吸血鬼の憂鬱

うみぼうず

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一章 吸血鬼

第六滴 告白

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黙ったまま固まってしまったサリバを見て、プリムラが言葉をかける。

「…サリバ、「階級クラス」は言いたくなければ言わなくていいわ。誰もそれは強制しないし。でも、これだけは覚えておいて。貴方が何者であろうと、誰も貴方を奇異きいの目で見ることはないし、ましてや仲間じゃないなんて思う人もいないわ」

プリムラはサリバの肩に手を置き、真っ直ぐにサリバの瞳を見つめた。サリバの赤い瞳にはしっかりとプリムラが写っており、サリバもその言葉に頷いた。

「ああ。…分かっている。」

そんなサリバを見て、ビオラが心配そうに呟く。 
「……サリバ様ぁ、何か秘密があるんですのぉ?
そう言えば、サリバ様がこの森に来られてから三百年の間、「階級クラス」も何も聞いてないですわぁ」

それを受けて、他の吸血鬼達もざわつきだす。
そう言えばそうだ。どこから来たのかも聞いてない。
いつの間にかいたよな。
そういう言葉がざわめきに混じってサリバに届く。

吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」になったのはサリバのせいではなく、ケイが勝手にしたことであって、本来サリバが気に病む必要などない。ただ、異端者いたんしゃとして見られることは覚悟する必要がある。

吸血鬼は元来プライドが高い生き物であり、特に「人間」を毛嫌いする者は多い。
「人間はエサであり家畜である」という思想を昔から持っているのである。それゆえに、サリバは今まで自分の「階級クラス」を言わなかった。自分は皆と違って純血な吸血鬼ではない。サリバは負い目を感じていた。

「私は…」

サリバが口を開くと、ざわついていた皆がサリバを見つめ静寂が広がる。セシルは心配そうにサリバを見つめていた。

「私は、「吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」のサリバ=マクダラーだ。」

前をまっすぐ見据えて、サリバが告白すると、皆がまたしてもザワつく。

「ウソっ…!「吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」!?サリバ様が元人間…!?」
「「吸血鬼の子ダンピール」じゃないかと踏んでたヨ~」
「は、はは…まさか「吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」とはね…」

やはり、ダメだったか……。サリバがそう判断し、席を立とうとすると。 

「そうだ。サリバは俺の「花嫁ブライド」だ。」

いつの間にかサリバの背後に、地面から抜け出した血だらけでビショビショの「吸血鬼の王ヴァンパイア・ロード」のケイが立っていた。

「やっぱりケイ、キミの仕業だったのかい」
ノイが苦笑しながら言うと、
「俺以外にいねーだろうが。言っとくがな、サリバはただの人間じゃない。サリバがちっちぇー頃から俺がずっと目をつけてた、言わば「吸血鬼の王ヴァンパイア・ロード」に見初められた人間だ。」
何故か得意げに、ケイが鼻をフフンと鳴らす。

「どうだサリバ。今初めて聞いただろ!だって今初めて言ったからな!光栄だろ!嬉しいだろ!?」
ケイはサリバの両肩を掴み、前後にがこがこ揺さぶる。サリバはケイの手を払うと、冷ややかな目で告げた。
「全くもって嬉しくないし迷惑だ」
「がーーん」
ケイは今日1日で5回は軽く死んだ。

「そ、そうですわよぉ!」
と、その時ビオラのキャピキャピ声が響いた。
「ケイ、貴方は自分勝手なんですの!サリバ様は貴方のモノじゃないですわぁ!そりゃぁ、貴方がサリバ様を「吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」にしてなければ、サリバ様に会うこともできなかったのは認めますけどぉ…。それとこれとは話が別!ですのよ!」

ビオラはサリバと目が合うと、頬を赤らめてモジモジしながら言う。
「ビオラはぁ、サリバ様が元人間だとしても全く気にしませんわぁ」
そしてケイを睨みつけて言う
「ケイの「花嫁ブライド」であることは腑に落ちませんけどぉ!!」

しかし、ビオラの言葉によりほかの吸血鬼達も同様に
「サリバが元人間だからなんだって言うんだ。もうオレ達の仲間であり家族じゃないか」
「そ、そうですよサリバさん!私達は家族です!」
「いつまで気にしてるヨ~!アタシらそんなの気にしてないネ!」
「ワタクシは下等生物にんげんは嫌いですが。サリバ、貴方のような紳士的な下等生物にんげんもいるという事が分かりましたわ。貴方だけは特別に認めてさしあげますわ」
など、サリバの心配をよそにサリバが
吸血鬼の花嫁ヴァンパイア・ブライド」であることに何の問題も感じていないようだった。

「…そうか。すまない。」

サリバが頭を下げると、プリムラが微笑みながら言う
「こういう時は、『ありがとう』よ。」

「ありがとう…」

サリバの言葉に、皆の顔に笑顔が浮かぶ。
ビオラなどは、パァという効果音が付いてきそうだ。

「サリバ様ぁ、今からでも遅くありませんわぁ!ケイなんてやめて、ビオラにしてくださいですのぉ!」

その言葉に、ケイ、セシル、シェリーの三人が講義する。
「な、何を言ってるんですか?ビオラさん!」
「そうですよ、サリバさんの気持ちも聞かず勝手に決めるのはよくないです。」
「そうだぜ小娘ぇ!誰がお前みたいなあぶねーやつにサリバをやるかってんだ!」

ビオラはサリバの横に立っているケイに歩み寄ると
「小娘じゃありませんわぁ!私には、ビオラ=ユースフェリアっていう名前がちゃんとあるんですのよぉ!それに、サリバ様だって迷惑だって言ってたじゃない!ケイなんてやめるべきなんですの!」
サリバの気持ちは無視して勝手にぎゃあぎゃあとケンカしだす。ウィルヴィアに至ってはめんどくさいというよりうるさいのか、両耳を塞いで真顔で机にアゴを乗せている。

「だー!もう落ち着きなさい二人共!今はそんな事どうでもいいから!」
プリムラが制止するが、二人は聞く耳持たず言い争う。もうだめだ……誰もがそう思った時。

くだんのサリバが動いた。

自分を挟んで睨み合うケイとビオラに分かるように、ヒラヒラと手を振る。まずはケイ。
「んお?なんだサリバ」
ケイはなんの疑いもなく腰をかがめて、ヒソヒソ話でもされるのかとサリバの顔の前に顔を近づける。その瞬間、サリバはケイの服のネクタイをグイッと引っ張り
「うおっ!?」ガブゥッ!!思いっきり首筋を噛んだ。

「いっっってぇぇぇぇぇ!!」
ケイの首筋からは当然のごとく血が噴き出し、あまりの痛みに悶絶する。ビオラ含めた全員が青ざめた。

「うわぁ……」とリオ。
「なんだろう、見ただけで痛い…」と、カルラは自分の首筋を押さえる。

サリバは立ち上がって、固まったままのビオラに向き直り「さ、サリバ様ぁ…痛いのはやめて…」半泣きになっているビオラの首筋に顔を近づけると、「ひっ!」

かぷっ。

「はぁん…」
ビオラは失神した。

「……お、おみごとー!勝者、サリバ!!」
プリムラのジャッジで、皆が我に帰る。
おおおお!!と歓声が上がり、サリバ意外とやるネ~という水冷シュイロンの声が聞こえる。

「あ、いや、失神するとは思わなかったんだ…」
サリバはプリムラに告げると、
「だぁ~いじょうぶよ。ビオラにとってはご褒美だわ」
と答える。その言葉通り、ビオラは幸せそうに目を閉じている。とりあえず失神したままのビオラを、巨木の窪みになっている所に置いてある長イスに寝かせ、一段落……

と思ったが、ケイのことを忘れていた。

「ケイすまない。あれしか方法が無かったとはいえ、さすがにやりすぎた。」

サリバが、床に倒れて悶絶しているケイに謝る。
「~~~っ、サリバのバカっ!すんげぇ痛かったんだからな!」
涙目でキッとサリバをめつけるケイは、さながら子犬のような印象を持たせる。
「ああ、そうだろうな。」
無表情のままサリバがコクっと頷くと、
「今夜は寝かせねーかんな!覚えとけよ!」
とまるで悪役の捨て台詞みたいな言葉を吐く。

「……分かった。甘んじて受け入れよう。」
サリバがそう答えると、後ろから
「受けいれなくていいのよ!悪いのはそのバカなんだから」
と、プリムラが加勢に入る。水冷シュイロン以外のほかの吸血鬼達も同様に頷いている。

「まあ?サリバがどぉーしてもケイとやりたいんなら止めないけど。イヤならちゃんと断りなさい」

「分かった。……すまない、ケイ。私はイヤだ」

「そっこーでフるなよ!プリムラ余計なこと言いやがってぇ……」

ケイは首筋を押さえながらプリムラを睨むが

「ん?」

プリムラの恐ろしい笑顔に
「なんでもありません。」
勝てるはずもない。

「とりあえず、一段落ついた事だし。そろそろ本命の会議に移りますかね」
プリムラがパンッと手を叩くと、皆自分の席に戻った。血がまだ止まらないケイを見たセシルが、腰のポシェットから絆創膏を取り出しケイに差し出した。

「あ、すまねぇな。」
ケイにしてはちゃんとお礼を言って、隣の席のプリムラに貼ってもらう。すぐに赤く染まったが。

「なぁ、みんな忘れてね?……俺腹減ってんだけど」

ケイの訴えは誰にも聞きいれて貰えなかった
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