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プロローグ
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「ミヤ!早く花冠を作らないと、花祭りに間に合わないわ」
「そんな、待ってください。私は不器用だから、お嬢様の様に、上手に出来ないのです」
貴族家の庭園で、幼い少女が二人、いろとりどりの花を摘んで冠を編んでいる。
一人はこの屋敷の娘のリーゼリアで、もう一人は使用人の娘なのだが、幼い二人は姉妹の様に仲が良い。
出来上がった花冠を頭に乗せると、待たせていた馬車に急いで飛び乗ったのである。
待ちゆく人々は皆、お祭りに浮足立っており、いつもは出ていない屋台がところ狭しと並んでいた。
メイン会場となる中央広場では、既に踊りの輪が出来ており、軽快な音楽に合わせて楽しむ人々でより賑わいを見せている。
路肩には、大きな花木が整然と並ぶように植えられており、綺麗なピンク色の花を満開に咲かせていた。
風が通り過ぎると、ふわりと散った花びらが、ひらりひらりと弄ばれながらゆっくりと石畳の上に落ちていく。
幻想的な雰囲気を持つ花木の下では、初々しい恋人たちが、これから訪れる明るい未来を楽し気に語っている。
その向こう側では、老年の夫婦がお互いを支え合う様に寄り添いながら、花木の美しさに魅了された様に眺めていた。
長い間支え合いながら生きて来た老夫婦を祝福するかの様に、一枚の花弁が花木から離れて優雅に舞いながら、老夫人の帽子に降りてくる。
老紳士が妻の帽子についた花弁を取り、嬉しそうに手渡すと、夫人は優しい眼差しを夫に向けて花弁を受け取った。
そして二人は慈しみ合いながら、幼い子供たちが楽し気に踊っている輪の方へ視線を向けて微笑み合うのだった。
リーゼリアとミヤは馬車から下りると、真っ先に踊りの輪の中に入っていく。
「間に合って良かったわ。最後の曲は、どんな子と踊れるのか、凄く楽しみよ」
「お嬢様。私は、最後まで踊れる自信がないわ。途中で離れてしまっても、私を置いて帰らないでくださいね」
「置いていく事なんてしないわよ。心配しないで、休みながらでもいいから、一緒に楽しく踊りましょう」
二人は、見知らぬ子供たちの輪の中でも怖気付く事なく、花祭りを心の底から楽しんでいた。
リーゼリアは踊りに夢中になって楽しんでいたので、あっと言う間に最後の曲になってしまった事を、とても残念に思っていた。
しかし、最後の踊りのパートナーになったのは同じ年頃の少年だったので、とても嬉しく感じたのである。
だが少年は、笑顔を作ってはいるがどこか悲し気に見えたので、リーゼリアはいつも以上に楽しい会話を心掛けたのだ。
「聞いてくれる?この間、お天気が良かったので、お庭でマナーの授業をうけていたの。そうしたら、何処から入ってきたのか分からないのだけれど、大きな白い犬が走って来たのよ。その後、どうなったと思う?」
「大きな犬?もしかして、噛みつかれたの?」
「いいえ。私の家庭教師を、おもいきり突き飛ばしたのよ。目の前には池があったから、飛び込む様に落ちていったの」
「池に、落ちたの?」
「いつも意地の悪い事ばかり言ってくる家庭教師だったから、私はとってもスッキリしたの」
「あはは。それは、スッキリするね。僕も見てみたかったよ」
少年は、リーゼリアの気遣いを理解したのか、可愛らしい笑顔を見せていた。
最後の曲が終わると、少年はとても恥ずかしそうに、頭の上に乗せていた花冠を手に取った。
「あのね…大人になったら、僕のお嫁さんになって欲しい。この花冠を、受け取ってくれるよね?」
「はい。喜んで」
リーゼリアは、自分の花冠を手に取って、少年の頭の上に乗せたのだ。
少年も、嬉しそうに自分の持っていた花冠を、リーゼリアの頭の上に乗せたのである。
「嬉しい。大人になったら、必ず私を迎えに来てね」
「勿論だよ、必ず迎えに行くから待っていてね」
少年は、リーゼリアの両頬に手を添えると、優しく口付けたのだった。
「そんな、待ってください。私は不器用だから、お嬢様の様に、上手に出来ないのです」
貴族家の庭園で、幼い少女が二人、いろとりどりの花を摘んで冠を編んでいる。
一人はこの屋敷の娘のリーゼリアで、もう一人は使用人の娘なのだが、幼い二人は姉妹の様に仲が良い。
出来上がった花冠を頭に乗せると、待たせていた馬車に急いで飛び乗ったのである。
待ちゆく人々は皆、お祭りに浮足立っており、いつもは出ていない屋台がところ狭しと並んでいた。
メイン会場となる中央広場では、既に踊りの輪が出来ており、軽快な音楽に合わせて楽しむ人々でより賑わいを見せている。
路肩には、大きな花木が整然と並ぶように植えられており、綺麗なピンク色の花を満開に咲かせていた。
風が通り過ぎると、ふわりと散った花びらが、ひらりひらりと弄ばれながらゆっくりと石畳の上に落ちていく。
幻想的な雰囲気を持つ花木の下では、初々しい恋人たちが、これから訪れる明るい未来を楽し気に語っている。
その向こう側では、老年の夫婦がお互いを支え合う様に寄り添いながら、花木の美しさに魅了された様に眺めていた。
長い間支え合いながら生きて来た老夫婦を祝福するかの様に、一枚の花弁が花木から離れて優雅に舞いながら、老夫人の帽子に降りてくる。
老紳士が妻の帽子についた花弁を取り、嬉しそうに手渡すと、夫人は優しい眼差しを夫に向けて花弁を受け取った。
そして二人は慈しみ合いながら、幼い子供たちが楽し気に踊っている輪の方へ視線を向けて微笑み合うのだった。
リーゼリアとミヤは馬車から下りると、真っ先に踊りの輪の中に入っていく。
「間に合って良かったわ。最後の曲は、どんな子と踊れるのか、凄く楽しみよ」
「お嬢様。私は、最後まで踊れる自信がないわ。途中で離れてしまっても、私を置いて帰らないでくださいね」
「置いていく事なんてしないわよ。心配しないで、休みながらでもいいから、一緒に楽しく踊りましょう」
二人は、見知らぬ子供たちの輪の中でも怖気付く事なく、花祭りを心の底から楽しんでいた。
リーゼリアは踊りに夢中になって楽しんでいたので、あっと言う間に最後の曲になってしまった事を、とても残念に思っていた。
しかし、最後の踊りのパートナーになったのは同じ年頃の少年だったので、とても嬉しく感じたのである。
だが少年は、笑顔を作ってはいるがどこか悲し気に見えたので、リーゼリアはいつも以上に楽しい会話を心掛けたのだ。
「聞いてくれる?この間、お天気が良かったので、お庭でマナーの授業をうけていたの。そうしたら、何処から入ってきたのか分からないのだけれど、大きな白い犬が走って来たのよ。その後、どうなったと思う?」
「大きな犬?もしかして、噛みつかれたの?」
「いいえ。私の家庭教師を、おもいきり突き飛ばしたのよ。目の前には池があったから、飛び込む様に落ちていったの」
「池に、落ちたの?」
「いつも意地の悪い事ばかり言ってくる家庭教師だったから、私はとってもスッキリしたの」
「あはは。それは、スッキリするね。僕も見てみたかったよ」
少年は、リーゼリアの気遣いを理解したのか、可愛らしい笑顔を見せていた。
最後の曲が終わると、少年はとても恥ずかしそうに、頭の上に乗せていた花冠を手に取った。
「あのね…大人になったら、僕のお嫁さんになって欲しい。この花冠を、受け取ってくれるよね?」
「はい。喜んで」
リーゼリアは、自分の花冠を手に取って、少年の頭の上に乗せたのだ。
少年も、嬉しそうに自分の持っていた花冠を、リーゼリアの頭の上に乗せたのである。
「嬉しい。大人になったら、必ず私を迎えに来てね」
「勿論だよ、必ず迎えに行くから待っていてね」
少年は、リーゼリアの両頬に手を添えると、優しく口付けたのだった。
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