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お父様の説教
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学園が終わり、屋敷に戻って来ました。
今日あった事を話したのですが、当然の事の様に、テオドール様がお怒りになっております。
「俺に何の断りもなく、勝手に生徒会に入るなんて、一体お前は何を考えている。今の生徒会役員が卒業したら、男しか残らないではないか!生徒会室などという密室で、何をされるか分からないのだぞ。事の重大さを、分かっているのか、リーゼリア!」
お顔を真っ赤にされて、こんなに怒っているテオドール様を見るのは、何度目でしょうか。
何を言われたとしても、お断り出来る様な状況ではなかったのです。
「テオドール様。王太子殿下が次の生徒会長になるのですから、心配されている様な事にはなりませんわ。それに…」
「何故、呑気に構えていられるんだ。王太子殿下だって、男なんだぞ。目の前に可愛い女の子がいたら、手を出したくなるだろう。それとも何か?王族は、特別なスキルでも持ち合わせていて、女子生徒が皆カボチャにでも見えると言うのか」
「テオドール様、落ち着いてください。我が屋敷には、不届き者などはおりませんが、何処で誰に聞かれるか分かりません。王族への侮辱罪になりますから、口は慎むべきかと…」
「分かっている。それでもだ、俺は、生徒会に入る事を認める訳にはいかない。今直ぐに断って来い」
無理ですって…どうしてテオドール様は、私が男子生徒と係わりを持つ事に、これ程の嫌悪感を抱くのでしょうか。
青春を謳歌されるのであれば、私の存在など無視して下さればよいものを…
私が無言になってしまった事で、変な誤解をされてしまったテオドール様は、益々面倒くさい事になっていきました。
二人だけでの話し合いは決裂してしまったので、見兼ねたミヤがお父様を呼んで来て下さったのです。
「テオドール君。君は、何をそんなに興奮しているのだ?リーゼリアが生徒会役員に選ばれたのは、とても名誉な事なのだぞ。それを、何故断れなどと言うのかね?君に、何の権限があって、リーゼリアを拘束しているのか簡潔に理由を述べなさい」
サロンにお父様が姿を現した途端、テオドール様は正気を取り戻したのか、声を荒げる事はなくなりました。
今は、大人しくソファに腰かけて、お父様のお言葉に耳を傾けております。
「取り乱してしまい、申し訳ありません」
「それは、答えにはなっていないだろう。君は、学園で自由に青春を謳歌したいからといって、リーゼリアとの婚約を正式に結ばなかった。なのに、何故リーゼリアの行動を制限するのだ」
「申し訳ありません。リーゼリアが、他の男と親しくされるのが、我慢出来なかったのです」
「君は、好き勝手に女子生徒と遊んでいる。それなのに、リーゼリアには要らぬ疑いをかけて行動を制限し、詰め寄るのはおかしいと思わないのかね」
「………申し訳ありません」
「謝罪が欲しい訳ではないのだよ、テオドール君。リーゼリアと正式な婚約をしていなくとも、君が伯爵家へ婿養子に来る事は周知の事実なのだ。それなのに、学園での軽率な行動の所為で、伯爵家はいい笑い者になっている。今、直ぐに行動を改めろとは言わないが、もう少し伯爵家やリーゼリアの気持ちを考えてくれても良いのではないか」
「迷惑をかけるつもりはなかったので、正式な婚約はしなかったのです。それが、俺なりの誠意だと受け取ってはいただけないのでしょうか。俺は、リーゼリアを大切に思っています。俺なりに、愛情表現もしています。それだけでは、足りないと仰るのですか」
「そうか…フェナジン子爵のお蔭で、我が伯爵家も、領民も生存出来ている。その事に深く感謝をしているからこそ、君の学生時代の行動については、若気の至りとして目を瞑ろうと思ってはいる。だが、リーゼリアが生徒会へ入るのを拒絶されるのは、筋違いだ」
「ですが、伯爵。生徒会には、男子生徒しかいないのです。密室で何をされているのかも分からないなんて、俺は居ても立ってもいられないくらいに、心配なんです」
「そんなに心配しているのであれば、きちんと婚約を結んでだな、すぐにふしだらな遊びも止めたまえ」
「それは…」
「出来ないのであれば、リーゼリアが生徒会へ入る事に、文句を言うのは止めなさい。何度も言うが、これは、とても名誉な事なのだぞ」
「伯爵は、俺とリーゼリアを、結婚させたくはないのですか」
「それを決めるのは、私ではない。この縁を望んだのは、フェナジン子爵であり、融資を受ける条件として出された婚姻なのだ。子爵が縁を望まないと仰るなら、逆らう事など出来ないのだよ。しかしだな…君との婚姻が、伯爵家にとって害にしかならないと判断した場合は、異議申し立ては出来る」
「………どうしても…生徒会への入会は、断らないと仰るのですね」
「余程の理由がない限りは、断る道理はないと言っている。君のいう、男子生徒しかいない。密室で何をされるか分からない等という戯言では、断る理由になるどころか不敬罪で逆に訴えられる可能性が出てきてしまう。それだけではなく、王太子殿下からのお誘いを断っては、没落へ拍車をかける様なものだ。断りたいのならば、それ相応の理由を持ってきなさい」
「すみませんでした…リーゼリアの生徒会入会を、応援します…不本意ですが」
「そうか、ありがとう。テオドール君が納得出来ないのは、仕方がないだろう。君は、つい最近まで平民として育ってきたのだからな。すぐに貴族らしく生きようとするのは、大変だろう。私たちの考え方に、同意出来ない部分が多々あるのも、理解している。しかしだな、リーゼリアの婿となるのならば、馴染んでもらわなければならない事なのだ。いつまでも、平民として生きていられる訳ではない事くらいは、分かってくれるね?」
「はい」
お父様の説得で、言いたい事は沢山あった様ですが、一応は納得して下さったみたいです。
私は幼い頃より貴族令嬢として生きてきましたので、環境の変化というものは分かりませんが、テオドール様は平民から貴族になろうとしているのです。
相当の気苦労があるのかもしれないと、この時少しだけ理解する事が出来ました。
私は、今まで彼に寄り添おうとしなかった事に、羞恥を覚えたのです。
テオドール様が、最後の思い出として学園生活を楽しみたいと仰るのならば、それは目を瞑って差し上げるべきなのだと思ったのでした。
非常に、不本意ですけれど…
今日あった事を話したのですが、当然の事の様に、テオドール様がお怒りになっております。
「俺に何の断りもなく、勝手に生徒会に入るなんて、一体お前は何を考えている。今の生徒会役員が卒業したら、男しか残らないではないか!生徒会室などという密室で、何をされるか分からないのだぞ。事の重大さを、分かっているのか、リーゼリア!」
お顔を真っ赤にされて、こんなに怒っているテオドール様を見るのは、何度目でしょうか。
何を言われたとしても、お断り出来る様な状況ではなかったのです。
「テオドール様。王太子殿下が次の生徒会長になるのですから、心配されている様な事にはなりませんわ。それに…」
「何故、呑気に構えていられるんだ。王太子殿下だって、男なんだぞ。目の前に可愛い女の子がいたら、手を出したくなるだろう。それとも何か?王族は、特別なスキルでも持ち合わせていて、女子生徒が皆カボチャにでも見えると言うのか」
「テオドール様、落ち着いてください。我が屋敷には、不届き者などはおりませんが、何処で誰に聞かれるか分かりません。王族への侮辱罪になりますから、口は慎むべきかと…」
「分かっている。それでもだ、俺は、生徒会に入る事を認める訳にはいかない。今直ぐに断って来い」
無理ですって…どうしてテオドール様は、私が男子生徒と係わりを持つ事に、これ程の嫌悪感を抱くのでしょうか。
青春を謳歌されるのであれば、私の存在など無視して下さればよいものを…
私が無言になってしまった事で、変な誤解をされてしまったテオドール様は、益々面倒くさい事になっていきました。
二人だけでの話し合いは決裂してしまったので、見兼ねたミヤがお父様を呼んで来て下さったのです。
「テオドール君。君は、何をそんなに興奮しているのだ?リーゼリアが生徒会役員に選ばれたのは、とても名誉な事なのだぞ。それを、何故断れなどと言うのかね?君に、何の権限があって、リーゼリアを拘束しているのか簡潔に理由を述べなさい」
サロンにお父様が姿を現した途端、テオドール様は正気を取り戻したのか、声を荒げる事はなくなりました。
今は、大人しくソファに腰かけて、お父様のお言葉に耳を傾けております。
「取り乱してしまい、申し訳ありません」
「それは、答えにはなっていないだろう。君は、学園で自由に青春を謳歌したいからといって、リーゼリアとの婚約を正式に結ばなかった。なのに、何故リーゼリアの行動を制限するのだ」
「申し訳ありません。リーゼリアが、他の男と親しくされるのが、我慢出来なかったのです」
「君は、好き勝手に女子生徒と遊んでいる。それなのに、リーゼリアには要らぬ疑いをかけて行動を制限し、詰め寄るのはおかしいと思わないのかね」
「………申し訳ありません」
「謝罪が欲しい訳ではないのだよ、テオドール君。リーゼリアと正式な婚約をしていなくとも、君が伯爵家へ婿養子に来る事は周知の事実なのだ。それなのに、学園での軽率な行動の所為で、伯爵家はいい笑い者になっている。今、直ぐに行動を改めろとは言わないが、もう少し伯爵家やリーゼリアの気持ちを考えてくれても良いのではないか」
「迷惑をかけるつもりはなかったので、正式な婚約はしなかったのです。それが、俺なりの誠意だと受け取ってはいただけないのでしょうか。俺は、リーゼリアを大切に思っています。俺なりに、愛情表現もしています。それだけでは、足りないと仰るのですか」
「そうか…フェナジン子爵のお蔭で、我が伯爵家も、領民も生存出来ている。その事に深く感謝をしているからこそ、君の学生時代の行動については、若気の至りとして目を瞑ろうと思ってはいる。だが、リーゼリアが生徒会へ入るのを拒絶されるのは、筋違いだ」
「ですが、伯爵。生徒会には、男子生徒しかいないのです。密室で何をされているのかも分からないなんて、俺は居ても立ってもいられないくらいに、心配なんです」
「そんなに心配しているのであれば、きちんと婚約を結んでだな、すぐにふしだらな遊びも止めたまえ」
「それは…」
「出来ないのであれば、リーゼリアが生徒会へ入る事に、文句を言うのは止めなさい。何度も言うが、これは、とても名誉な事なのだぞ」
「伯爵は、俺とリーゼリアを、結婚させたくはないのですか」
「それを決めるのは、私ではない。この縁を望んだのは、フェナジン子爵であり、融資を受ける条件として出された婚姻なのだ。子爵が縁を望まないと仰るなら、逆らう事など出来ないのだよ。しかしだな…君との婚姻が、伯爵家にとって害にしかならないと判断した場合は、異議申し立ては出来る」
「………どうしても…生徒会への入会は、断らないと仰るのですね」
「余程の理由がない限りは、断る道理はないと言っている。君のいう、男子生徒しかいない。密室で何をされるか分からない等という戯言では、断る理由になるどころか不敬罪で逆に訴えられる可能性が出てきてしまう。それだけではなく、王太子殿下からのお誘いを断っては、没落へ拍車をかける様なものだ。断りたいのならば、それ相応の理由を持ってきなさい」
「すみませんでした…リーゼリアの生徒会入会を、応援します…不本意ですが」
「そうか、ありがとう。テオドール君が納得出来ないのは、仕方がないだろう。君は、つい最近まで平民として育ってきたのだからな。すぐに貴族らしく生きようとするのは、大変だろう。私たちの考え方に、同意出来ない部分が多々あるのも、理解している。しかしだな、リーゼリアの婿となるのならば、馴染んでもらわなければならない事なのだ。いつまでも、平民として生きていられる訳ではない事くらいは、分かってくれるね?」
「はい」
お父様の説得で、言いたい事は沢山あった様ですが、一応は納得して下さったみたいです。
私は幼い頃より貴族令嬢として生きてきましたので、環境の変化というものは分かりませんが、テオドール様は平民から貴族になろうとしているのです。
相当の気苦労があるのかもしれないと、この時少しだけ理解する事が出来ました。
私は、今まで彼に寄り添おうとしなかった事に、羞恥を覚えたのです。
テオドール様が、最後の思い出として学園生活を楽しみたいと仰るのならば、それは目を瞑って差し上げるべきなのだと思ったのでした。
非常に、不本意ですけれど…
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