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6 重なる夕焼けと月
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6 重なる夕焼けと月
抱き上げられたまま辿り着いたのは俺の寝室だ。
途中で擦れ違った使用人がめちゃくちゃ驚いた顔をしていたからオルテガは相当必死な形相だったようだ。空気の読めるうちの使用人なら、俺達の状況だけで全て察してある程度の時間は放っておいてくれるだろう。
少々乱暴に寝台に降ろされ、直ぐにオルテガが覆い被さってくる。乱れ気味の髪を掻き上げながらこちらを見る仕草は何だか色っぽくて思わずドキリとしてしまう。
「他の男に抱かれた事は?」
「あってたまるか!」
耳元で囁くオルテガの問いにギョッとして思わず声を挙げる。そもそもこんな骸骨のような体に欲情する人間なんてそうそういないだろう。
「良かった。……もし、俺より先にお前を暴いた奴が居るなら、そいつを殺していた」
仄暗い笑みを浮かべてそんな事を宣うオルテガの目は本気だった。
「ヤンデレかよ」
思わずゾッと寒気が走り、情欲ではなく恐怖にふるりと体を震わせていれば大きな掌が俺の首に掛かる。
大きな手、逞しい腕だ。俺の首をへし折るなんて容易いだろう。
「リア。ずっとこうするのが夢だった」
陶然と語る口調、熱に浮かされた瞳。浮いた話の一つもなく、質実剛健を形にしたような男がここまで変わるなんて。いや、これが彼の本性なのかもしれない。
意識の奥底で「私」が歓喜に震えている。
「このまま首でも折って永遠にお前のものにするか?」
「それも良いかもしれない」
笑みを浮かべて挑発すれば、あっさり乗って来た。興醒め、と言いたいところだが首に本当に力が込められて思わず少々眉を顰める。
ひゅぅと細く呼気が漏れ、苦しくなってくる中でオルテガを見つめて笑みを浮かべた。
そうだ。堕ちてこい、オルテガ・フィン・ガーランド。
「フィン」
親しい者しか赦されない名を呼べば、夕焼け色の瞳が大きく開かれる。ゆっくりと両手でオルテガの頬に触れて、それはそれは優しく甘い、慈愛に満ちた笑みを浮かべ、囁くのは必殺の一言。
「お前になら殺されても良いよ」
その言葉を終えると同時に再び噛み付くように口付けられた。獣のように貪りついてくるオルテガに応えるように俺は逞しい腰に足を絡め、首に腕を回して先を強請る。
互いに貪り合いながら交差する夕焼けと月。
嗚呼、夜はこれからだ。
◆◆◆
……強く抱きしめれば折れてしまいそうな体を穿つ度に、悲鳴のような嬌声が挙がる。初めは多少の痛みがあったようだが、今は快楽の方が勝っているらしい。
背中に爪を立てられる痛みすら心地良くて白い肌に貪りつく。既に緋い痕がいくつも肌の上に咲いているがまだ足りなかった。
「フィン……っ」
愛しい声が名前を呼んでくれる。昔と変わらぬ美しい月色の瞳が自分だけを見つめている。
嗚呼、それだけで幸福だ。
腕の中にいるセイアッドを抱き締めながら互いに快楽を貪り合う。
「あっ……気持ちい……」
甘い声で啼きながらセイアッドが身悶える。無意識に快楽から逃げようとする腰を掴んでより深く穿てば、細い体が声も無く絶頂しナカがきつく締め上げてきた。
「っ……!」
小さく呻きながら最奥に精を吐き出す。快楽の余波に気をやっているのか、惚けていたセイアッドがはふはふと必死に呼吸を繰り返しているのが愛しい。
余韻を味わいながらも艶を取り戻してきた黒い髪が汗で額に貼り付いているのを払ってやり、白い額に口付けを落とす。
「リア」
名前を呼べば、漸く月色の瞳の焦点が合う。
「フィン……」
とろりと甘い声が名前を呼ぶのに誘われるままにセイアッドを見つめれば、ふにゃりと柔らかな笑みが浮かぶ。
「リア、愛してる」
「ん、私も……愛してる…フィン」
ずっと望んできた言葉を与えられて、思わず唇に食らいつく。応えるように絡み付いてくる舌を存分に味わいながら、再び兆してきた己が急かすままにセイアッドを突き上げれば、小さくくぐもった悲鳴が上がった。
既に体力の限界なのだろう。成すがままの細い体は何の抵抗もなくオルテガの無体を受け入れる。雄を咥え込んだままの後孔はぷくりと赤く色付き、律動を繰り返すたびにいやらしい水音と共に幾度も放った精を溢れ零れさせていた。
美しい幼馴染を手に入れるのはオルテガの悲願だった。幼い頃から共に過ごしてきたセイアッドはオルテガにとって人生の宝であり、最も尊い者だ。
月のように清廉で穏やかな気性の幼馴染はオルテガにとっての聖域にも等しい存在。だからこそ、海のように深い恋情を、獣のような劣情を抱きながらもその想いを殺し、決して伝えるつもりなんてなかった。墓までこの想いを抱えたまま、静かに彼を見守れれば良いと思っていたのに。
運命とは悪戯なものだ。親友から齎されたセイアッド追放の急報を聞いて、居ても立っても居られなかった。
何頭もの馬を乗り潰しながら漸く辿り着いたレヴォネ領でも、初めは顔だけ見られれば満足する筈だった。しかし、馬車から降りて来たセイアッドの変わり様にそんな思いも吹き飛んだ。
元より線の細い男ではあったが、まるで幽鬼のように痩せ衰えていた。闇夜のように美しかった髪は艶が失せ、白い肌は不健康に蒼白くまるで死人のようだった。
セイアッドのあまりの変わり様に、オルテガは愕然とした。彼が国の為に、どれだけ身を犠牲にしたのか。そんな彼に、国がした仕打ちはどうだ。そう思えば、あれ程厚く誓った筈の忠誠心があっという間に消え失せてしまったのだ。
セイアッドはオルテガの立場を心配しているが、休暇を申請したとはいえ遠征を放り出して遥か北へ奔ったきり戻らぬ事を国が許す訳がない。オルテガ自身も、もう騎士団長の座に戻るつもりなんてなかった。
セイアッドのした事が罪だというのならば、オルテガはそのような決定を下した国に、王になど従うつもりはない。兄には叱責されるかもしれないが、腕の中に在る者を失くす方がずっと恐ろしかった。
これからは傍らで守れる。ずっと傍に居て、愛しめる。
セイアッドにはまだ黙っているが、オルテガは騎士団長を辞し、また騎士の身分を返上する手紙を国王と自らの兄に対して送っていた。セイアッドが知れば、きっと綺麗な顔を真っ赤にして怒るだろう。
セイアッドこそが誰よりもオルテガが騎士になった事を喜んでくれた人なのだから。だが、己が守りたいものすら守れない者が騎士に相応しい筈もない。
「リア」
名を呼べば、月色の瞳がオルテガを見た。涙で潤んだ瞳は快楽に蕩け、普段の冴えた光は微塵も無い。
麗しの月を、自らの手で穢し堕とした事をいつか後悔する日が来るかもしれない。だが、それでも手を伸ばさずには、そして溺れずにはいられなかった。
◆◆◆
体の痛みと喉の渇きに呻きながら俺は寝床の中で恐る恐る体を伸ばした。微かに残る情事の残り香に昨夜の出来事を思い出す。
正直、抱き殺されるかと思った。
夕刻から気絶するまで散々味合わされた快楽の一端を思い出し、胎の奥が甘く疼く。獣のような情交は激しくて、俺は途中から碌に覚えていない。ただ、深くまで穿たれて突き上げられる度に筆舌し難い程の快感に襲われ、最終的には悲鳴じみた嬌声を上げながらオルテガの逞しい体に縋り付いていただけだった。
情事の気配を色濃く残した体は無理な体勢をとった事であちこち関節やら筋肉やらが痛いし、視界に入る肌だけでもこれでもかと痕やら咬み傷が残っている。一番確認するのが恐ろしいのは後ろだ。この世界に痔の薬なんかあるのだろうかと思わず思考が逃避する。
俺の予想以上にオルテガは恋情を拗らせていたらしい。この調子で抱かれたら事を起こす前に間違いなく死ぬ。
まずは待てを躾なければならないか、とため息をついた時だ。部屋のドアがノックもなく開き、ガウンだけ羽織ったオルテガが銀のトレイを手に入ってくる。
「起きたのか」
「ああ」
がさがさに掠れた声に顔を顰めて喉を撫でる。散々喘がされた喉は今日一日使い物になりそうにない。そんな俺の様子を見て、オルテガが申し訳なさそうに眉を下げる。
その様子はまるで悪戯を叱られた犬のようだ。
「フィン」
だが俺は愛おしいその名を、この声で呼んでやろう。
「こちらへ」
お前の痕が色濃く遺るしなやかなこの腕でお前を迎えてやろう。
「あいしている」
身も心もお前にやろう。だから……。
俺の言葉を聞いたオルテガが銀のトレイを取り落とし、そのままベッドへと駆け寄ってくる。トレイに乗っていた銀食器やカップが床に落ち、割れ散る耳障りな音の中でオルテガが俺の腕に飛び込み、強く抱き締めてくれる。
嗚呼、いとしいひと、やっとてにいれた。
意識の奥底、「私」が囁く。
そうだ、よかったなセイアッド。お前の積年の想いが遂げられた。オルテガはお前のものだ。
だから、オルテガよ。どうか「私」を離さないでやってくれ。
そう誓ってくれるなら、俺は俺の全てを懸けてお前の為に生きよう。
「私」の幸福こそが「俺」の願いなのだから。
抱き上げられたまま辿り着いたのは俺の寝室だ。
途中で擦れ違った使用人がめちゃくちゃ驚いた顔をしていたからオルテガは相当必死な形相だったようだ。空気の読めるうちの使用人なら、俺達の状況だけで全て察してある程度の時間は放っておいてくれるだろう。
少々乱暴に寝台に降ろされ、直ぐにオルテガが覆い被さってくる。乱れ気味の髪を掻き上げながらこちらを見る仕草は何だか色っぽくて思わずドキリとしてしまう。
「他の男に抱かれた事は?」
「あってたまるか!」
耳元で囁くオルテガの問いにギョッとして思わず声を挙げる。そもそもこんな骸骨のような体に欲情する人間なんてそうそういないだろう。
「良かった。……もし、俺より先にお前を暴いた奴が居るなら、そいつを殺していた」
仄暗い笑みを浮かべてそんな事を宣うオルテガの目は本気だった。
「ヤンデレかよ」
思わずゾッと寒気が走り、情欲ではなく恐怖にふるりと体を震わせていれば大きな掌が俺の首に掛かる。
大きな手、逞しい腕だ。俺の首をへし折るなんて容易いだろう。
「リア。ずっとこうするのが夢だった」
陶然と語る口調、熱に浮かされた瞳。浮いた話の一つもなく、質実剛健を形にしたような男がここまで変わるなんて。いや、これが彼の本性なのかもしれない。
意識の奥底で「私」が歓喜に震えている。
「このまま首でも折って永遠にお前のものにするか?」
「それも良いかもしれない」
笑みを浮かべて挑発すれば、あっさり乗って来た。興醒め、と言いたいところだが首に本当に力が込められて思わず少々眉を顰める。
ひゅぅと細く呼気が漏れ、苦しくなってくる中でオルテガを見つめて笑みを浮かべた。
そうだ。堕ちてこい、オルテガ・フィン・ガーランド。
「フィン」
親しい者しか赦されない名を呼べば、夕焼け色の瞳が大きく開かれる。ゆっくりと両手でオルテガの頬に触れて、それはそれは優しく甘い、慈愛に満ちた笑みを浮かべ、囁くのは必殺の一言。
「お前になら殺されても良いよ」
その言葉を終えると同時に再び噛み付くように口付けられた。獣のように貪りついてくるオルテガに応えるように俺は逞しい腰に足を絡め、首に腕を回して先を強請る。
互いに貪り合いながら交差する夕焼けと月。
嗚呼、夜はこれからだ。
◆◆◆
……強く抱きしめれば折れてしまいそうな体を穿つ度に、悲鳴のような嬌声が挙がる。初めは多少の痛みがあったようだが、今は快楽の方が勝っているらしい。
背中に爪を立てられる痛みすら心地良くて白い肌に貪りつく。既に緋い痕がいくつも肌の上に咲いているがまだ足りなかった。
「フィン……っ」
愛しい声が名前を呼んでくれる。昔と変わらぬ美しい月色の瞳が自分だけを見つめている。
嗚呼、それだけで幸福だ。
腕の中にいるセイアッドを抱き締めながら互いに快楽を貪り合う。
「あっ……気持ちい……」
甘い声で啼きながらセイアッドが身悶える。無意識に快楽から逃げようとする腰を掴んでより深く穿てば、細い体が声も無く絶頂しナカがきつく締め上げてきた。
「っ……!」
小さく呻きながら最奥に精を吐き出す。快楽の余波に気をやっているのか、惚けていたセイアッドがはふはふと必死に呼吸を繰り返しているのが愛しい。
余韻を味わいながらも艶を取り戻してきた黒い髪が汗で額に貼り付いているのを払ってやり、白い額に口付けを落とす。
「リア」
名前を呼べば、漸く月色の瞳の焦点が合う。
「フィン……」
とろりと甘い声が名前を呼ぶのに誘われるままにセイアッドを見つめれば、ふにゃりと柔らかな笑みが浮かぶ。
「リア、愛してる」
「ん、私も……愛してる…フィン」
ずっと望んできた言葉を与えられて、思わず唇に食らいつく。応えるように絡み付いてくる舌を存分に味わいながら、再び兆してきた己が急かすままにセイアッドを突き上げれば、小さくくぐもった悲鳴が上がった。
既に体力の限界なのだろう。成すがままの細い体は何の抵抗もなくオルテガの無体を受け入れる。雄を咥え込んだままの後孔はぷくりと赤く色付き、律動を繰り返すたびにいやらしい水音と共に幾度も放った精を溢れ零れさせていた。
美しい幼馴染を手に入れるのはオルテガの悲願だった。幼い頃から共に過ごしてきたセイアッドはオルテガにとって人生の宝であり、最も尊い者だ。
月のように清廉で穏やかな気性の幼馴染はオルテガにとっての聖域にも等しい存在。だからこそ、海のように深い恋情を、獣のような劣情を抱きながらもその想いを殺し、決して伝えるつもりなんてなかった。墓までこの想いを抱えたまま、静かに彼を見守れれば良いと思っていたのに。
運命とは悪戯なものだ。親友から齎されたセイアッド追放の急報を聞いて、居ても立っても居られなかった。
何頭もの馬を乗り潰しながら漸く辿り着いたレヴォネ領でも、初めは顔だけ見られれば満足する筈だった。しかし、馬車から降りて来たセイアッドの変わり様にそんな思いも吹き飛んだ。
元より線の細い男ではあったが、まるで幽鬼のように痩せ衰えていた。闇夜のように美しかった髪は艶が失せ、白い肌は不健康に蒼白くまるで死人のようだった。
セイアッドのあまりの変わり様に、オルテガは愕然とした。彼が国の為に、どれだけ身を犠牲にしたのか。そんな彼に、国がした仕打ちはどうだ。そう思えば、あれ程厚く誓った筈の忠誠心があっという間に消え失せてしまったのだ。
セイアッドはオルテガの立場を心配しているが、休暇を申請したとはいえ遠征を放り出して遥か北へ奔ったきり戻らぬ事を国が許す訳がない。オルテガ自身も、もう騎士団長の座に戻るつもりなんてなかった。
セイアッドのした事が罪だというのならば、オルテガはそのような決定を下した国に、王になど従うつもりはない。兄には叱責されるかもしれないが、腕の中に在る者を失くす方がずっと恐ろしかった。
これからは傍らで守れる。ずっと傍に居て、愛しめる。
セイアッドにはまだ黙っているが、オルテガは騎士団長を辞し、また騎士の身分を返上する手紙を国王と自らの兄に対して送っていた。セイアッドが知れば、きっと綺麗な顔を真っ赤にして怒るだろう。
セイアッドこそが誰よりもオルテガが騎士になった事を喜んでくれた人なのだから。だが、己が守りたいものすら守れない者が騎士に相応しい筈もない。
「リア」
名を呼べば、月色の瞳がオルテガを見た。涙で潤んだ瞳は快楽に蕩け、普段の冴えた光は微塵も無い。
麗しの月を、自らの手で穢し堕とした事をいつか後悔する日が来るかもしれない。だが、それでも手を伸ばさずには、そして溺れずにはいられなかった。
◆◆◆
体の痛みと喉の渇きに呻きながら俺は寝床の中で恐る恐る体を伸ばした。微かに残る情事の残り香に昨夜の出来事を思い出す。
正直、抱き殺されるかと思った。
夕刻から気絶するまで散々味合わされた快楽の一端を思い出し、胎の奥が甘く疼く。獣のような情交は激しくて、俺は途中から碌に覚えていない。ただ、深くまで穿たれて突き上げられる度に筆舌し難い程の快感に襲われ、最終的には悲鳴じみた嬌声を上げながらオルテガの逞しい体に縋り付いていただけだった。
情事の気配を色濃く残した体は無理な体勢をとった事であちこち関節やら筋肉やらが痛いし、視界に入る肌だけでもこれでもかと痕やら咬み傷が残っている。一番確認するのが恐ろしいのは後ろだ。この世界に痔の薬なんかあるのだろうかと思わず思考が逃避する。
俺の予想以上にオルテガは恋情を拗らせていたらしい。この調子で抱かれたら事を起こす前に間違いなく死ぬ。
まずは待てを躾なければならないか、とため息をついた時だ。部屋のドアがノックもなく開き、ガウンだけ羽織ったオルテガが銀のトレイを手に入ってくる。
「起きたのか」
「ああ」
がさがさに掠れた声に顔を顰めて喉を撫でる。散々喘がされた喉は今日一日使い物になりそうにない。そんな俺の様子を見て、オルテガが申し訳なさそうに眉を下げる。
その様子はまるで悪戯を叱られた犬のようだ。
「フィン」
だが俺は愛おしいその名を、この声で呼んでやろう。
「こちらへ」
お前の痕が色濃く遺るしなやかなこの腕でお前を迎えてやろう。
「あいしている」
身も心もお前にやろう。だから……。
俺の言葉を聞いたオルテガが銀のトレイを取り落とし、そのままベッドへと駆け寄ってくる。トレイに乗っていた銀食器やカップが床に落ち、割れ散る耳障りな音の中でオルテガが俺の腕に飛び込み、強く抱き締めてくれる。
嗚呼、いとしいひと、やっとてにいれた。
意識の奥底、「私」が囁く。
そうだ、よかったなセイアッド。お前の積年の想いが遂げられた。オルテガはお前のものだ。
だから、オルテガよ。どうか「私」を離さないでやってくれ。
そう誓ってくれるなら、俺は俺の全てを懸けてお前の為に生きよう。
「私」の幸福こそが「俺」の願いなのだから。
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