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貧民街から抜け出したい(イブ視点)
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公爵家での生活が忘れられない。
結局、メサラジーナ様のお屋敷から持ってきた高価そうな物を、お金に変える事は出来なかった。
公爵家の家紋の入った品々を、買い取ってくれるところがなかったの。
どこの商人も、盗品だと疑って直ぐに憲兵隊を呼ぶんだもの、頭にきちゃう。
仕方がないからテオ君に買い取って貰おうとしたんだけれど、お店に行っても門前払いされちゃうし、最悪だわ。
結局お金がなかったから、期日までに家賃が払えなかった。
結構な滞納分があったらしくて、部屋に置いてあった家具や身の回りの物も全部差し押さえられて、部屋を追い出されちゃったの。
せっかく裕福な平民が暮らしている街に越して来たのに、また貧民街へ逆戻りしちゃったわ。
ここは、汚い街だよ。
石壁は崩れかけているし、部屋も隙間風が入ってきて雨漏りがする。
ベッドだって、誰が使っていたのかも分からない、いつ朽ち果てても可笑しくない程古びていた。
薄汚れていても、布団があるだけまだ救われているのかもしれない。
ネズミも沢山いるし、割れた窓からの景色も最悪。
道端には働かずに炊き出しを待っている怠け者が、所かまわず藁にくるまって横たわっている姿しか見えない。
こんな場所で生活をしていたら、お金持ちの家にお嫁に行く事も出来なくなっちゃう。
学園に行っても、あたしが通うクラスは貧乏人ばかりでうんざり。
お金持ちの子がいる敷地に行っても、留年しちゃったせいで誰も相手にしてくれなくなっちゃった。
父さんも母さんも働く気はないみたいで、あたしに学園なんて行かずに、金を稼いで来いって五月蠅いから家には帰りたくない。
またメサラジーナ様のお邸に行こうとしたけれど、こっそり抜け出しても父さんたちが一緒に着いて来て来るから、公爵邸には入れて貰えなかった。
日増しにイライラが募っていったわ。
「どうしてあたしの邪魔ばかりするのよ!父さんたちがいなかったら、あたしはメサラジーナ様のお屋敷で、お姫様みたいな暮らしが出来るのに!」
あたしがいくら訴えても、母さんは目を吊り上げて反論するだけだった。
「親を捨てて、自分だけ贅沢しようだなんて、許される訳がないでしょう」
「そうだぞ。お前がテオドールに嫌われなければ、俺たちだってこんな惨めな生活をしなくてすんだんだ。全部お前のせいだぞ、なんとかしろ」
汚らしい格好で、安い酒の匂いをさせながら、父さんまで文句を言ってくる。
「勝手な事ばかり言わないでよ。いい歳して働きもしないで怠けている方が悪いんじゃない!」
その時、母さんから思いきり頬を叩かれた。
「親に向かって、なんて事を言うんだい。いままで育ててやったのは誰だとおもっているの。この親不孝者が」
「育ててくれだなんて、頼んだ覚えないから。もっとお金持ちの家の子に産まれたかったのに、父さんも母さんも大嫌い」
毎日喧嘩ばかりで、もう、うんざりだ。
学園に行けばテオ君に会えるから、なんとしてでも結婚してもらわなくちゃ、もうこんな惨めな生活なんて耐えられない。
そう思って、学園でテオ君を見つけ出して話しかけてみた。
この現状を訴えたら、きっと何とかしてくれる筈だもの。
「ねえ、テオ君。あたし、凄く大変なんだよ。毎日親の為に働けって言われるし、部屋も追い出されちゃったんだから。助けてよ、もうテオ君しか頼れる人がいないの。あたしを、地獄から救い出して、お願いよ」
「自業自得だろう。分不相応の生活をしていたのは誰だ?お前たち親子に、俺がいくら恵んでやっていたと思っている。相当な金額になっているのを、お前にも見せただろう。あれだけの贅沢を許してやっていたというのに、貧民街に堕ちて困窮している方がおかしいだろう」
テオ君は、心底理解出来ないって顔で、あたしを見ていた。
「そんな事言われたって、実際に困っているんだから、助けてよ」
「鬱陶しい女だな。何度、俺に近寄るなといえば分かるんだよ。いい加減、迷惑をかけている事に気付け」
「違うのよ、あたしは、メサラジーナ様と親友なの。だから、テオ君に近付いている訳じゃないんだよ。メサラジーナ様が、テオ君と一緒にいるから、あたしだって一緒にいたっていいじゃない」
「だったら、俺に話しかけるな!迷惑だ」
あの時、お店で騒いだことを、まだ怒っているのかな?
あたしから言っても無理なら、メサラジーナ様に頼んで貰った方がいいのかな?
「メサラジーナ様、助けてください。あたし、テオ君と結婚出来なかったら、本当に路頭に迷っちゃう」
メサラジーナ様は、とても優しそうな笑顔を見せてくれたから、きっとテオ君に頼んでくれると思ったのに違ったわ。
「路頭に迷うだなんて、大袈裟ですわよ、イブ。そんなに心配しなくても、修道院へ行けば宜しいのではなくって?」
「嫌よ、修道院だなんて!戒律の厳しいところなんて、行きたくないわ。あたしは、贅沢な生活がしたいんだもの」
「まあ」
メサラジーナ様は、驚いた様な表情をしていただけで、助け舟は出してくれなかった。
結局、メサラジーナ様のお屋敷から持ってきた高価そうな物を、お金に変える事は出来なかった。
公爵家の家紋の入った品々を、買い取ってくれるところがなかったの。
どこの商人も、盗品だと疑って直ぐに憲兵隊を呼ぶんだもの、頭にきちゃう。
仕方がないからテオ君に買い取って貰おうとしたんだけれど、お店に行っても門前払いされちゃうし、最悪だわ。
結局お金がなかったから、期日までに家賃が払えなかった。
結構な滞納分があったらしくて、部屋に置いてあった家具や身の回りの物も全部差し押さえられて、部屋を追い出されちゃったの。
せっかく裕福な平民が暮らしている街に越して来たのに、また貧民街へ逆戻りしちゃったわ。
ここは、汚い街だよ。
石壁は崩れかけているし、部屋も隙間風が入ってきて雨漏りがする。
ベッドだって、誰が使っていたのかも分からない、いつ朽ち果てても可笑しくない程古びていた。
薄汚れていても、布団があるだけまだ救われているのかもしれない。
ネズミも沢山いるし、割れた窓からの景色も最悪。
道端には働かずに炊き出しを待っている怠け者が、所かまわず藁にくるまって横たわっている姿しか見えない。
こんな場所で生活をしていたら、お金持ちの家にお嫁に行く事も出来なくなっちゃう。
学園に行っても、あたしが通うクラスは貧乏人ばかりでうんざり。
お金持ちの子がいる敷地に行っても、留年しちゃったせいで誰も相手にしてくれなくなっちゃった。
父さんも母さんも働く気はないみたいで、あたしに学園なんて行かずに、金を稼いで来いって五月蠅いから家には帰りたくない。
またメサラジーナ様のお邸に行こうとしたけれど、こっそり抜け出しても父さんたちが一緒に着いて来て来るから、公爵邸には入れて貰えなかった。
日増しにイライラが募っていったわ。
「どうしてあたしの邪魔ばかりするのよ!父さんたちがいなかったら、あたしはメサラジーナ様のお屋敷で、お姫様みたいな暮らしが出来るのに!」
あたしがいくら訴えても、母さんは目を吊り上げて反論するだけだった。
「親を捨てて、自分だけ贅沢しようだなんて、許される訳がないでしょう」
「そうだぞ。お前がテオドールに嫌われなければ、俺たちだってこんな惨めな生活をしなくてすんだんだ。全部お前のせいだぞ、なんとかしろ」
汚らしい格好で、安い酒の匂いをさせながら、父さんまで文句を言ってくる。
「勝手な事ばかり言わないでよ。いい歳して働きもしないで怠けている方が悪いんじゃない!」
その時、母さんから思いきり頬を叩かれた。
「親に向かって、なんて事を言うんだい。いままで育ててやったのは誰だとおもっているの。この親不孝者が」
「育ててくれだなんて、頼んだ覚えないから。もっとお金持ちの家の子に産まれたかったのに、父さんも母さんも大嫌い」
毎日喧嘩ばかりで、もう、うんざりだ。
学園に行けばテオ君に会えるから、なんとしてでも結婚してもらわなくちゃ、もうこんな惨めな生活なんて耐えられない。
そう思って、学園でテオ君を見つけ出して話しかけてみた。
この現状を訴えたら、きっと何とかしてくれる筈だもの。
「ねえ、テオ君。あたし、凄く大変なんだよ。毎日親の為に働けって言われるし、部屋も追い出されちゃったんだから。助けてよ、もうテオ君しか頼れる人がいないの。あたしを、地獄から救い出して、お願いよ」
「自業自得だろう。分不相応の生活をしていたのは誰だ?お前たち親子に、俺がいくら恵んでやっていたと思っている。相当な金額になっているのを、お前にも見せただろう。あれだけの贅沢を許してやっていたというのに、貧民街に堕ちて困窮している方がおかしいだろう」
テオ君は、心底理解出来ないって顔で、あたしを見ていた。
「そんな事言われたって、実際に困っているんだから、助けてよ」
「鬱陶しい女だな。何度、俺に近寄るなといえば分かるんだよ。いい加減、迷惑をかけている事に気付け」
「違うのよ、あたしは、メサラジーナ様と親友なの。だから、テオ君に近付いている訳じゃないんだよ。メサラジーナ様が、テオ君と一緒にいるから、あたしだって一緒にいたっていいじゃない」
「だったら、俺に話しかけるな!迷惑だ」
あの時、お店で騒いだことを、まだ怒っているのかな?
あたしから言っても無理なら、メサラジーナ様に頼んで貰った方がいいのかな?
「メサラジーナ様、助けてください。あたし、テオ君と結婚出来なかったら、本当に路頭に迷っちゃう」
メサラジーナ様は、とても優しそうな笑顔を見せてくれたから、きっとテオ君に頼んでくれると思ったのに違ったわ。
「路頭に迷うだなんて、大袈裟ですわよ、イブ。そんなに心配しなくても、修道院へ行けば宜しいのではなくって?」
「嫌よ、修道院だなんて!戒律の厳しいところなんて、行きたくないわ。あたしは、贅沢な生活がしたいんだもの」
「まあ」
メサラジーナ様は、驚いた様な表情をしていただけで、助け舟は出してくれなかった。
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