好きになったり、嫌いになったり

鈴蘭

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初めての生徒会

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 テオドロール様の遊び癖が治る事もなく、あっと言う間に一年が過ぎていったのです。
 私たちは留年する事も、退学になる事もなく、無事二学年に上がる事が出来ました。

 今日は、生徒会役員に任命されてから、全員揃った初めての顔合わせの日です。
 生徒会室の前まで来たのはよいのですが、高位貴族のご子息様だけではなく、王太子殿下がいらっしゃるお部屋には緊張して入り難く思うのでした。
 扉の前で右往左往しながら、やはりラノアと待ち合わせてから来るべきだったと、後悔していたところです。

 「ごきげんよう、ノワール嬢。扉の前で、何をやっているのですか?中に入れない理由でもあるのでしょうか?」
 聞きなれない声に振り返ると、書類の山を抱えたモンテカルロ侯爵令息が立っておられたのです。
 
 「ごきげんよう、モンテカルロ侯爵令息。入れない理由はないのですが、緊張してしまい、扉を開ける事を躊躇っていたのです」
 「そうですか、今日は初日ですからね。緊張は、誰でもすると思いますよ。申し訳ないのですが、見ての通り私は両手が塞がっておりますので、代わりに扉を開けてはいただけないでしょうか」
 「気が利かずに、申し訳ありませんでした」
 「大丈夫ですよ」
 私は焦って謝罪をしたのですが、モンテカルロ侯爵令息は、とても穏やかな笑顔を向けてくださいました。

 私が扉を叩くと、中から男性の声がします。
 「どうぞ」
 ゆっくりと扉を開けると、そこには王太子殿下と、見知らぬ令息が窓際の席に座っておられました。
 分厚い本を手にして、なにやら難しそうなお話をしているご様子です。

 「ノワール嬢も、中へお入りください。扉は、シェフレラ嬢がいらっしゃるまで、開けていて構いませんよ。閉まっていたら、入り難いでしょうからね。ドアストッパーは、扉の横にありますので、そちらをお使いください」
 モンテカルロ侯爵令息は、とてもお優しい方の様で、笑顔もとても素敵な方だと思いました。
 足元を見ると、三角形に整えられた木片がありました。
 私はそれを使って、大きな扉が勝手に閉まってしまわない様に、下の隙間に挟んだのです。

 すると、書類を机に置いたモンテカルロ侯爵令息が、私を呼んで椅子を引いてくださいました。
 「ノワール嬢の席は、こちらになります。シェフレラ嬢とは向かい合わせになっておりますので、好きな様にお使いください。引き出しの中には、必要な筆記用具などを収めております。こちらも使いやすい様に、ご自身で入れ直して貰って構いません。足りない物がありましたら、奥の倉庫に備品が沢山ありますので、ご自由に持って来てくださいね。何か質問などはございますか?」

 机の上には何も物はなく、引き出しの中は、綺麗に整頓されておりました。
 モンテカルロ侯爵令息は、とても几帳面な方だという事が伺えます。
 「申し訳ありません。何を質問したらよいのかが、分からないのです」

 私が正直な気持ちを伝えると、クスクスと上品な仕草で笑っておられます。
 「私の質問がおかしかったですね。初めて来られた方に、聞く様な事ではありませんでした。シェフレラ嬢がいらっしゃいましたら、生徒会室の中を案内致しますね。取り敢えず、席に座って待っていてください。お茶をご用意いたします」
 「ありがとうございます。お茶でしたら、私が淹れますわ」
 「お気遣いありがとうございます。では一緒に、給湯室へ行きましょうか」
 「はい」

 生徒会室の隣には、生徒会役員専用の給湯室があり、簡単な料理なら作れそうな備品が揃っておりました。
 作り付けの棚の中には、沢山の茶葉が収められており、その時の気分によって飲み分けているそうです。

 「お好きな茶葉は、ありますか?」
 「まるで、商店の様ですわね。私が好んで飲んでいるのは、ローズヒップティなのですけれど、男性には不人気と聞いた事があります」
 「そうですね。実は、私もあの独特な酸味が少々苦手でして、好んで飲む事はありませんね」
 苦笑いをしながら、モンテカルロ侯爵令息は、ローズヒップの茶葉が入っている缶を棚から取り出しておりました。

 「すみません、違うお茶にいたしましょう。モンテカルロ侯爵令息は、何がお好きなのですか」
 「私は、ダージリンが好きです。ティーポットは沢山ありますので、遠慮しなくても大丈夫ですよ。因みにですが、殿下はミルクと砂糖をたっぷりと入れたミルクティを好んで飲んでおられます」
 「そうなのですね。ラノアの弟のハルジオンも、よくミルクティを飲んでおりますの。王太子殿下は、甘い物がお好きなのですか?」
 「はい。こよなく愛しておられます」
 「まあ」
 
 モンテカルロ侯爵令息のお蔭で、私の緊張はすっかりと、解けている事に気付いてはおりませんでした。
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