好きになったり、嫌いになったり

鈴蘭

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邪魔な娘(メサラジーナ・ペンタール視点)

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 せっかく立てた計画が、失敗に終わってしまいましたのよ。
 リーゼリアがサロンから出て行った時に、テオドール様がいらしたと知らせがあったので、追いかけるのは止めにしたのですわ。
 わたくしは嬉しくて、お茶を淹れ直して待っておりましたのに、テオドール様は邸に上がりもせず引き返してしまいましたのよ。
 リーゼリアとすれ違い、追いかけて行ってしまったのでしょう。
 とても悲しくて、惨めで、可哀想なわたくし…

 テオドール様に、リーゼリアの破廉恥な姿をお見せする事は出来なかったけれど、誤解をさせる事は充分に出来ると思いましてよ。
 わたくしは、使用人たちに、男妾を招いた茶会にリーゼリアも参加していた事を広めるよう命じましたの。
 
 翌日、学園に行くと、想像以上にリーゼリアの噂で持ちきりでしたわ。
 「愉快ですわ、痛快ですわ、爽快ですわ~」
 わたくしが姿を見せると、いつもは遠巻きにしている者たちが、何か聞きたそうな表情で視線を送ってきますのよ。
 期待には、応えて差し上げなくてはいけませんわね。
 「ごきげんよう、皆様。昨日は、ノワール伯爵令嬢と、茶会をいたしましたのよ。とても楽しそうに、積極的に過ごしておりましたわ。お茶を飲むのも忘れてしまうほど、夢中になって男妾たちと…うふふっ」

 生徒たちの驚いた表情は、何度思い出しても心が昂りましたわ。
 これでリーゼリアは、テオドール様から愛想を尽かされて、婚約のお話も白紙に戻ると思っていましたのよ。
 ですが、人生とは、ままならないものですわね。

 故意に流した噂を、否定する様にテオドール様からご指摘されたのは心外でしたけれど、あのリーゼリアのわたくしに向ける侮蔑の眼差し!
 温度の無い瞳で見つめられるのは、とても刺激的でしたのよ。
 「思い出すだけで、心が躍り出してしまいますわ~」

 それはそうと、ノワール伯爵家如きから抗議の手紙が来たと、お父様からお叱りを受けてしまいましたのよ。
 伯爵家の世継ぎとして育てられているリーゼリアが、テオドール様を婿にする事が許せなかっただけでしたのに…
 公爵家からは、リーゼリアへの詫びと、連れて来ていた侍女にも怪我を負わせた慰謝料を支払う事になったそうですわ。

 王家からもお呼び出しがあったそうで、お父様は重い足取りで出向かれたと、お母様からもお説教をされてしまいましたの。
 「この様な娘に育てた覚えはない」と、仰っておりましたが…わたくしは、幼い頃から何も変わっておりませんのよ。
 小首を傾げて考えてみても、お母様の心中を、お察しする事は出来ませんでしたわ。

 抗議文だけで、証拠となる物は何もありませんでしたから、大事にはなりませんでしたけれど…
 暫くは、自由行動を制限されてしまいましたのよ。
 貴族令嬢の純潔を奪おうとするのは、少々やり過ぎだったのかもしれませんわね。
 少しは、反省いたしましてよ。
 
 没落寸前の伯爵家など恐れるに足りませんが、フェナジン商会を敵に回すのは、流石に厄介ですものね。
 テオドール様にだけは、嫌われたくはありませんのよ。

 仕方がありませんので、リーゼリアへきちんと謝罪をする為に、茶会へお誘いしたというのに断りの返事をされてしまいましたのよ。
 なんと可哀想で、憐れなわたくしなのでしょう。
 「惨めですわ、不憫ですわ!哀れ過ぎて、益々愉快になりましてよ~」
 
 それはそうと、リーゼリアはこのわたくしを差し置いて、生徒会にまで入会したなんて…
 身の程も弁えずに、とんだ羽虫ですこと。
 あの娘は、テオドール様だけではなく、王太子殿下のお心まで奪うつもりなのかしら?
 もしかすると、国母の座を狙っているのかもしれませんわね。

 わたくしは、王太子妃になりたかったわけでも、国母になりたかったわけでもないのだけれど…
 王太子殿下の妃になったリーゼリアに頭を垂れるのは、屈辱ですのよ。
 「この感情は、好きになれませんわね、とても不愉快ですこと」

 ですが、リーゼリアが王太子殿下と婚約なさるのでしたら、テオドール様は、何の憂いもなくわたくしの物になりますのよ。
 それは、とても喜ばしい事ですわね。
 「………嫌な気分と、喜ばしい気分。どちらも併せ持つのは、とても苛々いたしますわ~」
 わたくしを煩わせるなんて、何処までも忌々しい娘で、愉快な娘ですこと。
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