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王都編95 宴の前
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王都編95 宴の前
思い返せば怒涛の数ヶ月だった。
目が覚めたら自分が作っていたゲームに良く似た世界、自分が創ったと思っていたキャラクターとして目が醒めて。色んな紆余曲折を経て、最愛の人が出来た。
凡ゆる手段を用いて追い遣った政敵ミナルチークはすっかり精神を病んで貴族用の牢屋の中でずっとぶつぶつ何事か呟いているそうだ。そのせいであまり聴取も進んでいないらしい。彼と繋がりのある朱凰国の人間の話を聞きたいのだが、この調子では難しいかもしれないな。少なくとも薬物の出所くらいは締め上げたいんだが…それもこれからの調査次第だろう。
宮廷貴族としてこの国で台頭してきたミナルチークの失脚と不正や犯罪を犯していた者達を粛清した事で勢力図は一気に塗り変わった。とはいえ、その粛清もまだ終わっていないから同時進行で進めている。恨みは山ほど買っていそうだ。
この世界で目が覚めたばかりの頃だったら、ミナルチークを追い遣った段階で終わったと気を抜いていただろう。しかし、現実は忙殺される一方だった。
ユリシーズに自分達がまれびとである事を告白したあの日、俺達は長い時間を掛けて話し合いをした。不確定な事が多いし、予測でしかない話をユリシーズは真剣に聞いて協力して共に立ち向かっていく事を約束してくれたのはありがたい。
現状の整理と同時進行で自分達の足場固めと情報収集、混乱する国の沈静化。それに通常業務。相変わらずやる事だらけで一向に減る気配がない。
大粛清の余波で国内は大混乱状態だし、更迭した領地持ち貴族達の領地を一旦近隣の貴族に見てもらう交渉も続けている。抜けた宮廷貴族の数少ない仕事を他の者に振りつつ、合間に通常業務をぶん回して、と仕事に追われに追われていた。それ故にここ数日帰るのは日が落ちて随分経ってからだった。
流石のオルテガも不満気ながらも残業を容認してくれて自分も居残って付き合ってくれた。…というよりも、騎士団の方でも王都の守りを請け負う事や尋問や取り締まりでかなり忙しい様だ。
ガーランド家に帰ったら帰ったでユリシーズからされたお願いの件で休む暇もなかった。大好きな風呂にもゆっくり入る暇もなく、烏の行水みたいにさっと出入りしてはベッドに倒れ込み、夢を見る余裕もなく爆睡して朝は叩き起こされる、というのが俺のここ数日だ。
社畜時代の嫌な思い出が蘇りながらも、とりあえず今日を超えたらひと段落する。そう必死に自分を言い聞かせつつ、ついに迎えたのが週末の祝夏の宴である。
幾度も話にあげてきたが、祝夏の宴というのはローライツ王国における夏場の社交シーズンの幕開けを告げる宴だ。国内外から多くの賓客が集まり、ローライツ王国でも建国祭と並ぶ盛大な宴が催される。王都城下でも夏の到来を喜ぶ祭りとして街並みを花で飾り付けて沢山の屋台が並び、派手に祝われるのだ。
一年で一番華やぐ季節に開かれる絢爛な宴は否応にも人々の心を浮き立たせる。しかし、裏腹に俺の心は沈む一方だった…。
そんな宴の開幕もあと数分というところにまで迫った今現在。
俺は幼馴染達とステラと共に会場である大広間の扉の前で入場を控えていた。既に中からはさわさわと大勢の人々の話し声が聞こえてくる。
ちなみにオルテガは警備の関係で朝から別行動だ。今この場にはいないが、入場は一緒にする手筈になっているので、今は彼が来るのを待っている状況だ。
こういった場では位の低い者達から入場するから俺達は一番後となる訳だが、そうなると必然的に人の注目を集める訳で。入った瞬間こちらに向けられるであろう数多の目を想像すると胃が痛くなってくる。ただでさえ、オルテガプロデュースの服装とユリシーズのお願いという厄介事のせいでここ数日頭と体と足が痛いというのに。
「左足を引いてターン、その後……」
煌びやかな装いとは裏腹に途切れずぶつぶつと呪文の様に呟くのはダンスのステップだ。
そう、ユリシーズからされたお願いとは祝夏の宴でファーストダンスを踊る事である。
そもそもファーストダンスとは舞踏会の始めにその場に参加している中で最も位の高い者が最初に踊るものだ。今回の場合だったら本来はユリシーズ、リンゼヒース、ライドハルト辺りになる筈だった。しかし、ユリシーズは寡、リンゼヒースは婚約者なし、ライドハルトは婚約破棄とやらかしで謹慎、と王家が軒並み出られない状況である。誰かしらパートナーを捕まえろよと思わないでもないが、恐らく俺とオルテガの婚約お披露目を兼ねているので文句も言えなかった。
そういう訳でここ数日は日中は仕事で忙殺、帰ったらダンスの猛レッスンに追われていたのだ。
考えれば考えるほどごちゃごちゃになってステップが怪しくなってくるのにおさらいする時間はもうない。何故なら本番がもう目の前だからである。
ユリシーズから直々にファーストダンスを仰せつかってから数日。俺は寝る間も惜しんでエルカンナシオンによる猛指導を受けた。されど、悲しい事に「俺」も「私」も運動神経が宜しくない所為であんまり上達していない。何だったらステップも通しでちゃんと踏めるか未だに怪しい。
エルカンナシオン曰く、「頭で考えるからダメだ」と言われたものの、どう動くのか考えずに出来たら最初っから苦労しない訳でして。みんな楽しそうにさらっと踊ってるけど、どうやって覚えてるんだ!?
ぶつぶつ呟いて動きのおさらいをしているが、本当に心拍数と血圧と胃がやばい。集合前はオルテガから贈られた今日の服と装飾品一式にドン引きしていたが、今はそれどころじゃない。
今日は先日のプライベートな夜会とは違って公のものだ。客もこの国貴族はもちろんのこと、他国のお偉いさんが大勢いる。そんな中でとちってみろ。末代までの恥だ。
しかし、不安と緊張とでぐるぐるしている俺に対して周りの反応は冷淡なものである。
「別に失敗したってフィンの足を踏むくらいでしょ? 盛大にすっ転ぶとかしたら流石にちょっとどうかなって思うけど、足を踏むくらいなら失敗のうちに入らないよ」
「そもそもダンスってそんなに緊張するものか? 適当にくるくる回っとけばいいだろ」
しれっとそう宣うのは正装姿の幼馴染共だ。お前ら揃って他人事だと思いやがってこのやろう。
そして、そんな俺の横には顔色を真っ白にしているステラがいる。同じ様に呪文の如く呟いているのは今日これからの手順だ。
ステラはステラで決意表明的な事をやらされるという手筈になっているのでそれを前にド緊張しているらしい。最近思ったんだが、ステラと俺は割と思考回路が似ている気がする。死んだ経緯も似た様なものだしな。
考え過ぎてダメになるところも似ているようだ。これが悪癖なのはわかっている。しかしな、小心者の俺達の気持ちだって多少は慮って欲しい。
「お前らとは違ってこちとら中身は一般庶民なんだ! もう少し気を遣え!」
「そうですよ! 心臓が口から出そうなんですから!」
思わず文句を言ったらステラも追従してきた。どうやら彼女もだいぶストレスを感じているようだ。
追い詰められた俺達の様子にサディアスが呆れた様に小さく溜め息を零す。そもそも人に見られる事にすら慣れていない俺達にいきなりハードルが高過ぎるんだよ。
「いいかい、よく聞くんだステラ。無邪気さを前面に押し出していくんだよ。愛嬌で乗り切るんだ。多少失敗したって君はまだ若いし、ミナルチークに無理矢理従わされていた平民って下地があるから大丈夫だよ。何かあっても僕やルアクが助けるからね」
懇々と噛んで含めるように言い聞かせるサディアスの言葉にステラがこくこくと必死に頷く。
ステラはこの世界で生まれた時から記憶があるタイプのまれびとのようだ。時折精神面の幼さが出るのは肉体側の影響なんだろうか。
「それに、演説さえ終わっちゃえばどうせ注目も話題もリア達にいくからね」
「そ、そうなの……?」
ちらりとステラがこちらを不安気に見遣る。確かにサディアスの言う通りになるだろうが、釈然としない。
「話題を攫うなら間違いなくリアとフィンの方だ。何しろ宰相と騎士団長の婚約だぞ。それも小説にもなるほど壮絶な大恋愛劇を経ての発表だからな」
小説にしたのは情報操作の一環ではあったんだが、非常に迷惑な事にこの小説が世間では大流行りらしい。増刷を重ねているダーランは笑いが止まらないようで、先日顔を合わせた時には「お陰様で大儲けだよ」と小憎らしくカラカラ笑っていた。
当事者である俺としてはそんな状況でオルテガとセットで観衆の前に姿を出すのが非常に嫌だ。そもそも目立つのが嫌なのに、小説が流行った事や先日の夜会でのプロポーズ騒動で世間の注目の的になっている。そんなタイミングで目立つ場所に出るのを考えただけで胃が痛くなるというものだ。
しかし、悋気と独占欲が強過ぎる我が婚約者殿が衆目を集めるであろうこんな絶好の機会を逃してくれる訳もなく…。
「それにしても、今日の装いはまた一段と凄いね」
呆れ半分に俺の姿を見て感嘆の声をあげるのはサディアスだ。彼の言う通り、今日の俺の格好は一際凄いものになっていた。
まずは頭だ。ハーフアップに結われた後頭部は真珠とダイヤモンドとで作られたヘッドピースが黒い髪を星のように飾っている。大小様々な真珠や宝石を惜しげもなく使っているからこれ一つでいくらするのか考えるだけで恐ろしい。
フロックコートはパッと見は所々に透明な宝石のビーズが縫い付けられたシンプルな漆黒だ。しかし、よーく見ると光沢の強い黒い絹糸で非常に繊細な星座の絵柄が刺繍されている。糸の色を布地より僅かに明るくしている事と糸の光沢で動くと刺繍が見える仕組みになっているようだ。パッと見ただけで相当手間暇が掛かっている代物だし、素材もやばそうだな。
スラックスも同じ素材、同じ手法で作られているらしい。靴も黒いから全身真っ黒なんだが、アクセサリーの宝石や小物の差し色があるせいか小洒落て見える。
中に着ているウェストコートは黒に近いような深い藍色だ。白い絹のシャツは肌触り抜群だし、首元は細い絹糸で編み込まれた壮麗なレースのクラヴァットが巻かれている。クラヴァットと俺の耳元を飾るのはオルテガの瞳と同じ黄昏色の宝石。頭の先からつま先まで贅の限りを尽くしたオルテガの独占欲と顕示欲の集大成である。
完成して贈られたこの衣装を見た俺はドン引きしたが、未来の義母であるエルカンナシオンとうちやガーランド家の侍女達の圧に勝てなかった。この調子では婚姻の衣装が恐ろしい。もっとシンプルにいきたいんだが、恐らく今回同様かそれ以上のとんでもない代物が用意される事だろう。
「この服着てるだけで俺の胃は既に死にそうだがな……!」
今からこの姿で人が沢山いる所に出て、更にはオルテガと踊らないといけないとかどんな拷問だ。何より恐ろしいのが今不在の男である。
なぜならオルテガの溺愛は留まる事を知らないが、俺自身もまた同様彼にメロメロだからだ。
朝食の席で顔を合わせたっきりの男がどんな姿でやってくるのか。騎士団の正装自体はスチルで散々見てきたとはいえ、やはり実物の破壊力は侮れないだろう。
つい先日の夜会の事を思い出しつつ、内心で溜め息を零す。婚約者の着飾った姿を見て自分が正気を保てる事を祈ろう。とりあえず、叫ばないようにしたい。
そんな俺の願いも虚しく、向かいにいたリンゼヒースが何かに気がついて手を振った。同時に背後から近付いてくるのは急いだような足音だ。
「すまない、遅くなった」
珍しく少し弾む声音。走ってきたのだろうか。声と気配がするだけなのに心臓が大暴れして振り返れない。初恋に焦がれる初心な少女でもあるまいに、と我ながら思うんだが振り返れないものは振り返れないのだ。直視したら尊さで死ぬ自信があるからな。
そんな俺の心情を知っているであろうサディアスがにまにま笑いながら俺の肩を抱いて振り返るよう促してくる。やめろ、まだ色んな心の準備が出来てない!
「リア」
強請るような甘い声音が俺を呼ぶ。その声に誘われて、自然と体が動いた。動いてしまった。どうやら、俺は心底彼に弱いらしい。
そうして振り返った先には息を呑むような美丈夫が立っていた。
元々攻略者として上がっていた訳だし、そもそもオルテガは美形だ。その上で今のオルテガは騎士団の正装姿ときた。今回は略式ではなく正式な正装なので前回とは段違いに眩しい。黒い布地に金の紐で肋骨飾り設えたドルマン式の軍装は彼の肉体美を余す事なく飾り立てる。胸元には数々の勲章。何より素晴らしいのはペリースだ!
ペリースとは片側の肩にだけ掛けたマントである。ファンタジーとか軍服でよく見かけるけど、名前の良くわからないアレだ。元は軽騎兵が剣による切り傷を防ぐ為に左肩に着用していた短い毛皮のジャケットらしい。今回は儀礼的なものなので見栄え重視で長いマントの様になっている。
元々、涼介からオルテガのデザインを見せてもらっていた時から良く似合うと思っていたんだが、実物の破壊力ときたらとんでもない。さっきから直視し続ける事が出来なくてだな。
何となく視線を逸らしているそんな俺の心情なんてお見通しの男が逃がしてくれる筈もなく、こっそり逃げようとした腰を抱き寄せられて顎を取られる。
「目を逸らすな。俺を見ろ」
「ひぇ……」
いきなりの俺様ムーブに思わず変な声が出た。ただでさえオルテガのビジュアルに弱いというのにいきなり被虐心を煽る様な振る舞い。おまけにまた『黄昏』をつけてやがる。こういう場ではやめろって言ってるのに。
「お前の為の装いだぞ」
耳元で低くて甘い声が囁く。ビジュアル萌えに弱い事もとっくの昔にバレているのでガンガン当ててくるつもりらしい。
しかしだ、この素晴らしい男が俺のもの。同じ様に俺もまた彼のものだ。否応にも思い知らされて腰が砕けそうになる。
「今日の俺をその目に焼き付けてくれ」
強請るような声音で囁きながらオルテガの唇が降ってきた。額や頬に落ちる唇の感触と目の前に広がる光景にキャパシティオーバーを起こした俺はフリーズするしかない。
好きで好きで仕方ない相手が、自分の為に着飾って、更にはこんな事を言ってくるんだぞ。ただでさえチョロいというのに耐えられる訳がない。
「……可愛い。耳まで真っ赤だ」
長い指が耳介や耳朶を撫で、微かに擦れる様な音が耳元で響く。ここ数日は仕事とダンスのレッスンに追われて碌に触れ合っていなかった俺には『黄昏』の香りとオルテガの行動は刺激が強過ぎた。それでなくとも彼には弱いというのに…。
「ああ……俺の色を纏っているお前は最高に美しいな。このまま誰にも見せたくない」
甘い声で口説かれて抱き寄せられるだけで色々考えていた事が全部吹っ飛んでしまった。言ってる内容はさておいて婚約者が良い男過ぎる。しかも、今日は略式ではない正装だ。服装自体はスチルで死ぬ程見てきたが、実物はもっとやばかった。とりあえず、これ以上直視したら死にそうなので手で顔を覆っておく。
「くそぉ……今日もマックスに良い男め……!!」
「良かったな、その良い男がお前の婚約者だと世間に大々的に発表出来るぞ」
拙い悪態をついても顔を隠す手に散々キスされた上で揶揄われる。本当にこの男と来たら…!!
「おーい、盛り上がってるところ申し訳ないが、そろそろ入場だぞー」
呆れたように掛けられたリンゼヒースの声にふと我に返る。見れば周りには生温い視線で俺達を見る幼馴染二人と顔を真っ赤にしているステラ、そして気不味そうに目を逸らす入場担当の近衛騎士達。
「ーーーーっ!!!!」
他の人達がいた事を思い出した俺は盛大に悲鳴を挙げそうになったのを慌てて口を塞いで耐えた。何でこういつもこうなるんだ…!!
「残念だ。続きはまた後でな」
「ない! 後なんてないからな!!」
心底残念そうに言いながらオルテガが俺の額に唇を落とす。コイツの言う「後で」ほど恐ろしいので盛大に拒否っておいた。こうやって釘を刺しておかないと何をしでかすかわからない。
不服そうなオルテガは放っておいて気持ちを切り替えようと姿勢を正したところでふと気が付いた。
「やばい、今のでダンスのステップも何もかも全部吹っ飛んだ……!」
頭を抱えた俺の悲痛な叫びも虚しく、無情にも祝夏の宴、開幕のファンファーレが鳴り響くのであった。
思い返せば怒涛の数ヶ月だった。
目が覚めたら自分が作っていたゲームに良く似た世界、自分が創ったと思っていたキャラクターとして目が醒めて。色んな紆余曲折を経て、最愛の人が出来た。
凡ゆる手段を用いて追い遣った政敵ミナルチークはすっかり精神を病んで貴族用の牢屋の中でずっとぶつぶつ何事か呟いているそうだ。そのせいであまり聴取も進んでいないらしい。彼と繋がりのある朱凰国の人間の話を聞きたいのだが、この調子では難しいかもしれないな。少なくとも薬物の出所くらいは締め上げたいんだが…それもこれからの調査次第だろう。
宮廷貴族としてこの国で台頭してきたミナルチークの失脚と不正や犯罪を犯していた者達を粛清した事で勢力図は一気に塗り変わった。とはいえ、その粛清もまだ終わっていないから同時進行で進めている。恨みは山ほど買っていそうだ。
この世界で目が覚めたばかりの頃だったら、ミナルチークを追い遣った段階で終わったと気を抜いていただろう。しかし、現実は忙殺される一方だった。
ユリシーズに自分達がまれびとである事を告白したあの日、俺達は長い時間を掛けて話し合いをした。不確定な事が多いし、予測でしかない話をユリシーズは真剣に聞いて協力して共に立ち向かっていく事を約束してくれたのはありがたい。
現状の整理と同時進行で自分達の足場固めと情報収集、混乱する国の沈静化。それに通常業務。相変わらずやる事だらけで一向に減る気配がない。
大粛清の余波で国内は大混乱状態だし、更迭した領地持ち貴族達の領地を一旦近隣の貴族に見てもらう交渉も続けている。抜けた宮廷貴族の数少ない仕事を他の者に振りつつ、合間に通常業務をぶん回して、と仕事に追われに追われていた。それ故にここ数日帰るのは日が落ちて随分経ってからだった。
流石のオルテガも不満気ながらも残業を容認してくれて自分も居残って付き合ってくれた。…というよりも、騎士団の方でも王都の守りを請け負う事や尋問や取り締まりでかなり忙しい様だ。
ガーランド家に帰ったら帰ったでユリシーズからされたお願いの件で休む暇もなかった。大好きな風呂にもゆっくり入る暇もなく、烏の行水みたいにさっと出入りしてはベッドに倒れ込み、夢を見る余裕もなく爆睡して朝は叩き起こされる、というのが俺のここ数日だ。
社畜時代の嫌な思い出が蘇りながらも、とりあえず今日を超えたらひと段落する。そう必死に自分を言い聞かせつつ、ついに迎えたのが週末の祝夏の宴である。
幾度も話にあげてきたが、祝夏の宴というのはローライツ王国における夏場の社交シーズンの幕開けを告げる宴だ。国内外から多くの賓客が集まり、ローライツ王国でも建国祭と並ぶ盛大な宴が催される。王都城下でも夏の到来を喜ぶ祭りとして街並みを花で飾り付けて沢山の屋台が並び、派手に祝われるのだ。
一年で一番華やぐ季節に開かれる絢爛な宴は否応にも人々の心を浮き立たせる。しかし、裏腹に俺の心は沈む一方だった…。
そんな宴の開幕もあと数分というところにまで迫った今現在。
俺は幼馴染達とステラと共に会場である大広間の扉の前で入場を控えていた。既に中からはさわさわと大勢の人々の話し声が聞こえてくる。
ちなみにオルテガは警備の関係で朝から別行動だ。今この場にはいないが、入場は一緒にする手筈になっているので、今は彼が来るのを待っている状況だ。
こういった場では位の低い者達から入場するから俺達は一番後となる訳だが、そうなると必然的に人の注目を集める訳で。入った瞬間こちらに向けられるであろう数多の目を想像すると胃が痛くなってくる。ただでさえ、オルテガプロデュースの服装とユリシーズのお願いという厄介事のせいでここ数日頭と体と足が痛いというのに。
「左足を引いてターン、その後……」
煌びやかな装いとは裏腹に途切れずぶつぶつと呪文の様に呟くのはダンスのステップだ。
そう、ユリシーズからされたお願いとは祝夏の宴でファーストダンスを踊る事である。
そもそもファーストダンスとは舞踏会の始めにその場に参加している中で最も位の高い者が最初に踊るものだ。今回の場合だったら本来はユリシーズ、リンゼヒース、ライドハルト辺りになる筈だった。しかし、ユリシーズは寡、リンゼヒースは婚約者なし、ライドハルトは婚約破棄とやらかしで謹慎、と王家が軒並み出られない状況である。誰かしらパートナーを捕まえろよと思わないでもないが、恐らく俺とオルテガの婚約お披露目を兼ねているので文句も言えなかった。
そういう訳でここ数日は日中は仕事で忙殺、帰ったらダンスの猛レッスンに追われていたのだ。
考えれば考えるほどごちゃごちゃになってステップが怪しくなってくるのにおさらいする時間はもうない。何故なら本番がもう目の前だからである。
ユリシーズから直々にファーストダンスを仰せつかってから数日。俺は寝る間も惜しんでエルカンナシオンによる猛指導を受けた。されど、悲しい事に「俺」も「私」も運動神経が宜しくない所為であんまり上達していない。何だったらステップも通しでちゃんと踏めるか未だに怪しい。
エルカンナシオン曰く、「頭で考えるからダメだ」と言われたものの、どう動くのか考えずに出来たら最初っから苦労しない訳でして。みんな楽しそうにさらっと踊ってるけど、どうやって覚えてるんだ!?
ぶつぶつ呟いて動きのおさらいをしているが、本当に心拍数と血圧と胃がやばい。集合前はオルテガから贈られた今日の服と装飾品一式にドン引きしていたが、今はそれどころじゃない。
今日は先日のプライベートな夜会とは違って公のものだ。客もこの国貴族はもちろんのこと、他国のお偉いさんが大勢いる。そんな中でとちってみろ。末代までの恥だ。
しかし、不安と緊張とでぐるぐるしている俺に対して周りの反応は冷淡なものである。
「別に失敗したってフィンの足を踏むくらいでしょ? 盛大にすっ転ぶとかしたら流石にちょっとどうかなって思うけど、足を踏むくらいなら失敗のうちに入らないよ」
「そもそもダンスってそんなに緊張するものか? 適当にくるくる回っとけばいいだろ」
しれっとそう宣うのは正装姿の幼馴染共だ。お前ら揃って他人事だと思いやがってこのやろう。
そして、そんな俺の横には顔色を真っ白にしているステラがいる。同じ様に呪文の如く呟いているのは今日これからの手順だ。
ステラはステラで決意表明的な事をやらされるという手筈になっているのでそれを前にド緊張しているらしい。最近思ったんだが、ステラと俺は割と思考回路が似ている気がする。死んだ経緯も似た様なものだしな。
考え過ぎてダメになるところも似ているようだ。これが悪癖なのはわかっている。しかしな、小心者の俺達の気持ちだって多少は慮って欲しい。
「お前らとは違ってこちとら中身は一般庶民なんだ! もう少し気を遣え!」
「そうですよ! 心臓が口から出そうなんですから!」
思わず文句を言ったらステラも追従してきた。どうやら彼女もだいぶストレスを感じているようだ。
追い詰められた俺達の様子にサディアスが呆れた様に小さく溜め息を零す。そもそも人に見られる事にすら慣れていない俺達にいきなりハードルが高過ぎるんだよ。
「いいかい、よく聞くんだステラ。無邪気さを前面に押し出していくんだよ。愛嬌で乗り切るんだ。多少失敗したって君はまだ若いし、ミナルチークに無理矢理従わされていた平民って下地があるから大丈夫だよ。何かあっても僕やルアクが助けるからね」
懇々と噛んで含めるように言い聞かせるサディアスの言葉にステラがこくこくと必死に頷く。
ステラはこの世界で生まれた時から記憶があるタイプのまれびとのようだ。時折精神面の幼さが出るのは肉体側の影響なんだろうか。
「それに、演説さえ終わっちゃえばどうせ注目も話題もリア達にいくからね」
「そ、そうなの……?」
ちらりとステラがこちらを不安気に見遣る。確かにサディアスの言う通りになるだろうが、釈然としない。
「話題を攫うなら間違いなくリアとフィンの方だ。何しろ宰相と騎士団長の婚約だぞ。それも小説にもなるほど壮絶な大恋愛劇を経ての発表だからな」
小説にしたのは情報操作の一環ではあったんだが、非常に迷惑な事にこの小説が世間では大流行りらしい。増刷を重ねているダーランは笑いが止まらないようで、先日顔を合わせた時には「お陰様で大儲けだよ」と小憎らしくカラカラ笑っていた。
当事者である俺としてはそんな状況でオルテガとセットで観衆の前に姿を出すのが非常に嫌だ。そもそも目立つのが嫌なのに、小説が流行った事や先日の夜会でのプロポーズ騒動で世間の注目の的になっている。そんなタイミングで目立つ場所に出るのを考えただけで胃が痛くなるというものだ。
しかし、悋気と独占欲が強過ぎる我が婚約者殿が衆目を集めるであろうこんな絶好の機会を逃してくれる訳もなく…。
「それにしても、今日の装いはまた一段と凄いね」
呆れ半分に俺の姿を見て感嘆の声をあげるのはサディアスだ。彼の言う通り、今日の俺の格好は一際凄いものになっていた。
まずは頭だ。ハーフアップに結われた後頭部は真珠とダイヤモンドとで作られたヘッドピースが黒い髪を星のように飾っている。大小様々な真珠や宝石を惜しげもなく使っているからこれ一つでいくらするのか考えるだけで恐ろしい。
フロックコートはパッと見は所々に透明な宝石のビーズが縫い付けられたシンプルな漆黒だ。しかし、よーく見ると光沢の強い黒い絹糸で非常に繊細な星座の絵柄が刺繍されている。糸の色を布地より僅かに明るくしている事と糸の光沢で動くと刺繍が見える仕組みになっているようだ。パッと見ただけで相当手間暇が掛かっている代物だし、素材もやばそうだな。
スラックスも同じ素材、同じ手法で作られているらしい。靴も黒いから全身真っ黒なんだが、アクセサリーの宝石や小物の差し色があるせいか小洒落て見える。
中に着ているウェストコートは黒に近いような深い藍色だ。白い絹のシャツは肌触り抜群だし、首元は細い絹糸で編み込まれた壮麗なレースのクラヴァットが巻かれている。クラヴァットと俺の耳元を飾るのはオルテガの瞳と同じ黄昏色の宝石。頭の先からつま先まで贅の限りを尽くしたオルテガの独占欲と顕示欲の集大成である。
完成して贈られたこの衣装を見た俺はドン引きしたが、未来の義母であるエルカンナシオンとうちやガーランド家の侍女達の圧に勝てなかった。この調子では婚姻の衣装が恐ろしい。もっとシンプルにいきたいんだが、恐らく今回同様かそれ以上のとんでもない代物が用意される事だろう。
「この服着てるだけで俺の胃は既に死にそうだがな……!」
今からこの姿で人が沢山いる所に出て、更にはオルテガと踊らないといけないとかどんな拷問だ。何より恐ろしいのが今不在の男である。
なぜならオルテガの溺愛は留まる事を知らないが、俺自身もまた同様彼にメロメロだからだ。
朝食の席で顔を合わせたっきりの男がどんな姿でやってくるのか。騎士団の正装自体はスチルで散々見てきたとはいえ、やはり実物の破壊力は侮れないだろう。
つい先日の夜会の事を思い出しつつ、内心で溜め息を零す。婚約者の着飾った姿を見て自分が正気を保てる事を祈ろう。とりあえず、叫ばないようにしたい。
そんな俺の願いも虚しく、向かいにいたリンゼヒースが何かに気がついて手を振った。同時に背後から近付いてくるのは急いだような足音だ。
「すまない、遅くなった」
珍しく少し弾む声音。走ってきたのだろうか。声と気配がするだけなのに心臓が大暴れして振り返れない。初恋に焦がれる初心な少女でもあるまいに、と我ながら思うんだが振り返れないものは振り返れないのだ。直視したら尊さで死ぬ自信があるからな。
そんな俺の心情を知っているであろうサディアスがにまにま笑いながら俺の肩を抱いて振り返るよう促してくる。やめろ、まだ色んな心の準備が出来てない!
「リア」
強請るような甘い声音が俺を呼ぶ。その声に誘われて、自然と体が動いた。動いてしまった。どうやら、俺は心底彼に弱いらしい。
そうして振り返った先には息を呑むような美丈夫が立っていた。
元々攻略者として上がっていた訳だし、そもそもオルテガは美形だ。その上で今のオルテガは騎士団の正装姿ときた。今回は略式ではなく正式な正装なので前回とは段違いに眩しい。黒い布地に金の紐で肋骨飾り設えたドルマン式の軍装は彼の肉体美を余す事なく飾り立てる。胸元には数々の勲章。何より素晴らしいのはペリースだ!
ペリースとは片側の肩にだけ掛けたマントである。ファンタジーとか軍服でよく見かけるけど、名前の良くわからないアレだ。元は軽騎兵が剣による切り傷を防ぐ為に左肩に着用していた短い毛皮のジャケットらしい。今回は儀礼的なものなので見栄え重視で長いマントの様になっている。
元々、涼介からオルテガのデザインを見せてもらっていた時から良く似合うと思っていたんだが、実物の破壊力ときたらとんでもない。さっきから直視し続ける事が出来なくてだな。
何となく視線を逸らしているそんな俺の心情なんてお見通しの男が逃がしてくれる筈もなく、こっそり逃げようとした腰を抱き寄せられて顎を取られる。
「目を逸らすな。俺を見ろ」
「ひぇ……」
いきなりの俺様ムーブに思わず変な声が出た。ただでさえオルテガのビジュアルに弱いというのにいきなり被虐心を煽る様な振る舞い。おまけにまた『黄昏』をつけてやがる。こういう場ではやめろって言ってるのに。
「お前の為の装いだぞ」
耳元で低くて甘い声が囁く。ビジュアル萌えに弱い事もとっくの昔にバレているのでガンガン当ててくるつもりらしい。
しかしだ、この素晴らしい男が俺のもの。同じ様に俺もまた彼のものだ。否応にも思い知らされて腰が砕けそうになる。
「今日の俺をその目に焼き付けてくれ」
強請るような声音で囁きながらオルテガの唇が降ってきた。額や頬に落ちる唇の感触と目の前に広がる光景にキャパシティオーバーを起こした俺はフリーズするしかない。
好きで好きで仕方ない相手が、自分の為に着飾って、更にはこんな事を言ってくるんだぞ。ただでさえチョロいというのに耐えられる訳がない。
「……可愛い。耳まで真っ赤だ」
長い指が耳介や耳朶を撫で、微かに擦れる様な音が耳元で響く。ここ数日は仕事とダンスのレッスンに追われて碌に触れ合っていなかった俺には『黄昏』の香りとオルテガの行動は刺激が強過ぎた。それでなくとも彼には弱いというのに…。
「ああ……俺の色を纏っているお前は最高に美しいな。このまま誰にも見せたくない」
甘い声で口説かれて抱き寄せられるだけで色々考えていた事が全部吹っ飛んでしまった。言ってる内容はさておいて婚約者が良い男過ぎる。しかも、今日は略式ではない正装だ。服装自体はスチルで死ぬ程見てきたが、実物はもっとやばかった。とりあえず、これ以上直視したら死にそうなので手で顔を覆っておく。
「くそぉ……今日もマックスに良い男め……!!」
「良かったな、その良い男がお前の婚約者だと世間に大々的に発表出来るぞ」
拙い悪態をついても顔を隠す手に散々キスされた上で揶揄われる。本当にこの男と来たら…!!
「おーい、盛り上がってるところ申し訳ないが、そろそろ入場だぞー」
呆れたように掛けられたリンゼヒースの声にふと我に返る。見れば周りには生温い視線で俺達を見る幼馴染二人と顔を真っ赤にしているステラ、そして気不味そうに目を逸らす入場担当の近衛騎士達。
「ーーーーっ!!!!」
他の人達がいた事を思い出した俺は盛大に悲鳴を挙げそうになったのを慌てて口を塞いで耐えた。何でこういつもこうなるんだ…!!
「残念だ。続きはまた後でな」
「ない! 後なんてないからな!!」
心底残念そうに言いながらオルテガが俺の額に唇を落とす。コイツの言う「後で」ほど恐ろしいので盛大に拒否っておいた。こうやって釘を刺しておかないと何をしでかすかわからない。
不服そうなオルテガは放っておいて気持ちを切り替えようと姿勢を正したところでふと気が付いた。
「やばい、今のでダンスのステップも何もかも全部吹っ飛んだ……!」
頭を抱えた俺の悲痛な叫びも虚しく、無情にも祝夏の宴、開幕のファンファーレが鳴り響くのであった。
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