っている銀髪男は、どこか人を寄せ付けない雰囲気を纏っていた。
「……。ギゼラだ。」
それだけ言うと黙り込んでしまう。

「エ、それだケ?」
水冷シュイロンがキョトンとしたようにギゼラを見る。
他のものも、ギゼラに視線を寄越す。

「……「色違い吸血鬼オッドアイ・ヴァンパイア」だ。」

それだけ言うと、また黙ってしまった。それ以上は喋るつもりはないらしい。
「…まあいいわ。ギゼラにしては頑張ったじゃない。」
プリムラが相槌を打ったので、その場の雰囲気は軽くなった。次の者に自己紹介を促す。

「あ、えっと……セシル=フレバートです。ギゼラさんと同じく「色違い吸血鬼オッドアイ・ヴァンパイア」です。よろしくお願いします」
薄茶色の髪に青と緑の瞳の大人しく優しげな雰囲気のある吸血鬼だ。長い髪を三つ編みにして一つ括りにしている。

その隣には、クルクルとカールした金髪のこれまたかわいらしい、お嬢さんと言った方が正しい女吸血鬼。
「私はビオラって言いますぅ。「吸血鬼のお嬢さんヴァンパイア・ドーター」ですのよぉ。よろしくですの~」
甘い声でキャピキャピ話す、いわゆるぶりっこ女子だ。しかし、そのかわいらしさには人間の男なら簡単に堕ちてしまうだろう。スキル使ってるし。

「「「……。」」」

吸血鬼の男達には効いていない様子であるが。

「コホン。次、よろしくて?」
わざとらしい咳でビオラの作った沈黙を破ったのは、金髪に桃色の瞳の美少女だ。頭に帽子を乗せている。被っている……と言うには角度が違いすぎるので、やはり乗せているといった表現の方が正しいだろう。

「ワタクシはシルヴィア。「双子の吸血鬼ヴァンパイア・ツインズ」ですわ。お見知りおきを。」
お嬢様口調でサラッと自己紹介すると、
「次はお兄様ですわよ。」と隣に合図する。

お兄様と呼ばれた吸血鬼は、眠そうな目を開けて
ペコリとお辞儀した。
「ウィルヴィアだ。「双子の吸血鬼ヴァンパイア・ツインズ」だ。……よろしく」
そういうと、目をこする。シルヴィアと逆の位置に帽子を乗せており、瞳の色はどこか紫がかっている。

「お兄様!ちゃんと起きてくださいまし。
シルヴィア、恥ずかしゅうございますわ」
「ちゃんと起きてる……めんどくさいだけ」
「もう!お兄様、貴方という人は……!」

シルヴィアとウィルヴィアが口喧嘩を始めると、水冷シュイロンがより一層ニヤニヤしだす。 
「痴話喧嘩ネ~!」
他の者は呆れたり慌てたりしているが、これもまぁ
日常茶飯事なのである。

「ケンカなら他所よそでやってよね~。早く自己紹介して議題に移りたいんだけど 」
「まあまあ、リオ。そう言わず付き合ってあげなよ」
リオと呼ばれた女装少年は、明らかに嫌そうな顔をする。
「……シルヴィア、皆が呆れているぞ」
ウィルヴィアがさとすも、
「それはお兄様の体たらくに対してですわ」
と言って聞かない。ウィルヴィアは正直めんどくさいので、手っ取り早く解決する方法を実行に移した。

「……ちゅ。」

マウストゥーマウスで接吻である。

「「「(何でだよ!!)」」」
と皆心で思ったが口には出さず。
しかし、シルヴィアには効果があったようで、
ボフンッという効果音と共に真っ赤になって静かになった。

「妹が迷惑かけた。」
何事も無かったかのように、次を促す。
「うぅん、策士ネ」
水冷シュイロンだけがウキウキしているが、他の者は
(もう好きにして……)って感じである。

「あー…じゃあおれ。リオ=オルタビア。
無邪気な吸血鬼ハームレス・ヴァンパイア」だ。普段は人間達の村で偵察と監視を行っているから、滅多に森にはいない。」
ま、よろしく。と言って、手をヒラヒラと振る。リオは、薄水色の長い髪を一つで右耳の上で纏めてくくっている。どこか儚げな印象を持っているが、態度が不遜なためにそれもどこへやら、だ。

「じゃあ次、僕いいかな?」
リオの隣に座っているもう一人の女装少年が、ワクワクといった様子で自己紹介を始める。
「僕は「道化の吸血鬼ヴァンパイア・クラウン」のカルラだよ。リオと一緒に人間達のスパイをしてる。特技は擬態かな。」
そう言うやいなや、カルラは蜘蛛に擬態した。擬態の精度は相当なもので、どこからどう見ても蜘蛛そのものだ。

「ひぃ…!」
「気持ち悪いヨ~」
「いやぁ~ん!」
など、女性陣からは悲鳴が飛ぶ。
擬態を解いたカルラは、おかしそうに腹を抱えて
「あっははは…!いいねその表情、最高だよ…!」
と高笑いする。リオはカルラの肩にポン、
と手を置いてかぶりを振った。

「冗談だよ。でもまあ、覚えておいてね。僕は「道化師クラウン」だ。簡単に信用しちゃいけないよ」
とウインクをする。
「さあ、次はお姫様に自己紹介願おうかな」
カルラが話を振ると、隣にいる少女が小さくお辞儀する。その動作はとても優美で、可憐である。
「私はシェリーと申します。「吸血鬼の姫君ヴァンパイア・プリンセス」です。改めてよろしくお願いします」
涼やかに透き通って、それでいて凛とした声。
銀髪に黄金の瞳のシェリーは、存在だけで見るものを圧倒する。まるで、ダイアモンドのようだ。
「お次は、サリバさんですよ」
シェリーはフッと微笑んで、サリバに促す。
可憐な笑顔を見ても、動じないのはサリバとギゼラぐらいだろう。
「ああ、分かった。」
サリバは頷くと

「あー…サリバだ。よろしく頼む。」
とだけ言う。

「サリバ様……照れてるんですのぉ?」
ビオラが頬を染めてサリバに問う。
「いや、そうではないが…」
サリバが口篭るのは珍しいことである。

これには、実は深い理由わけがあったのだ。
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