盤上に咲くイオス

菫城 珪

文字の大きさ
97 / 209

閑話 ステラ・ルシェ・ミナルチークの狂気

しおりを挟む
閑話 ステラ・ルシェ・ミナルチークの狂気
 
 何なのよ!
 何をしても上手くいかないし、誰も彼も私の事を蔑ろにする!
 攻略したはずの三人だって初めは優しかったのに、今ではダグラスは全然姿を見せないし、マーティンも来なくなった。ルーイ様は仕事が忙しくて殆ど会う事すら出来ない。やっと香水が手に入ったのに会えなかったら意味ないじゃない!
 ようやく会えたと思ったリンゼヒースは冷たいし、ドラゴンに乗った奴等が襲ってきたから追い払ってあげようとしたらめちゃくちゃ怒られた。その上、お城に来てもいっつも一室に閉じ込められて、帰るまで誰も助けに来てくれない!
 どんどん状況が悪くなるばかりだわ!
「私はヒロインなのに!!」
 一度椅子を投げてドアを壊して脱走したせいで家具もまともにない部屋の中、どんなに泣き叫んでも召し使いすらご飯の時以外は来てくれない。外に出てルーイ様を探していたらあの時襲って来た青い髪をしたドラゴン男がいたからちょっと喧嘩売っただけなのに!
 ゲームの中だったらこんな事にはならなかったわ!ゲームのステラは相手から愛されて甘やかされてたのに、私がここで目覚めてかっこいいイケメンに囲まれてチヤホヤされてたのなんか本当に一瞬だけ。何でなのよ、理不尽だわ!
 せっかくヒロインに生まれ変わって、今度こそ誰からも愛されると思った。生まれ変わる前の惨めで一人きりな寂しい人生なんて送らないと思っていたのに!
 叫ぶのにも暴れるのにも疲れて唯一置かれた質素なソファーに座り込んで溜息を零す。どうしてこんな事になっているんだろう。視界に入るドレスはもう何度も着て少し形が崩れてきたし、暴れたせいでほつれている部分もある。
 独りきりの部屋で嫌でも思い出すのは前世で死ぬ前のことだ。
 小さい頃からずっと憧れていた仕事に就けたけれど、就職先で心を病んで以来周りの人と上手く付き合えなくて。誰かと接するのが嫌になって何年も働かずに家に引き篭もっていた。
 毎日の楽しみはネットサーフィンと恋愛ゲームで、この世界は最期にハマって遊んだゲームだった。
 ゲームの世界ならば、誰も彼も私を愛してくれる。罵倒する事も陰口を囁く事もない。ただ、キラキラしてドキドキするような恋が待っていた。
 のめり込む程に現実から目を逸らし続けた。ゴミだらけの狭くてテレビしかついていない薄暗い部屋。親にすら見放されていたあの暗い場所で私はずっと独りきりで……。
 どんどん沈んでいく頭を振って考えを切り替える。ダメダメ、今の私は「ステラ」なんだから! 前の自分を思い出して落ち込んでる暇なんてないわ。
 これまでの事を思い返してみれば、セイアッドを断罪する所までは全部順調だった。それなのに、あの男は高笑いして颯爽と去っていったわ。
 あんな骸骨みたいな不気味な男を視界に入れるのも嫌だったから大して話もしなかったし、ゲームでも惨めなちょい役だから気にした事はなかった。でも、あの男の行動から全部がおかしくなっているのは確かだ。
 こういうのをゲームとか漫画だと特異点って言うんだっけ。だとしたらセイアッドが変な事をしておかしくなっている世界ならアイツがいなくなれば元に戻るんじゃないかな。
 そうだわ!なんかのゲームでは特異点は修正しなきゃいけないって言ってたもの!そうやって私は何度も世界を救ってきたんだから!私ってば冴えてる!
 問題はどうやってアイツを消すかよね。今は領地にいるんだっけ。誰か話していたけど、馬車で一週間も掛かるって話だからそんな田舎に私が直接行くのは現実的じゃないわね。
 そうだ、ヤロミールがいるわ!アイツはセイアッドの事が好きだし、私がちょっと手紙で焚き付けてやったらすぐに会いに行ったみたい。ついでにあの香水を見つけてきてくれたのは助かったわ。
 顔見知りならセイアッドも油断するよね。ヤロミールには媚薬とか嘘を付いて毒でも飲ませればいいわ!
 それで、セイアッドが死ねばきっと全部元通りになる。そうに違いない。
 私は聖女として祭り上げられて、大好きなイケメン達と幸せに暮らすの。これ以上邪魔はさせないんだから!
 そうと決まったら部屋に閉じ込められている時間が勿体無いわ。明日からは此処には来ずにまずは毒薬をどうにかして手に入れなきゃ。お父様にお願いしたら用意してくれるかしら。
 大人しく家で反省しているフリをしていれば、王様達も怒るのやめて許してくれるかもしれないし…私はまだ諦めないわ!
 だって、この世界は私の為にあるんだから!!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。 「君のすべては、俺が管理する」 戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。 これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

運命の番ですが、俺が決めます

ふき
BL
商家の息子ヴィルヘルムは、 “氷の侯爵”と呼ばれるルーファスと「運命の番」になってしまう。 運命であることは疑いようもなく、身体は正直に反応する。 だが、運命の番として向き合うルーファスに、 ヴィルヘルムはどうしても憤りを抑えられなかった。 「それは俺が望むからでなくて、運命とやらが望むからだ…」 運命も、本能も否定できない。 それでもヴィルヘルムは、そのまま流されることに踏み切れずにいる。 二人の関係の行き着く先は? ※独自オメガバース要素あり ※性描写は後日談

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

処理中です...