桜の鬼【完】

桜月真澄

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四 殺すために生き続けた鬼と護るために生き続けた鬼

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湖雪はそっと腕を伸ばし、鬼の頭を抱きしめる。惣一郎が息を呑む気配が伝わったが、何も言わなかった。……鬼は涙した。

「ゆきこ……ゆき、こ………」

「うん」

「……ゆきこ……生きているか? 元気か? ……ちゃんと、憶えているか……?」

「うん……桃花が育ててくれたんだもんね」

「………ゆきこ。すまない………途中で、いなくなってしまって……」

「大丈夫だよ。桃花には、いつか逢えるってわかってたから」

「………ゆきこ。ありがとう……生きていてくれて………あたし、ゆきこが大好きだったぞ。だから……何度も探したんだ……―――虹琳寺の鬼と逃げろ。櫻といると狙われる」

泣いていた声が、突然鋭くなった。湖雪ははっとして身を離した。真正面から見た桃花は、不安げな顔で告げる。

「桃花? どうしたの?」

「あたしを殺した鬼、櫻を狙ってる。夏居が鬼になってあたしを殺したんだ。夏桜の血、根絶やしにするつもりだ」

……桜の古木が見せた夢の中で、桃花を殺した鬼。夏居は人から鬼になった。狙っていたのは、櫻の血筋なのか。

「桃花……。桃花も一緒だよ」

一緒に、いるんだ。桃花だけじゃない。今まで傍にいてくれた旭日も、湖雪はなくしなくない。

湖雪が呼びかけるが、応えはない。

……鬼は顔をしかめた。哀しそうに。

「……あたしは、無理だ。呪阻を、かけられた」

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