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王太子と生徒会
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昨日のテオドール様に対する私の感動を、今、すぐに返して欲しいです。
学園の図書館で宿題をしていたら、窓を覗いていたらしき女子生徒が、急に黄色い声をあげたのです。
驚いて窓に近付いてみると、テオドール様が女子生徒に手を振っておりました。
腕には、見知らぬ女子生徒を絡ませながら…
「何なのですかアレは、破廉恥ですわ」
相変わらずテオドール様は学園の人気者で、女子生徒を沢山侍らせて闊歩しているのです。
私は窓から離れて、宿題に取り組みましたが、どうも気が散ってしまいます。
花祭りで出会った男の子は、澄み渡った青空の様な瞳で、私を見つめながら優しく微笑んでおりました。
名前も歳も知らないけれど、私の大切な初恋の思い出なのです。
大人になっても、子供の頃の面影くらいは残ると思うのですが…
私は、どうしてもテオドール様が、あの時の男の子だとは思えないのです。
あんなに可愛らしい男の子が、女子生徒を侍らせる大人になってしまっただなんて、綺麗な思い出を穢された様な気分になってしまうのですもの。
いつまでも、夢見がちな乙女でいる事が許されないのは理解出来ますが、せめてもう少し人目を気にしてくれたら良かったのにと思わずにはいられないのです。
「駄目だわ。こんな事では、特待生から外されてしまう。しっかりするのよ、リーゼリア。テストが近いのだから、さっさと宿題を終わらせて、テスト勉強をしましょう」
「何をブツブツと、言っているんだい?」
聞き覚えのある様な無い様な声を聞いて、うんざりした思いで顔を上げた私は、一瞬呼吸が止まってしまったのです。
「ヒッ」
ガタンッと大きな音を立てて、淑女にあるまじき行為で立ち上がってしまい、顔から火が吹き出しそうになりました。
図書室にいた生徒たちの視線も、一斉に浴びた気がします。
深く頭を下げた時、またお声を掛けられました。
「驚かせてしまったかな。畏まらなくてもよい、君に話しておきたい事があったのだ。ここでは話しにくいから、一緒に生徒会室へ来てくれないだろうか」
い…今ですか?
お断りしたいのですが、そうさせてくださらない、獲物を捕らえた肉食獣の様な笑顔を向けられてしまいました。
「か…畏まりました…」
私は、男子生徒に付いて、恐る恐る生徒会室まで来てしまいました。
彼は生徒会長で、王弟殿下のご子息。
つまり、王族なのです。
本来ならば、私みたいな一生徒がお話を出来る様なお相手ではありませんので、お声を掛けられた理由はひとつしか思い浮かびません。
生徒会室に入ると、王太子殿下が出迎えて下さいました。
「やぁ。リーゼリア・ノワール伯爵令嬢。ご機嫌は、如何かなぁ?」
最悪です!などとは、口が裂けても言えません。
「お初にお目に……」
「あ~堅苦しい挨拶は、要らないよぉ。いや~大変だったねぇ。私の元婚約者候補が、と~んでもない事をしでかしたみたいで、災難だったねぇ。詫びと言ってはなんだが、生徒会に入ってもらう事になったよぉ。と、言う訳でぇ、来年度から一緒に、頑張ろうではないかぁ」
ペンタール公爵令嬢の事を仰っているのは分かりますが、お詫びで生徒会に入るのは、何かが違う気がします。
出来る事なら関わり合いたくはなかったのですが、王太子殿下からお声を掛けられてしまっては、拒否権などないのです。
生徒会は、二学年から入る事が出来ますが、誰でも入れる訳ではありません。
来年度の生徒会長が、王太子殿下だという事は知っておりました。
次の生徒会長が、新しい役員を選ぶ権利があるというのも知っておりましたが、選ぶ基準が何かまでは知らなかったのです。
まさか私が選ばれるとは思ってもいなかったので、勉強と生徒会の両立が出来るかとても不安になりました。
私の心中を、察して下さったのか、次期生徒会長である王太子殿下が、励ましてくださいます。
「心配は、いらないさぁ。特待生でもあるリーゼリア嬢なら、大丈夫だよぉ。君の婚約者候補の彼には、た~くさん、文句を言われそうだけれどねぇ~」
王太子殿下は、とても楽しそうに笑っておりました。
そうでしたわ、テオドール様になんの相談もなく生徒会に入ったなら、絶対に文句を言われます。
ここは穏便にお断りした方が良さそうですわね。
きっと私よりも適任者がおりますもの。
「王太子殿下。誠に申し訳ございませんが……」
「これは、決定事項だからねっ、リーゼリア嬢。君に、拒否権は無いのだよぉ。だからぁ、潔く諦めるのが、賢明な判断なのさっ。分かるよねぇ?」
今ならお断り出来ると思ったのですが、王太子殿下に見透かされてしまっておりました。
「はい。宜しくお願いいたします」
テオドール様へ、生徒会の事を報告しなければならないと考えただけで、頭痛がしてきました…
生徒会役員なら適任者が沢山いる筈ですが、どうして私は、次から次へと問題を抱えてしまうのでしょうか。
本来ならば、王太子殿下にお近付きになれる好機ですし、光栄な事でもあるのです。
能力を認められ、殿下に気に入っていただけたのなら、王城勤めも出来るかもしれません。
ですが高位貴族のご令息やご令嬢が沢山務めている魔窟ともいえる王城での勤務は、貧乏で没落寸前の伯爵令嬢である私には、かなり荷が重く感じるのは仕方のない事だと思います。
それにまだ正式な婚約者が決まっていない王太子殿下のお傍に仕えるというのは、婚約者候補のご令嬢たちを差し置いてと思われるのではないかと、不安にもなりました。
何故ならば、現時点で役員に選ばれた方は、皆様男子生徒だったのです。
来年度から入る予定の生徒会役員は、残り一席だと言われたのですから、不安にならない方がおかしいのです。
会計は、殿下の側近であるキプロス・モンテカルロ侯爵令息で、総裁のご子息が務めております。
副会長には、現在隣国へ留学されている公爵令息が選ばれたそうで、王太子殿下の幼馴染でもあり親友でもあるお方だと仰っておりました。
皆様私よりもひとつ学年が上で、副会長の公爵令息以外は、持ち上がりになります。
二名必要な書記の一人が私で、もう一人はまだ検討中になっているのだそうです。
願わくば女子生徒が良いと、喉元まで出てきたのですが、グッと堪えて飲み込みました。
それにしても、こんなに早い時期から次の役員を決めていたのには、驚きを隠せません。
来年から始まる生徒会の事を考えると、なんとも頭の痛い問題です。
学園の図書館で宿題をしていたら、窓を覗いていたらしき女子生徒が、急に黄色い声をあげたのです。
驚いて窓に近付いてみると、テオドール様が女子生徒に手を振っておりました。
腕には、見知らぬ女子生徒を絡ませながら…
「何なのですかアレは、破廉恥ですわ」
相変わらずテオドール様は学園の人気者で、女子生徒を沢山侍らせて闊歩しているのです。
私は窓から離れて、宿題に取り組みましたが、どうも気が散ってしまいます。
花祭りで出会った男の子は、澄み渡った青空の様な瞳で、私を見つめながら優しく微笑んでおりました。
名前も歳も知らないけれど、私の大切な初恋の思い出なのです。
大人になっても、子供の頃の面影くらいは残ると思うのですが…
私は、どうしてもテオドール様が、あの時の男の子だとは思えないのです。
あんなに可愛らしい男の子が、女子生徒を侍らせる大人になってしまっただなんて、綺麗な思い出を穢された様な気分になってしまうのですもの。
いつまでも、夢見がちな乙女でいる事が許されないのは理解出来ますが、せめてもう少し人目を気にしてくれたら良かったのにと思わずにはいられないのです。
「駄目だわ。こんな事では、特待生から外されてしまう。しっかりするのよ、リーゼリア。テストが近いのだから、さっさと宿題を終わらせて、テスト勉強をしましょう」
「何をブツブツと、言っているんだい?」
聞き覚えのある様な無い様な声を聞いて、うんざりした思いで顔を上げた私は、一瞬呼吸が止まってしまったのです。
「ヒッ」
ガタンッと大きな音を立てて、淑女にあるまじき行為で立ち上がってしまい、顔から火が吹き出しそうになりました。
図書室にいた生徒たちの視線も、一斉に浴びた気がします。
深く頭を下げた時、またお声を掛けられました。
「驚かせてしまったかな。畏まらなくてもよい、君に話しておきたい事があったのだ。ここでは話しにくいから、一緒に生徒会室へ来てくれないだろうか」
い…今ですか?
お断りしたいのですが、そうさせてくださらない、獲物を捕らえた肉食獣の様な笑顔を向けられてしまいました。
「か…畏まりました…」
私は、男子生徒に付いて、恐る恐る生徒会室まで来てしまいました。
彼は生徒会長で、王弟殿下のご子息。
つまり、王族なのです。
本来ならば、私みたいな一生徒がお話を出来る様なお相手ではありませんので、お声を掛けられた理由はひとつしか思い浮かびません。
生徒会室に入ると、王太子殿下が出迎えて下さいました。
「やぁ。リーゼリア・ノワール伯爵令嬢。ご機嫌は、如何かなぁ?」
最悪です!などとは、口が裂けても言えません。
「お初にお目に……」
「あ~堅苦しい挨拶は、要らないよぉ。いや~大変だったねぇ。私の元婚約者候補が、と~んでもない事をしでかしたみたいで、災難だったねぇ。詫びと言ってはなんだが、生徒会に入ってもらう事になったよぉ。と、言う訳でぇ、来年度から一緒に、頑張ろうではないかぁ」
ペンタール公爵令嬢の事を仰っているのは分かりますが、お詫びで生徒会に入るのは、何かが違う気がします。
出来る事なら関わり合いたくはなかったのですが、王太子殿下からお声を掛けられてしまっては、拒否権などないのです。
生徒会は、二学年から入る事が出来ますが、誰でも入れる訳ではありません。
来年度の生徒会長が、王太子殿下だという事は知っておりました。
次の生徒会長が、新しい役員を選ぶ権利があるというのも知っておりましたが、選ぶ基準が何かまでは知らなかったのです。
まさか私が選ばれるとは思ってもいなかったので、勉強と生徒会の両立が出来るかとても不安になりました。
私の心中を、察して下さったのか、次期生徒会長である王太子殿下が、励ましてくださいます。
「心配は、いらないさぁ。特待生でもあるリーゼリア嬢なら、大丈夫だよぉ。君の婚約者候補の彼には、た~くさん、文句を言われそうだけれどねぇ~」
王太子殿下は、とても楽しそうに笑っておりました。
そうでしたわ、テオドール様になんの相談もなく生徒会に入ったなら、絶対に文句を言われます。
ここは穏便にお断りした方が良さそうですわね。
きっと私よりも適任者がおりますもの。
「王太子殿下。誠に申し訳ございませんが……」
「これは、決定事項だからねっ、リーゼリア嬢。君に、拒否権は無いのだよぉ。だからぁ、潔く諦めるのが、賢明な判断なのさっ。分かるよねぇ?」
今ならお断り出来ると思ったのですが、王太子殿下に見透かされてしまっておりました。
「はい。宜しくお願いいたします」
テオドール様へ、生徒会の事を報告しなければならないと考えただけで、頭痛がしてきました…
生徒会役員なら適任者が沢山いる筈ですが、どうして私は、次から次へと問題を抱えてしまうのでしょうか。
本来ならば、王太子殿下にお近付きになれる好機ですし、光栄な事でもあるのです。
能力を認められ、殿下に気に入っていただけたのなら、王城勤めも出来るかもしれません。
ですが高位貴族のご令息やご令嬢が沢山務めている魔窟ともいえる王城での勤務は、貧乏で没落寸前の伯爵令嬢である私には、かなり荷が重く感じるのは仕方のない事だと思います。
それにまだ正式な婚約者が決まっていない王太子殿下のお傍に仕えるというのは、婚約者候補のご令嬢たちを差し置いてと思われるのではないかと、不安にもなりました。
何故ならば、現時点で役員に選ばれた方は、皆様男子生徒だったのです。
来年度から入る予定の生徒会役員は、残り一席だと言われたのですから、不安にならない方がおかしいのです。
会計は、殿下の側近であるキプロス・モンテカルロ侯爵令息で、総裁のご子息が務めております。
副会長には、現在隣国へ留学されている公爵令息が選ばれたそうで、王太子殿下の幼馴染でもあり親友でもあるお方だと仰っておりました。
皆様私よりもひとつ学年が上で、副会長の公爵令息以外は、持ち上がりになります。
二名必要な書記の一人が私で、もう一人はまだ検討中になっているのだそうです。
願わくば女子生徒が良いと、喉元まで出てきたのですが、グッと堪えて飲み込みました。
それにしても、こんなに早い時期から次の役員を決めていたのには、驚きを隠せません。
来年から始まる生徒会の事を考えると、なんとも頭の痛い問題です。
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