好きになったり、嫌いになったり

鈴蘭

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愉快な娘(メサラジーナ・ペンタール視点)

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 それから数日もしないうちに、イブが憲兵隊員に引き摺られて戻って来るなど、誰が想像出来たでしょう。
 
 「申し訳ありません、ペンタール公爵令嬢。この者たちが、公爵家の家紋の入った品を、質屋に持ち込んだのです。盗品である事を証明していただきたく、連れて参りました。ご確認を、お願いいたします」
 「だから盗んでいないって、何度も言っているじゃない!あたしとメサラジーナ様は、親友なの!貰ったんだって、信じてくれたっていいじゃない」
 「黙れ。悪党の分際で、公爵令嬢を侮辱するとは、けしからん!」

 あら、あら。
 思わず頬が上がってしまいましたわ。
 なんて素敵な光景なのかしら、胸が高鳴りましてよ。
 
 「メサラジーナ様。あたしと親友だって、この馬鹿な男に言ってよ」
 まぁ、なんて醜いのかしら。
 許可も無く勝手に持ち出した物だから、盗品に変わりないというのに、イブの頭の中がどうなっているのか不思議で仕方がありませんわね。

 「黙れと言っているだろう。お前たちは、貴族の持ち物を盗んだのだ。極刑は免れないのだから、この場で首を切り落としてやっても構わないんだぞ」
 憲兵隊員が、イブを黙らせようと威嚇しておりましてよ。
 修羅場ですわ、高揚しますわ、素敵ですわ~
 「嫌よ。ねぇ、メサラジーナ様。黙っていないで、この男に本当の事を話してよ。あたし、極刑なんて嫌だよ」
 
 本当の事を話したら、貴方は間違いなく極刑でしてよ、滑稽ですわイブ。
 もう少し、この喜劇を眺めていたいのですけれど…
 せっかく見つけたわたくしの大切なを、壊されてしまうのは勿体ないですもの、ちゃんと助けてさしあげましてよ。

 「憲兵隊の皆様、お勤めご苦労様ですわ。ですが、そちらのお嬢様と、ご両親を離してくださいな。イブは、わたくしの友人でしてよ」
 「ほら!だから、何度も言ったでしょう。あたしたちは親友なんだって」
 「黙れ、罪人!」
 憲兵隊員の一人が、イブの髪の毛を掴んで、後ろに引き寄せてしまいましたわ。
 女性の髪の毛を乱暴に扱うなど、なんと暴力的な行為、思わず眉間に皺を寄せたくなりましてよ。

 「ペンタール公爵令嬢。罪人を庇う必要など、何もございません。この場を血で穢す事も致しませんので、真実だけを述べてください」
 「鬱陶しいですこと」
 「ほら見ろ。お優しい公女様を巻き込んで、嘘を吐いたってすぐにバレるんだぞ」
 わたくしの言葉を誤解したのか、憲兵隊員は勝ち誇った様に、イブを見ておりますわ。
 とても腹立たしい光景でしてよ。

 「お黙りなさい!」
 「え?」
 「鬱陶しいのは、お前たちの方でしてよ。その品は、わたくしが、イブに差し上げた物。与えた物を、イブがどうしようと、お前たちに咎める資格はありません」
 「そんな…本当に、盗まれた品物ではないのですか」
 「お前たち。ペンタール公爵家の護衛が、腑抜けの集まりだと言っている事に、気付いてはいないのかしら」
 「何を、仰っているのですか?我々は、盗品の確認をしていただきたく…」
 「公爵家の護衛は、公爵邸へ不審者を簡単に通してしまう腑抜けた集団だと、そう思っているのかと聞いているのです。答えなさい!」

 「も、申し訳ございませんでした。決してその様な事は、考えておりません。直ぐに引き上げますので、どうか、お許しください」
 憲兵隊員は、一斉に頭を垂れて謝罪を始めたのです。
 あら、床に頭が張り付きそうですわよ。
 そんなに深く腰を折らずとも宜しいのに、面白い光景ですこと。

 「イブ、わたくしから譲り受けた物を換金したかったのなら、一言相談してくださると宜しかったのに。次からは、気を付けてちょうだいね」
 「ありがと~メサラジーナ様!」

 本当に、愉快な娘ですこと。
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