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不穏な女子生徒
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今日は、ラノアとお揃いの髪飾りを着けて、シェフレラ家で開かれているお茶会に参加しております。
テオドール様は、お約束通り素敵なドレスを、贈ってくださいました。
「ラノア。私、彼が何を考えているのか、さっぱり分からないの。誕生日プレゼントを下さったり、ドレスを贈って下さったり、面と向かって私の事を可愛いとも仰るわ。これだけ聞いた人なら、とても素敵な婚約者だと思うのではなくって?」
「そうね。フェナジンからの贈り物だと思うと、凄く悔しいのだけれど…そのドレス、とても素敵よ。リーゼによく似合っているわ。それに、凄く愛されているのが分かるわね。独占欲の塊みたいなドレスだわ」
「ラノアもそう思うの?」
「私だけではないわ。皆様も、リーゼはテオドール様に愛されていると、思いますわよね」
お茶会に参加されているご令嬢たちは、学園でのテオドール様の行動をご存じの方ばかりでしたが、ラノアの言葉に賛同されておりました。
しかし私を愛していると言うのならば、何故他の女性に目移りをするのか、どうして私だけを見ていてはくれないのか疑問しか湧かないのです。
皆様もとても不思議に感じていた様ですが、平民と貴族の相違によるものが大きいのではないかと言う結論に至ったのでした。
辛気臭いお話は、この変で終わりに致しましょう。
せっかく素敵なお茶会の席ですし、あまりクヨクヨ考えていても仕方のない事ですから、嫌な事は忘れてとことん楽しもうと思ったのです。
ラノアとお揃いの髪飾りは、とても好評で皆様から羨ましがられました。
あまり高価な物を見に着けた事のなかった私は、褒められる事に慣れてなく何処か気恥しくもありましたが、素敵なプレゼントを贈って下さったテオドール様に深く感謝をしたのです。
ドレスや宝飾品の価値はよく分からなくても、クローゼットに仕舞い込んでいたドレスで参加していたら、きっと髪飾りだけが浮いてしまい可笑しな事になっていたのだと理解出来ました。
しかし、私がいくらテオドール様へ感謝の気持ちを述べたとしても、彼のお遊びが無くなる事はありませんでした。
それどころか日増しに行動が大胆になり、学園内であんな事やこんな事をしていたと、聞くのも堪えられない様な破廉恥な噂が飛び交うようになっていたのです。
この事態は両家の主人の耳にも入っていたのですが、フェナジン男爵は若気の至りと軽くあしらっている様にも見えますし、何か考えがあって黙認している様にも感じるのです。
ペンタール公爵令嬢と一緒に行動をしている事も多くなり、今ではテオドール様が誰と婚約をするのかと、かけをする生徒までいる始末。
学園に入ってから結婚相手を探す生徒も多いので、皆様面白半分で見ているだけで、彼を咎めて下さる方はおりませんでした。
肝心のペンタール公爵も、ご令嬢の行動には興味がないのか、黙認している様なのです。
彼女もあれ以来私に近寄って来る事もなく、公爵家から睨まれなかった事に胸をそっと撫でおろしておりました。
その代わりと言ってはおかしいのですが、とても面倒くさい方たちに絡まれる様になったのです。
テオドール様が遊びでお近付きになったお嬢様たちは、彼に相手にされなくなった途端に、怒りの矛先を私に向けてくる様になりました。
最も恐れていた事が、現実のものになってしまったのです。
相手は平民ですし、私は一応貴族なので、直接的な嫌がらせは受けておりません。
ただ私の有らぬ悪評が、いろいろなところから聞こえてくる様になりました。
人の悪意とは、何て恐ろしいものなのでしょうか。
フェナジン商会と懇意にしたいと考えている方も多く、こぞって悪意のある噂を広めていくのです。
私を蹴落としたところで、何の旨味もないと思うのですが、事実を知らぬ方たちの多い事といったら…
「はぁ………」
「もう、何度目の溜息なの?リーゼ。貴方の悪評なんて、気にする事ないわ。全部嘘だって事は、きちんとした人なら知っているもの。態と悪評を広めているおかしな人たちとなんて、今後関わり合う必要だってないのだもの。気にするだけ損よ」
「それは分かっているわ。でもね…没落寸前だったところを、助けて頂いたのは事実だもの。爵位をかさに着て、フェナジン商会にお金で私を売ったと言われても、違うとは言い切れないわ」
実際は、テオドール様が婿養子に来るという事を、知らない方も多いのです。
私はラノアに愚痴をこぼしながら、もう何度目かも分からない溜息を吐くのでした。
そこへ、とても甲高く通る声で、堂々と私を罵ってくる女子生徒が来ました。
「やっと見つけた、あんたがリーゼとかっていう女狐なんでしょう。あたしから逃げ回るから、随分と探したじゃないの。いい加減テオ君を、返してよ。もう充分に楽しんだのでしょう。お貴族様だからって、何をしても許される訳ないんだからね」
言葉使いもそうですが、制服を見る限り平民の一般生徒だと思うのですけれど、何故ここまで酷く罵られないといけないのでしょうか。
貴族に対する不敬罪で投獄されてしまう事を、知らない訳ではないと思うのですが、意味がわかりません。
「どなたかは存じませんが、学園は罵り合いをする様な場所ではありません。他の生徒の迷惑にもなるので、今直ぐお引き取り下さい」
「またそうやって、あたしから逃げようとするんだから。皆聞いてよ!この女は、あたしの婚約者を寝取ったとんでもない奴なのよ」
「なっ………」
身に覚えのない事を言われてしまい、私の頭の中は真っ白になってしまいました。
没落寸前だったとはいえ、私は貴族令嬢なのです。
結婚前に純潔を失う様な事をするはずがありませんわ。
「ちょっと貴方。その制服は、平民の一般生徒でしょう。ここは、貴族家の子息子女じゃなければ入れない場所なのよ。どうやって忍び込んで来たのかは知らないけれど、私の大切な親友を貶す事を言うのなら、侮辱罪で訴えるわよ」
そうでした。
ラノアが怒るのも当然で、学園内はとても広く、貴族しか入れない場所があるのです。
私は最近平民の生徒から冷たい視線を向けられる事が多くなったので、休み時間は逃げる様にこの制限区域に来て休んでいたのでした。
王族も利用するこの場所に、いったいどの様にして入って来たのでしょう?
出入り口には、守衛が常駐しているはずなのです。
ラノアが立ち上がり女子生徒に注意をしたのですが、全く悪びれる様子もなく喚き散らしている姿を、私は思考が回らずただ見つめる事しか出来ませんでした。
テオドール様は、お約束通り素敵なドレスを、贈ってくださいました。
「ラノア。私、彼が何を考えているのか、さっぱり分からないの。誕生日プレゼントを下さったり、ドレスを贈って下さったり、面と向かって私の事を可愛いとも仰るわ。これだけ聞いた人なら、とても素敵な婚約者だと思うのではなくって?」
「そうね。フェナジンからの贈り物だと思うと、凄く悔しいのだけれど…そのドレス、とても素敵よ。リーゼによく似合っているわ。それに、凄く愛されているのが分かるわね。独占欲の塊みたいなドレスだわ」
「ラノアもそう思うの?」
「私だけではないわ。皆様も、リーゼはテオドール様に愛されていると、思いますわよね」
お茶会に参加されているご令嬢たちは、学園でのテオドール様の行動をご存じの方ばかりでしたが、ラノアの言葉に賛同されておりました。
しかし私を愛していると言うのならば、何故他の女性に目移りをするのか、どうして私だけを見ていてはくれないのか疑問しか湧かないのです。
皆様もとても不思議に感じていた様ですが、平民と貴族の相違によるものが大きいのではないかと言う結論に至ったのでした。
辛気臭いお話は、この変で終わりに致しましょう。
せっかく素敵なお茶会の席ですし、あまりクヨクヨ考えていても仕方のない事ですから、嫌な事は忘れてとことん楽しもうと思ったのです。
ラノアとお揃いの髪飾りは、とても好評で皆様から羨ましがられました。
あまり高価な物を見に着けた事のなかった私は、褒められる事に慣れてなく何処か気恥しくもありましたが、素敵なプレゼントを贈って下さったテオドール様に深く感謝をしたのです。
ドレスや宝飾品の価値はよく分からなくても、クローゼットに仕舞い込んでいたドレスで参加していたら、きっと髪飾りだけが浮いてしまい可笑しな事になっていたのだと理解出来ました。
しかし、私がいくらテオドール様へ感謝の気持ちを述べたとしても、彼のお遊びが無くなる事はありませんでした。
それどころか日増しに行動が大胆になり、学園内であんな事やこんな事をしていたと、聞くのも堪えられない様な破廉恥な噂が飛び交うようになっていたのです。
この事態は両家の主人の耳にも入っていたのですが、フェナジン男爵は若気の至りと軽くあしらっている様にも見えますし、何か考えがあって黙認している様にも感じるのです。
ペンタール公爵令嬢と一緒に行動をしている事も多くなり、今ではテオドール様が誰と婚約をするのかと、かけをする生徒までいる始末。
学園に入ってから結婚相手を探す生徒も多いので、皆様面白半分で見ているだけで、彼を咎めて下さる方はおりませんでした。
肝心のペンタール公爵も、ご令嬢の行動には興味がないのか、黙認している様なのです。
彼女もあれ以来私に近寄って来る事もなく、公爵家から睨まれなかった事に胸をそっと撫でおろしておりました。
その代わりと言ってはおかしいのですが、とても面倒くさい方たちに絡まれる様になったのです。
テオドール様が遊びでお近付きになったお嬢様たちは、彼に相手にされなくなった途端に、怒りの矛先を私に向けてくる様になりました。
最も恐れていた事が、現実のものになってしまったのです。
相手は平民ですし、私は一応貴族なので、直接的な嫌がらせは受けておりません。
ただ私の有らぬ悪評が、いろいろなところから聞こえてくる様になりました。
人の悪意とは、何て恐ろしいものなのでしょうか。
フェナジン商会と懇意にしたいと考えている方も多く、こぞって悪意のある噂を広めていくのです。
私を蹴落としたところで、何の旨味もないと思うのですが、事実を知らぬ方たちの多い事といったら…
「はぁ………」
「もう、何度目の溜息なの?リーゼ。貴方の悪評なんて、気にする事ないわ。全部嘘だって事は、きちんとした人なら知っているもの。態と悪評を広めているおかしな人たちとなんて、今後関わり合う必要だってないのだもの。気にするだけ損よ」
「それは分かっているわ。でもね…没落寸前だったところを、助けて頂いたのは事実だもの。爵位をかさに着て、フェナジン商会にお金で私を売ったと言われても、違うとは言い切れないわ」
実際は、テオドール様が婿養子に来るという事を、知らない方も多いのです。
私はラノアに愚痴をこぼしながら、もう何度目かも分からない溜息を吐くのでした。
そこへ、とても甲高く通る声で、堂々と私を罵ってくる女子生徒が来ました。
「やっと見つけた、あんたがリーゼとかっていう女狐なんでしょう。あたしから逃げ回るから、随分と探したじゃないの。いい加減テオ君を、返してよ。もう充分に楽しんだのでしょう。お貴族様だからって、何をしても許される訳ないんだからね」
言葉使いもそうですが、制服を見る限り平民の一般生徒だと思うのですけれど、何故ここまで酷く罵られないといけないのでしょうか。
貴族に対する不敬罪で投獄されてしまう事を、知らない訳ではないと思うのですが、意味がわかりません。
「どなたかは存じませんが、学園は罵り合いをする様な場所ではありません。他の生徒の迷惑にもなるので、今直ぐお引き取り下さい」
「またそうやって、あたしから逃げようとするんだから。皆聞いてよ!この女は、あたしの婚約者を寝取ったとんでもない奴なのよ」
「なっ………」
身に覚えのない事を言われてしまい、私の頭の中は真っ白になってしまいました。
没落寸前だったとはいえ、私は貴族令嬢なのです。
結婚前に純潔を失う様な事をするはずがありませんわ。
「ちょっと貴方。その制服は、平民の一般生徒でしょう。ここは、貴族家の子息子女じゃなければ入れない場所なのよ。どうやって忍び込んで来たのかは知らないけれど、私の大切な親友を貶す事を言うのなら、侮辱罪で訴えるわよ」
そうでした。
ラノアが怒るのも当然で、学園内はとても広く、貴族しか入れない場所があるのです。
私は最近平民の生徒から冷たい視線を向けられる事が多くなったので、休み時間は逃げる様にこの制限区域に来て休んでいたのでした。
王族も利用するこの場所に、いったいどの様にして入って来たのでしょう?
出入り口には、守衛が常駐しているはずなのです。
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