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生活の心配(イブ視点)
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あたしは、茫然としながら家までの帰り道を歩いていた。
テオ君に渡された明細書の金額を見て、軽い気持ちで持ち出していた商品が、凄い高額だった事を理解したの。
よく考えてみたら、分かる事だったのに…
貧民街で暮らしていた時は、父さんも母さんも、あくせく働いていた。
それなのに、一般的な平民が暮らす街に越して来てからは、全然働いていないのに普通に暮らせていたの。
テオ君の店から持ち出した商品を、質屋の親父に買い取って貰っていたのもあたしだった。
毎回大金を渡されていたのに、何の疑問も持たなかった。
買い取り金額が、売値を上回る事なんてあり得ないのに…
「テオ君のお店を、追い出されちゃった。もう二度と来るなって言われちゃったよ、どうしよう」
店に出入り出来なくなっちゃったら、来月からの生活費は、どうしたらいいの?
家賃を払えなかったら、住む場所もなくなっちゃうよ。
それに、最近メサラジーナ様の真似をして、ドレスや宝石なんかも店から持ち出していたの。
一回身に着けた物は、二度と手を通さないって言っていたから、あたしも真似をして要らなくなった物は全部母さんに渡していたわ。
最近一般的な平民が済む街から、ちょっと贅沢な平民が住む街に引っ越して来たばかりなのに…
「来月の生活費は、まだ残っているのかな?家賃は?これからの生活費は、どうやって稼いだらいいの?」
あたしの頭の中は、お金の心配でいっぱいになっていた。
「そうだわ、メサラジーナ様に、相談してみよう。あたしたち親友だもの、きっと助けてくれる筈よ」
あたしは、急いで公爵邸にやって来て、門番に挨拶をしたわ。
相変わらずぶっきら棒だけれど、ちゃんと中に入れてくれるんだよね。
無表情の執事が、客間まで案内してくれるの。
すれ違う使用人たちが、冷たい視線を向けてくるのはいつもの事だから、全然気にならない。
だけど、気の遠くなる様な長い廊下を歩きながら、将来の事をいろいろと考えていたらだんだん不安になって悲しくなってきちゃった。
やっと部屋に辿り着いても、直ぐにはメサラジーナ様に、会わせて貰えないの。
執事が呼びに行ってから、暫く待たされるのも、いつもの事。
扉の近くで突っ立っているのは、公爵邸の使用人。
あたしの事を見張っているみたいで、嫌な気分になるけれど、そこは我慢している。
給仕がお茶とお菓子を用意してくれて、それをお腹いっぱいに食べ終わる頃になってから、漸くメサラジーナ様が来てくれた。
今日は早かったから、用事が少なかったのかも。
メサラジーナ様の顔を見たら、急に涙が溢れだした。
「メサラジーナ様~!!!大変な事になっちゃった。あたし、どうしたらいいのか、分からなくなって…」
「イブさん。泣いていては、何があったのか、分かりませんわ。お茶を飲んで、少し落ち着きなさい」
公爵邸で飲むお茶は、家で飲んでいるのよりずっと美味しかった。
使っている茶葉は、テオ君のお店で取り扱っている物だって言っているから、家でも同じ物を貰って飲んだけど全然味が違う。
きっと、素敵な食器に淹れられて、豪華なお部屋で飲むから美味しいんだと思った。
あたしも、学園を卒業したらテオ君と結婚して、メサラジーナ様みたいな優雅な生活をする筈だったのに…
「あんなに怒るなんて、考えてもいなかった…」
あたしは、テオ君のお店での出来事を、メサラジーナ様に話したの。
「それは、怒られて当たり前でしてよ、イブ。どうして、商店を欲しがったのか、わたくしには理解出来なくってよ」
怒られて当たり前って、そっちの方が、あたしには理解出来ないよ。
「だって…テオ君と結婚したら、あたしの店になるんだよ。だったら、今のうちに名義を変えたって、なんの問題も無いでしょう?」
メサラジーナ様は、珍しく無表情になっていたわ。
あたし、何かおかしな事を、言ったかな?
「イブ」
「なに?」
「テオドール様が、幼い頃にお父様から預かった商店を、とても大切にされていたのはご存じなかったのかしら?貴方たちは、幼馴染なのでしょう?」
「………フェナジン商会は、いろんな場所に、沢山お店を出しているじゃない。その中のひとつを、あたしが貰ったっていいでしょう。テオ君は、フェナジン商会の跡継ぎなんだし、あの店に拘る理由なんてない筈だもん」
「………そう…そうね。フェナジン商会の跡を継ぐのでしたら、商店のひとつくらい、妻の名義に変えても問題はありませんわね」
「そうよ、何も問題はないのよ!きっと、今日は機嫌が悪かっただけだわ。明日になれば、機嫌も直って、お店に行っても怒られないよね」
メサラジーナ様は、曖昧な笑顔でお茶を飲んでいて、あたしの意見に同意はしてくれなかった。
その理由は、翌日テオ君のお店に行った時に、痛い程理解出来たの。
「どうしてお店の中に入れてくれないのよ。あたしは、テオ君の婚約者で、学園を卒業したら奥さんになるの!自分の店なんだから、自由に入ってもいいじゃない!」
「昨日、出入り禁止にされた事を、もう忘れてしまったのですか?これ以上、店の前で騒ぎを起こされては、非常に迷惑です。お引き取りいただけないのでしたら、テオドール様から憲兵隊を呼んで引き取って貰う様にと言われていますが、どういたしますか。憲兵隊のお世話になりますか」
「そんな…」
今日は、学園でテオ君に会えなかったからお店に来てみたけれど、従業員の態度が酷すぎるよ。
やっぱり出入り禁止っていうのは本気だったのかな?
その後も、学園でテオ君に会った時に話しかけたけれど、勝手に持ち出した商品の代金を払う気になったかって聞かれるだけだった。
あたし…本当にテオ君を、怒らせちゃったんだ…
もう、大富豪にはなれないの?
テオ君と、結婚出来ないの?
家に帰ると、父さんは相変わらず酔っぱらって寝ているだけ。
近所の主婦と喧嘩でもしたのか、母さんはちょっと機嫌が悪かった。
「ちょうど良かったわ、イブ。今月の家賃を払うようにって、大家さんから催促されたんだよ。あんた、最近全然換金してきてくれないでしょう。財布にもお金が無いから、ひとっ走り店に行って…」
「無理」
「何が無理なのよ。お金がなかったら生活出来ないんだから、遊んでばかりいないで…」
「だから、もう無理だって言ったでしょう!テオ君のお店には、二度と行けなくなったの!」
「何を言っているの?喧嘩でもしたのかい?」
呑気な母さんに、イライラが止まらない。
どうして、あたしばっかり嫌な思いをしなくちゃいけないの?
「母さんも、父さんも、どうして働こうとしないの!テオ君から、今まで店から持ち出した商品の代金を払えなければ、奴隷商に売り飛ばすって言われちゃったんだよっ!何度か店まで行ったけれど、門前払いされて、憲兵隊まで呼ぶって追い返されたの!だから、もうお金は何処からも入ってこないんだからねっ」
「あんた、何をやってぼっちゃんを、怒らせたの?今直ぐ謝って、許して貰って…」
「無理だったって、何度も同じ事を言わせないでよ!」
「こっちだって、お金がなかったら生活出来ないの、分かっているでしょう。そんな癇癪を起こしてたって、何処からも生活費は出てこないんだから、さっさとぼっちゃんの店に行って来なさい!」
「五月蠅い!母さんなんて、大嫌い!」
あたしは、我慢出来ずに家を飛び出していた。
母さんは、何も分かってくれない。
父さんだって、母さんよりも、もっと酷い怠け者だ。
そういえば、質屋の親父が言ってたな?
こんな生活、何時までも続かないって…
あたしたち、これからどうやって生活していくんだろう。
気付いたら、ペンタール公爵邸の前に来ていた。
テオ君に渡された明細書の金額を見て、軽い気持ちで持ち出していた商品が、凄い高額だった事を理解したの。
よく考えてみたら、分かる事だったのに…
貧民街で暮らしていた時は、父さんも母さんも、あくせく働いていた。
それなのに、一般的な平民が暮らす街に越して来てからは、全然働いていないのに普通に暮らせていたの。
テオ君の店から持ち出した商品を、質屋の親父に買い取って貰っていたのもあたしだった。
毎回大金を渡されていたのに、何の疑問も持たなかった。
買い取り金額が、売値を上回る事なんてあり得ないのに…
「テオ君のお店を、追い出されちゃった。もう二度と来るなって言われちゃったよ、どうしよう」
店に出入り出来なくなっちゃったら、来月からの生活費は、どうしたらいいの?
家賃を払えなかったら、住む場所もなくなっちゃうよ。
それに、最近メサラジーナ様の真似をして、ドレスや宝石なんかも店から持ち出していたの。
一回身に着けた物は、二度と手を通さないって言っていたから、あたしも真似をして要らなくなった物は全部母さんに渡していたわ。
最近一般的な平民が済む街から、ちょっと贅沢な平民が住む街に引っ越して来たばかりなのに…
「来月の生活費は、まだ残っているのかな?家賃は?これからの生活費は、どうやって稼いだらいいの?」
あたしの頭の中は、お金の心配でいっぱいになっていた。
「そうだわ、メサラジーナ様に、相談してみよう。あたしたち親友だもの、きっと助けてくれる筈よ」
あたしは、急いで公爵邸にやって来て、門番に挨拶をしたわ。
相変わらずぶっきら棒だけれど、ちゃんと中に入れてくれるんだよね。
無表情の執事が、客間まで案内してくれるの。
すれ違う使用人たちが、冷たい視線を向けてくるのはいつもの事だから、全然気にならない。
だけど、気の遠くなる様な長い廊下を歩きながら、将来の事をいろいろと考えていたらだんだん不安になって悲しくなってきちゃった。
やっと部屋に辿り着いても、直ぐにはメサラジーナ様に、会わせて貰えないの。
執事が呼びに行ってから、暫く待たされるのも、いつもの事。
扉の近くで突っ立っているのは、公爵邸の使用人。
あたしの事を見張っているみたいで、嫌な気分になるけれど、そこは我慢している。
給仕がお茶とお菓子を用意してくれて、それをお腹いっぱいに食べ終わる頃になってから、漸くメサラジーナ様が来てくれた。
今日は早かったから、用事が少なかったのかも。
メサラジーナ様の顔を見たら、急に涙が溢れだした。
「メサラジーナ様~!!!大変な事になっちゃった。あたし、どうしたらいいのか、分からなくなって…」
「イブさん。泣いていては、何があったのか、分かりませんわ。お茶を飲んで、少し落ち着きなさい」
公爵邸で飲むお茶は、家で飲んでいるのよりずっと美味しかった。
使っている茶葉は、テオ君のお店で取り扱っている物だって言っているから、家でも同じ物を貰って飲んだけど全然味が違う。
きっと、素敵な食器に淹れられて、豪華なお部屋で飲むから美味しいんだと思った。
あたしも、学園を卒業したらテオ君と結婚して、メサラジーナ様みたいな優雅な生活をする筈だったのに…
「あんなに怒るなんて、考えてもいなかった…」
あたしは、テオ君のお店での出来事を、メサラジーナ様に話したの。
「それは、怒られて当たり前でしてよ、イブ。どうして、商店を欲しがったのか、わたくしには理解出来なくってよ」
怒られて当たり前って、そっちの方が、あたしには理解出来ないよ。
「だって…テオ君と結婚したら、あたしの店になるんだよ。だったら、今のうちに名義を変えたって、なんの問題も無いでしょう?」
メサラジーナ様は、珍しく無表情になっていたわ。
あたし、何かおかしな事を、言ったかな?
「イブ」
「なに?」
「テオドール様が、幼い頃にお父様から預かった商店を、とても大切にされていたのはご存じなかったのかしら?貴方たちは、幼馴染なのでしょう?」
「………フェナジン商会は、いろんな場所に、沢山お店を出しているじゃない。その中のひとつを、あたしが貰ったっていいでしょう。テオ君は、フェナジン商会の跡継ぎなんだし、あの店に拘る理由なんてない筈だもん」
「………そう…そうね。フェナジン商会の跡を継ぐのでしたら、商店のひとつくらい、妻の名義に変えても問題はありませんわね」
「そうよ、何も問題はないのよ!きっと、今日は機嫌が悪かっただけだわ。明日になれば、機嫌も直って、お店に行っても怒られないよね」
メサラジーナ様は、曖昧な笑顔でお茶を飲んでいて、あたしの意見に同意はしてくれなかった。
その理由は、翌日テオ君のお店に行った時に、痛い程理解出来たの。
「どうしてお店の中に入れてくれないのよ。あたしは、テオ君の婚約者で、学園を卒業したら奥さんになるの!自分の店なんだから、自由に入ってもいいじゃない!」
「昨日、出入り禁止にされた事を、もう忘れてしまったのですか?これ以上、店の前で騒ぎを起こされては、非常に迷惑です。お引き取りいただけないのでしたら、テオドール様から憲兵隊を呼んで引き取って貰う様にと言われていますが、どういたしますか。憲兵隊のお世話になりますか」
「そんな…」
今日は、学園でテオ君に会えなかったからお店に来てみたけれど、従業員の態度が酷すぎるよ。
やっぱり出入り禁止っていうのは本気だったのかな?
その後も、学園でテオ君に会った時に話しかけたけれど、勝手に持ち出した商品の代金を払う気になったかって聞かれるだけだった。
あたし…本当にテオ君を、怒らせちゃったんだ…
もう、大富豪にはなれないの?
テオ君と、結婚出来ないの?
家に帰ると、父さんは相変わらず酔っぱらって寝ているだけ。
近所の主婦と喧嘩でもしたのか、母さんはちょっと機嫌が悪かった。
「ちょうど良かったわ、イブ。今月の家賃を払うようにって、大家さんから催促されたんだよ。あんた、最近全然換金してきてくれないでしょう。財布にもお金が無いから、ひとっ走り店に行って…」
「無理」
「何が無理なのよ。お金がなかったら生活出来ないんだから、遊んでばかりいないで…」
「だから、もう無理だって言ったでしょう!テオ君のお店には、二度と行けなくなったの!」
「何を言っているの?喧嘩でもしたのかい?」
呑気な母さんに、イライラが止まらない。
どうして、あたしばっかり嫌な思いをしなくちゃいけないの?
「母さんも、父さんも、どうして働こうとしないの!テオ君から、今まで店から持ち出した商品の代金を払えなければ、奴隷商に売り飛ばすって言われちゃったんだよっ!何度か店まで行ったけれど、門前払いされて、憲兵隊まで呼ぶって追い返されたの!だから、もうお金は何処からも入ってこないんだからねっ」
「あんた、何をやってぼっちゃんを、怒らせたの?今直ぐ謝って、許して貰って…」
「無理だったって、何度も同じ事を言わせないでよ!」
「こっちだって、お金がなかったら生活出来ないの、分かっているでしょう。そんな癇癪を起こしてたって、何処からも生活費は出てこないんだから、さっさとぼっちゃんの店に行って来なさい!」
「五月蠅い!母さんなんて、大嫌い!」
あたしは、我慢出来ずに家を飛び出していた。
母さんは、何も分かってくれない。
父さんだって、母さんよりも、もっと酷い怠け者だ。
そういえば、質屋の親父が言ってたな?
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