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マルゲリーターの不安
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この日は何時も執務室で食事を摂っているルーカスが、珍しく夕餉の席に着いていた
アマンダはこれ幸いにと、自身の姪を婚約者にと薦めて来る
ルーカスよりも三歳下の姪は、よく公爵家へ遊びに来ているのだ。
幼い頃は仕方なく相手をしていたが、婚約話が出た時にキッパリと断ってからは、一切係わりを絶っていた。
ルーカスはアルフレッドの側近なので、生涯の伴侶は王家が許可する令嬢でなくてはいけない。
その事を何度伝えても、全く意味を理解していないのだ。
姪はルーカスの事を慕っており、父であるアマンダの弟に泣き付いているので、毎日の様に婚約の話しを持ちかけて来る。
こんな女でも姪と弟には愛情があるのかと思いきや、ルーカスの代になっても公爵家を手中に収めていたいと言う思惑が透けて見えていた。
アマンダには兄と弟がおり、実家は兄夫婦が継いでいるのだ。
弟は王宮勤めの文官で、領地を持たない男爵位を賜っている。
公爵家にとって、何の旨味も無いこの婚約は、王家にとっても薦める意味の無いものであった。
幾らオルターナ公爵が婚約を認めたとしても、高位貴族である公爵家の結婚は、王家の承諾が無ければ正式な婚姻として認められない。
そこでアマンダは、当事者であるルーカスを説き伏せて、王家の承諾を得ようとしていたのだった。
説き伏せたところで、どうにかなる物でもないのだが、アマンダは運命の赤い糸伝説を信じているのだ。
赤い糸で結ばれていると言えば、何とかなると考えている時点で、間違いなのだが本人は気付いていない。
「ルーカス、聞いているの?いい加減私の顔を立てて頂戴。あの子が貴方に一目惚れをして、今でも一途に思ってくれているのよ。とても光栄な事ではなくって?ルーカス、ちょっと返事くらいしなさい」
「五月蠅い。不貞を犯し、僕からたった一人の母親を奪ったお前の顔なんて、立てる義理など何処にある。後妻風情が何様だ」
「なっ!」
真っ赤な顔をして、ブルブルと震えているだけで、アマンダは何も言い返す事が出来なかった。
ルーカスはフンッと鼻を鳴らして侮蔑の視線を向けている。
そんな姿を横目で見ながらも、公爵はルーカスを咎める事も出来なかった。
いつ衆人環視の前で首を撥ねられるのかと、毎日生きた心地がしなかったのである。
アマンダも同じ立場であると言うのに、呑気に息子の婚約話を薦めようとする妻の事を、恨めしく思うのだった。
ようやくマルゲリーターが食堂に来て最悪な雰囲気の中で食事が始まり、空気を読めない彼女だけが一人で喋り続けている。
「きっとアル様は、私に会いたくて仕方が無いの。それなのに、お勉強ばかりさせられて、とても可哀想だわ。たまには、息抜きだって必要でしょう?せっかく私がランチへ誘っているのに、それを邪魔してくる人がいるんだわ。お兄様もそう思うでしょう?ねえ、明日はお兄様が責任を持って妖精たちの噴水前に、アル様を連れて来てよ」
ルーカスは、エレインの事を思い浮かべていた。
眼前で下品に語り続けている腹違いの妹と、エレインは姉妹になる筈。
なのに、似ている要素が全く見つからない。
幼い頃は二人共父親に良く似ていたが、成長した今はまるで違っていた。
マルゲリーターは父親に今でもよく似ているが、どことなく母親の面影が出てきている。
屋敷の使用人たちも、口には出さないがキャサリンの娘では無いと思い始めているだろう。
性格もアマンダによく似ているのだから、無理も無い。
皮肉にもアルフレッドが心を寄せ、惹かれているのは目の前の妹ではない。
公爵家で高等教育を受けられた筈のマルゲリーターは、自らその幸運を手放した。
五歳まで何処で暮らしていたのかは知らないが、この十年一体何を学んで来たのだろうと、ルーカスは思う。
逆に十歳までろくな教育を受けて来なかったエレインの方が、マルゲリーターよりも余程公爵令嬢らしい振る舞いをしていたのだ。
ルーカスは、チラリとアマンダを見る。
あの母親の腹から出て来たのなら、性分なのだろうと納得した。
デザートを無言で頬張ると、ルーカスは執事にアレを持って来るように指示をする。
「お兄様!アル様から私へのプレゼントを預かって来たのね。それならもっと早くいってくれたら良かったのに、夕餉が美味しく食べられなくて損したわ」
あれだけの量を平らげておきながら、どの口で言っているのだと、ルーカスは呆れていた。
「もしかしたら、王家に代々伝わる国宝かもしれないわね。婚約者に選ばれてからもう長いと言うのに、何も渡されていないのは、可笑しいと思っていたのよ」
「お母様もそう思うの?私もよ」
この親子の頭のネジは壊れていると、珍しく公爵とルーカスの考えは一致していた。
たかが婚約者だと言うだけで、何故国宝が貰えると思うのか、理解出来る者がいたら聞いてみたい。
執事がトレーの上に乗った手紙の束を持って来たので、ルーカスはそれを受け取りマルゲリーターに突き返した。
「今までお前がアルフレッド殿下に宛てて書いた手紙は、全て届いていた。何の係わりも無い者の手を煩わせる事は、迷惑行為だと何度注意をしても理解して貰えないと、殿下は嘆いておられたぞ!公爵家の恥だと言うのに、殿下の顔にまでどれ程泥を塗り付けたら気が済むのだ。お前は存在そのものが、恥だと言う事をいい加減自覚しろ!殿下は、受け取った手紙を一切読んではいない。今後は、手紙を受け取らないと言っている。お前の存在そのものが、鬱陶しくて仕方が無いレベルを超えたのだ」
マルゲリーターは、自分が出した手紙の封も開けられていない事に気が付き、それをルーカスが持って来たことで不信感を現した。
「お兄様が手紙を隠していたのね!私には高貴な血が流れている事を、知っているのでしょう。この事を皇帝に伝えたら、どうなるか分かっているのでしょうね!」
「それがどうした。お前の言う高貴な血は、僕も受け継いでいる。幼い頃は母上に抱きしめられ、てづから刺繍を施したハンカチも、沢山プレゼントして貰った。お前は?僕等の母上から、何かプレゼントを頂いた事があるのか」
ルーカスに言われた事で、自分だけが高貴で選ばれた人間だと疑っていなかったマルゲリーターは、漸く兄にも同じ血が流れている事に気が付いた。
そして刺繍のハンカチどころか、母親と会った事すら無いと、不安を感じたのである。
「お兄様が…高貴な血筋…」
「お前は、帝国へ帰ってしまった母上から、手紙をもらった事があるのか?皇帝だって、母上を裏切った男の娘を王妃に据えたとしても、だからどうしたと思うだろうな。仮に友好関係を結びたいと言うのなら、皇族から姫を娶った方が余程良い。年頃の姫が居なかった先代とは違って、今は何人か婚約者を探していると聞いている。アルフレッド殿下だって、お前を娶るよりも、ずっと良縁だろう」
想像もしていなかったのだろうか、そこでマルゲリーターはやっと自分の置かれている立場を理解したようだった。
「お兄様!アル様は、帝国の姫を妃にと考えているの?私を捨てて、見知らぬ女を国の王妃にしようとしているのね」
「マナーもなっていない。知識もない。あるのは性欲と物欲だけのお前を娶れば、確実に国は亡ぶ。誰がそんな女を妃にしたいと思うのだ?」
「ルーカス!貴方は実の妹に、なんて酷い事を言うのよ謝りなさい」
ルーカスは、冷たい表情でアマンダを睨みつけた。
「お前も人の事を言えないだろう。公爵家が傾きかける程の贅沢三昧をしているだけで、夫人としての執務を全くしない。気に入らなければ罵言雑言並びたてて、使用人を不当解雇するだけでは飽き足らず、財産とも言える家財道具に当たり散らして破壊する。今までどれ程高価な物を瓦礫にして来たのか、理解もしていないだろう。何処の誰とは言わないが、良く似ているな。こんな屑で役にも立たないゴミ以下の人間を、招き入れた男もどうかしている。お前たちの尻拭いに、付き合わされる身にもなってみろ」
「親に向かってなんて言いぐさなの!」
「事実だろう。それとも既に、夜逃げの準備でもしているのか?今更何処にも、逃げ場等ありはしないがな」
ルーカスは、公爵を一瞥すると食堂を後にした。
頭の良いルーカスの前では、誰も言葉で言い返す事等出来なかった。
「ちょっと貴方。妻と娘が侮辱されているのに、どうして何も仰ってくれないの。息子にあんな事を言われて、貴方は悔しくはないの」
「事実だろう。私はお前たちを招き入れた事を、後悔していると言ったが、もう忘れてしまったのか」
「後悔だなんて!私がどれ程社交に力を入れて来たと思っているのよ!」
「贅沢なドレスと、高価な宝石を自慢するのに忙しいのだろう。ルーカスの言う通り、私たちに逃げ場は無いのだからな。今更無意味な社交等する必要も無ければ、お前たちに無駄金を使うつもりも無い」
「何を馬鹿な事を言っているのよ。お金が無いのなら、領民からの税金を上げればいいじゃない」
「話にならないな。陛下の生誕祭にだけは参加させてやるが、その後の面倒を見るつもりは無いぞ」
「なっ!?」
「待ってください、お父様!私のドレスは、買って下さるのよね?週末にはお茶会が…」
公爵は、マルゲリーターを睨みつけた後、何も言わずに退席した。
アマンダは唖然として、座ったままでいた。
マルゲリーターは癇癪を起し、渡された手紙を破り捨ててテーブルクロスを引っ張った為、残されていた食器が高価な絨毯の上に落ちて無残に割れた。
また公爵家の財産がゴミになってしまったと、見ていた使用人たちは虚無になった。
あれだけルーカスに釘を刺されたと言うのに、マルゲリーターが行動を改める事はない。
アマンダは、今後もドレスを買って貰えない事が余程ショックだったのか、部屋に籠ったまま出て来なくなった。
ルーカスの指示で壊れた物の補充はしなくて良いと言われた為、マルゲリーター同様アマンダの部屋も、公爵夫人の部屋とは思えない程質素になっている。
割られた鏡台はそのままで、修理も買い替える事もされなかった。
アマンダはこれ幸いにと、自身の姪を婚約者にと薦めて来る
ルーカスよりも三歳下の姪は、よく公爵家へ遊びに来ているのだ。
幼い頃は仕方なく相手をしていたが、婚約話が出た時にキッパリと断ってからは、一切係わりを絶っていた。
ルーカスはアルフレッドの側近なので、生涯の伴侶は王家が許可する令嬢でなくてはいけない。
その事を何度伝えても、全く意味を理解していないのだ。
姪はルーカスの事を慕っており、父であるアマンダの弟に泣き付いているので、毎日の様に婚約の話しを持ちかけて来る。
こんな女でも姪と弟には愛情があるのかと思いきや、ルーカスの代になっても公爵家を手中に収めていたいと言う思惑が透けて見えていた。
アマンダには兄と弟がおり、実家は兄夫婦が継いでいるのだ。
弟は王宮勤めの文官で、領地を持たない男爵位を賜っている。
公爵家にとって、何の旨味も無いこの婚約は、王家にとっても薦める意味の無いものであった。
幾らオルターナ公爵が婚約を認めたとしても、高位貴族である公爵家の結婚は、王家の承諾が無ければ正式な婚姻として認められない。
そこでアマンダは、当事者であるルーカスを説き伏せて、王家の承諾を得ようとしていたのだった。
説き伏せたところで、どうにかなる物でもないのだが、アマンダは運命の赤い糸伝説を信じているのだ。
赤い糸で結ばれていると言えば、何とかなると考えている時点で、間違いなのだが本人は気付いていない。
「ルーカス、聞いているの?いい加減私の顔を立てて頂戴。あの子が貴方に一目惚れをして、今でも一途に思ってくれているのよ。とても光栄な事ではなくって?ルーカス、ちょっと返事くらいしなさい」
「五月蠅い。不貞を犯し、僕からたった一人の母親を奪ったお前の顔なんて、立てる義理など何処にある。後妻風情が何様だ」
「なっ!」
真っ赤な顔をして、ブルブルと震えているだけで、アマンダは何も言い返す事が出来なかった。
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そんな姿を横目で見ながらも、公爵はルーカスを咎める事も出来なかった。
いつ衆人環視の前で首を撥ねられるのかと、毎日生きた心地がしなかったのである。
アマンダも同じ立場であると言うのに、呑気に息子の婚約話を薦めようとする妻の事を、恨めしく思うのだった。
ようやくマルゲリーターが食堂に来て最悪な雰囲気の中で食事が始まり、空気を読めない彼女だけが一人で喋り続けている。
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ルーカスは、エレインの事を思い浮かべていた。
眼前で下品に語り続けている腹違いの妹と、エレインは姉妹になる筈。
なのに、似ている要素が全く見つからない。
幼い頃は二人共父親に良く似ていたが、成長した今はまるで違っていた。
マルゲリーターは父親に今でもよく似ているが、どことなく母親の面影が出てきている。
屋敷の使用人たちも、口には出さないがキャサリンの娘では無いと思い始めているだろう。
性格もアマンダによく似ているのだから、無理も無い。
皮肉にもアルフレッドが心を寄せ、惹かれているのは目の前の妹ではない。
公爵家で高等教育を受けられた筈のマルゲリーターは、自らその幸運を手放した。
五歳まで何処で暮らしていたのかは知らないが、この十年一体何を学んで来たのだろうと、ルーカスは思う。
逆に十歳までろくな教育を受けて来なかったエレインの方が、マルゲリーターよりも余程公爵令嬢らしい振る舞いをしていたのだ。
ルーカスは、チラリとアマンダを見る。
あの母親の腹から出て来たのなら、性分なのだろうと納得した。
デザートを無言で頬張ると、ルーカスは執事にアレを持って来るように指示をする。
「お兄様!アル様から私へのプレゼントを預かって来たのね。それならもっと早くいってくれたら良かったのに、夕餉が美味しく食べられなくて損したわ」
あれだけの量を平らげておきながら、どの口で言っているのだと、ルーカスは呆れていた。
「もしかしたら、王家に代々伝わる国宝かもしれないわね。婚約者に選ばれてからもう長いと言うのに、何も渡されていないのは、可笑しいと思っていたのよ」
「お母様もそう思うの?私もよ」
この親子の頭のネジは壊れていると、珍しく公爵とルーカスの考えは一致していた。
たかが婚約者だと言うだけで、何故国宝が貰えると思うのか、理解出来る者がいたら聞いてみたい。
執事がトレーの上に乗った手紙の束を持って来たので、ルーカスはそれを受け取りマルゲリーターに突き返した。
「今までお前がアルフレッド殿下に宛てて書いた手紙は、全て届いていた。何の係わりも無い者の手を煩わせる事は、迷惑行為だと何度注意をしても理解して貰えないと、殿下は嘆いておられたぞ!公爵家の恥だと言うのに、殿下の顔にまでどれ程泥を塗り付けたら気が済むのだ。お前は存在そのものが、恥だと言う事をいい加減自覚しろ!殿下は、受け取った手紙を一切読んではいない。今後は、手紙を受け取らないと言っている。お前の存在そのものが、鬱陶しくて仕方が無いレベルを超えたのだ」
マルゲリーターは、自分が出した手紙の封も開けられていない事に気が付き、それをルーカスが持って来たことで不信感を現した。
「お兄様が手紙を隠していたのね!私には高貴な血が流れている事を、知っているのでしょう。この事を皇帝に伝えたら、どうなるか分かっているのでしょうね!」
「それがどうした。お前の言う高貴な血は、僕も受け継いでいる。幼い頃は母上に抱きしめられ、てづから刺繍を施したハンカチも、沢山プレゼントして貰った。お前は?僕等の母上から、何かプレゼントを頂いた事があるのか」
ルーカスに言われた事で、自分だけが高貴で選ばれた人間だと疑っていなかったマルゲリーターは、漸く兄にも同じ血が流れている事に気が付いた。
そして刺繍のハンカチどころか、母親と会った事すら無いと、不安を感じたのである。
「お兄様が…高貴な血筋…」
「お前は、帝国へ帰ってしまった母上から、手紙をもらった事があるのか?皇帝だって、母上を裏切った男の娘を王妃に据えたとしても、だからどうしたと思うだろうな。仮に友好関係を結びたいと言うのなら、皇族から姫を娶った方が余程良い。年頃の姫が居なかった先代とは違って、今は何人か婚約者を探していると聞いている。アルフレッド殿下だって、お前を娶るよりも、ずっと良縁だろう」
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「お兄様!アル様は、帝国の姫を妃にと考えているの?私を捨てて、見知らぬ女を国の王妃にしようとしているのね」
「マナーもなっていない。知識もない。あるのは性欲と物欲だけのお前を娶れば、確実に国は亡ぶ。誰がそんな女を妃にしたいと思うのだ?」
「ルーカス!貴方は実の妹に、なんて酷い事を言うのよ謝りなさい」
ルーカスは、冷たい表情でアマンダを睨みつけた。
「お前も人の事を言えないだろう。公爵家が傾きかける程の贅沢三昧をしているだけで、夫人としての執務を全くしない。気に入らなければ罵言雑言並びたてて、使用人を不当解雇するだけでは飽き足らず、財産とも言える家財道具に当たり散らして破壊する。今までどれ程高価な物を瓦礫にして来たのか、理解もしていないだろう。何処の誰とは言わないが、良く似ているな。こんな屑で役にも立たないゴミ以下の人間を、招き入れた男もどうかしている。お前たちの尻拭いに、付き合わされる身にもなってみろ」
「親に向かってなんて言いぐさなの!」
「事実だろう。それとも既に、夜逃げの準備でもしているのか?今更何処にも、逃げ場等ありはしないがな」
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「事実だろう。私はお前たちを招き入れた事を、後悔していると言ったが、もう忘れてしまったのか」
「後悔だなんて!私がどれ程社交に力を入れて来たと思っているのよ!」
「贅沢なドレスと、高価な宝石を自慢するのに忙しいのだろう。ルーカスの言う通り、私たちに逃げ場は無いのだからな。今更無意味な社交等する必要も無ければ、お前たちに無駄金を使うつもりも無い」
「何を馬鹿な事を言っているのよ。お金が無いのなら、領民からの税金を上げればいいじゃない」
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「なっ!?」
「待ってください、お父様!私のドレスは、買って下さるのよね?週末にはお茶会が…」
公爵は、マルゲリーターを睨みつけた後、何も言わずに退席した。
アマンダは唖然として、座ったままでいた。
マルゲリーターは癇癪を起し、渡された手紙を破り捨ててテーブルクロスを引っ張った為、残されていた食器が高価な絨毯の上に落ちて無残に割れた。
また公爵家の財産がゴミになってしまったと、見ていた使用人たちは虚無になった。
あれだけルーカスに釘を刺されたと言うのに、マルゲリーターが行動を改める事はない。
アマンダは、今後もドレスを買って貰えない事が余程ショックだったのか、部屋に籠ったまま出て来なくなった。
ルーカスの指示で壊れた物の補充はしなくて良いと言われた為、マルゲリーター同様アマンダの部屋も、公爵夫人の部屋とは思えない程質素になっている。
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