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四 偽モノの、婚約者ができました。
side遙音2
しおりを挟むふと、神宮の足元に目が行った。昨日、神宮の部屋にあったのとは柄が違うけど、似たような大きさの袋が置かれている。
こんな可愛いもの、神宮が購入したものではないことは明白だ。
……そんな神宮は想像するだけでキモい。そして、誰が作ったか言わなかった美味い料理。
知り合い。――知り合い、ね。
……そうだな、ここは、お前らが言う証拠摑んでから来い、ってとこか?
自分に問題をふっかけ、しかしあらかた推測はついているので、さて証拠を摑みに行こうかと机から腰をあげた。
追い詰めるのなら逃げ場をなくせ。逃げ場を埋めて退路を断て。
極悪なまでに性格の悪い春芽吹雪(かすが ふゆき)流の攻め方だ。今はぴったりだと思う。
神宮、雲居、春芽の三人の師が華取さんと二宮さんなら、俺はその三人に師事していると言えるかもしれない。
「ま、いーや。道踏み外すなよ、センセイ?」
「お前は大人しく生徒やってろよ……」
呆れ混じりにそんな忠告を受けても、俺は肯きはしない。
大人しくやっていたら、なんにも出来ねーんだ。
お前らに憧れちまった身としてはなぁ?
すぐに華取咲桜の教室のお邪魔しようかと思ったけど、それはやめておいた。
面識がない後輩のところへ乗り込んでも警戒されるだけだし、俺にも、華取咲桜の周囲に対して軽率なことは出来ない理由がある。
華取咲桜が本当に神宮の関係者なら、なおさら。
雲居から、華取在義県警本部長は極度の娘バカだと聞いている。
けど華取咲桜は、俺が神宮同様警察に関わっているとは知らないだろう。
まだ高校生という立場上、学者である神宮や探偵の雲居とは違って、内部でも存在を秘されているからだ。
誰の口の端にのぼることもない。――神宮以外には。
学校で弁当の受け渡しをしているなら、家まで押しかけるような関係ではないのだろうな。
一番考えやすいのは、神宮の雑な生活にみかねた華取さんあたりが、娘に神宮の食事を作るように言った――だろうか。
あいつ、ほんと自分に興味ねーからな……。
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