【完結】騙された私も愚かでした

鈴蘭

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意識が戻りました

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 私が目覚めると、伯爵邸の自室にいました。
 「どうして…」
 起き上がろうとしたのですが、身体が動きません。
 「キャロライン。良かった…キャロライン。私が分かるかしら」
 「お母様…泣いてらっしゃるのですか…何があったのでしょう。私は、どうして此処に?」
 「キャロライン。もう、何も心配する事は無いのよ。誰か、旦那様に報告と、お医者様を呼んで来て頂戴」
 「お嬢様!良かった、お目覚めになられたのですね。今、旦那様をお呼びして来ます。あと、お医者様も直ぐに連れてまいります。奥様」
 見慣れた侍女の顔も、何故か涙ぐんでいる様に見えました。
 私は、状況が理解出来ずにいるのです。
 「これは…夢、かしら」
 確か私は、侯爵邸にいた筈。
 披露宴の後で、メリーとメイド長から使用人部屋へ入れられて…?
 身包みを剝がされてからメリーに打たれて…メイド長に鞭で打たれて、とても痛くて…熱を出して寝込んでいた筈なのに…どうして此処にいるの?
 どうやって戻って来たのかしら?
 いくら考えても、その後の事が、思い出せないのです。
 「キャロライン、夢ではないのよ。貴方は、伯爵邸に戻って来たの。安心して、ここには貴方を傷付ける者は、誰一人いないわ。貴方は、侯爵邸で昏睡状態になってしまい、長い間意識が戻らなかったのよ…」
 「昏睡状態…?お母様、私は生きているのですか?体が思うように動かないのです」
 「大丈夫よ、生きているわ。身体が動かないのは、ずっと寝たきりだったせいね。可哀想に、キャロライン。辛かったでしょう、直ぐに助けてあげられなくて、本当にごめんなさいね」
 お母様は、私を抱きしめたまま、泣いてしまわれました。
 助けにとは、どう言う事なのでしょうか?
 目覚めたばかりで、まだ頭が朦朧としているのでしょうね、意味がよく分かりません。
 それに、長い間寝ていただなんて、信じられませんでした。
 お父様が、部屋に来て下さいました。
 「キャロライン。目が覚めたのだな、良かった。本当に…」
 お父様まで、深刻なのか嬉しいのか、よく分からない表情をしています。
 「お母様、お父様。随分とお疲れの様ですが、お体は大丈夫なのですか?なんだか萎れて見えますが、私の目がおかしいのでしょうか…私が、ご心配をおかけしてしまったのですね、至らない娘で申し訳ありません」
 披露宴でお別れした時は、とても素敵な両親でしたのに、すっかり老け込んでしまっております。
 私は、一人だけ取り残されている気持ちになりました。
 「キャロラインが謝る事ではない。気にしないで、体力を回復させる事だけを考えていなさい」
 「そうですわね、どれ程寝ていたのか分かりませんが、体力を回復させなければいけませんわ。私は、侯爵家の世継ぎを産まなくてはいけないのですもの、寝ている場合ではありませんわね」
 お父様たちにも、孫の顔を見せてあげたいですし、伯爵家の世継ぎも産みたいですわ。
 その前に、使用人部屋へ入れられた事を、ハロルド様へお伝えしなくてはいけませんね。
 「メリーは…メリーは何処にいるのですか?姿が見えないのですが、一緒に戻って来たのですよね?あの子は、メイド長と一緒に、私を使用人部屋へ入れたのです。やはり、侍女として帯同したのは、間違いでしたの。ハロルド様は、どうされておりますか。私は彼に、この事をお伝えしなくてはいけないのです。お呼びする事は、出来ますか?」
 お父様も、お母様も、とても複雑そうな顔で見つめ合っておりました。
 そして、優しい笑顔で私を見つめた後、お母様が口を開いたのでした。
 「メリーは、この屋敷には居ないのよ。メイド長は、メリーと一緒に居たけれど、もう二度と彼女たちに会う事は無いの。だから、彼女たちの事は、忘れてしまいなさいね。ハロルド様は………」
 「失礼致します、奥様。お医者様が、お越しになりました」
 お母様が言い淀んでいるうちに、お医者様がいらしたので診察を受けましたが、栄養面がかなり悪いと言われてしまいました。
 長い間昏睡状態だったのなら、それは仕方の無い事です。
 これから栄養を付けて、リハビリをしなくてはいけないと言われてしまい、私は悲しくなりました。
 鞭で打たれた位で、寝たきりになるなんて…
 このままでは、世継ぎを産む事なんて、出来ないのです。
 唖然としている私を、お母様は優しく抱きしめて下さいました。
 私はメリーとメイド長に会う事は無いと言われた事で安心したのか、また深い眠りに付いたのでした。


 「キャロラインは、どうしたのでしょう。何だか様子がおかしいわ、頭を強く打たれた後遺症なのかしら」
 「目を覚ましてくれただけでも奇跡だ。例えこの先何があろうと、私たちで支えて行こう」
 「伯爵夫妻。お嬢様は恐らく、記憶障害だと思われます。人は、強い恐怖や恐ろしい体験をすると、本能的に心を守ろうとするのです。お嬢様は、昏睡状態に陥っている間に、余計な記憶を排除したのだと思われます」
 「体への影響は無いのですか?今後、記憶が思い出される事は、あるのでしょうか」
 「身体への直接的な影響は無いと思いますが、何かのきっかけで記憶が蘇る事はあるでしょうね。こればかりは、私たち医者でも手の打ちようが無いのです」
 「真実を打ち明けても良い物なのでしょうか?ハロルド様の事は、伝えるべきでは無いと思うのですけれど…あの子は、結婚が白紙になった事を知ったら、ショックを受けるのではないかしら」
 「そうですね。彼の事は、もう少し落ち着いてから伝えましょう。心の中までは、分かりませんので…お嬢様が望むのであれば、精神状態をよく観察しながら、少しずつお伝えするのが良いかと思います。その時は、私を必ず同席させてください」
 「分かりました。ありがとうございます」
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