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三皿目 ろくろ首の母娘と水羊羹
その15 三人の笑顔
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「こんにちは」
「いらっしゃいませ!……あっ、アカリちゃん!」
ガラガラと扉が開き、清美とアカリ、そして間宮の三人が入って来た。
こちらから訪ねようと話していたところだ。連れだって来てくれた三人を見て、安堵した空気が店内に積もっていく。
「先日は、本当にありがとうございました」
三人で丁寧にお辞儀をした後、間宮が照れながら報告する。
「実は、清美チャンと結婚することになりました。就職先も決まりそうです」
嬉しそうに頭を掻いている間宮に、菜々美や蘭丸は、「おめでとう」と寿いだ。
清美は笑顔で、手を繋いでいる間宮とアカリのほうを見つめる。
「アカリがやっと許してくれたんです」
「パパになったら、リュウおじちゃんも怖くなるのかと思ったの」
「そんなことは絶対にないよ。ボクはずっとアカリと清美チャンを大切にする。約束するよ。家族を持ったからには、仕事も頑張るから」
はっきり言い切った間宮に、清美が嬉しそうに頬を緩ませている。アカリを守ろうと懸命に立ち向かった間宮なら、きっと二人を大切にしていくだろう。
菜々美はほっとしながら、改めて間宮を見つめた。
初めて会った時の間宮は、清美との付き合いや、外見的な雰囲気から、どこか軽い感じがしていた。
それは彼の防衛本能から、そうしていたのだと、今の菜々美にはわかる。
清美が元夫のところへ戻ったり、アカリが本当のパパがいいと言い出したりした時、すぐに身を引けるように。
本気じゃなかったとかわすため、格好がつかなかったり、傷ついたりしないため、自分を守るための鎧だった。
彼の気持ちが、菜々美にはよくわかる。
美しすぎる双子の妹と比べられることを恐れ、菜々美は心に鎧をつけてきた。
でも……。鎧を外して向き合わないと、本当に欲しい物はいつまでたっても手に入らない。
間宮は鎧を脱いで、向き合おうと決めた。本当によかったと思う。
冷蔵ショーケースの中を覗いていた清美が、顔を上げた。
「今日は持って帰りますね。アカリ、リュウスケさん、何がいい?」
「えっと、この『さざ波』水色できれい。これが食べたい。パパは?」
何気なく、パパという言葉で呼ばれ、間宮の顔が赤くなる。うれしくてくすぐったいのだろう。
「パ、パパもそれがいいな。それじゃあ『さざ波』を十二個、それから、この前もってきてくださった水羊羹も、すごく美味しかったので、これを十五個、お願いします」
寒天と砂糖と水を煮溶かした錦玉液に道明寺粉を加え、みぞれ羹に仕立てた和菓子、『さざ波』は、青い海面をイメージしている。
「ありがとうございました」
水羊羹とともに包装し、紙袋に入れて清美に手渡した。
「間宮さん」
「は、はい」
咲人が間宮を呼び、彼の手に翡翠のピアスを握らせた。
「これは……翡翠のピアス……? あ、ありがとうございます。店長さん。対になるピアスは僕が持っています。これからは僕が二人を守りますので」
「ああ、そのほうがいい」
咲人が翡翠のピアスを手に持ち、清美とアカリの耳朶に触れると、白い光が放たれた。一瞬のうちに母娘の耳に翡翠のピアスが輝いている。
対になるピアスを間宮の耳につけると、三人は笑顔で顔を見合わせた。
「それじゃあ、また来ますね」
「お姉さん、バイバイ」
「お世話になりました」
笑みを浮かべ、三人が店を出て行く。
光の中へ小さくなっていく家族の背中を、菜々美は幸せな気持ちで見送った。
いつの間にか、空に大きな虹がかかっていた。
「いらっしゃいませ!……あっ、アカリちゃん!」
ガラガラと扉が開き、清美とアカリ、そして間宮の三人が入って来た。
こちらから訪ねようと話していたところだ。連れだって来てくれた三人を見て、安堵した空気が店内に積もっていく。
「先日は、本当にありがとうございました」
三人で丁寧にお辞儀をした後、間宮が照れながら報告する。
「実は、清美チャンと結婚することになりました。就職先も決まりそうです」
嬉しそうに頭を掻いている間宮に、菜々美や蘭丸は、「おめでとう」と寿いだ。
清美は笑顔で、手を繋いでいる間宮とアカリのほうを見つめる。
「アカリがやっと許してくれたんです」
「パパになったら、リュウおじちゃんも怖くなるのかと思ったの」
「そんなことは絶対にないよ。ボクはずっとアカリと清美チャンを大切にする。約束するよ。家族を持ったからには、仕事も頑張るから」
はっきり言い切った間宮に、清美が嬉しそうに頬を緩ませている。アカリを守ろうと懸命に立ち向かった間宮なら、きっと二人を大切にしていくだろう。
菜々美はほっとしながら、改めて間宮を見つめた。
初めて会った時の間宮は、清美との付き合いや、外見的な雰囲気から、どこか軽い感じがしていた。
それは彼の防衛本能から、そうしていたのだと、今の菜々美にはわかる。
清美が元夫のところへ戻ったり、アカリが本当のパパがいいと言い出したりした時、すぐに身を引けるように。
本気じゃなかったとかわすため、格好がつかなかったり、傷ついたりしないため、自分を守るための鎧だった。
彼の気持ちが、菜々美にはよくわかる。
美しすぎる双子の妹と比べられることを恐れ、菜々美は心に鎧をつけてきた。
でも……。鎧を外して向き合わないと、本当に欲しい物はいつまでたっても手に入らない。
間宮は鎧を脱いで、向き合おうと決めた。本当によかったと思う。
冷蔵ショーケースの中を覗いていた清美が、顔を上げた。
「今日は持って帰りますね。アカリ、リュウスケさん、何がいい?」
「えっと、この『さざ波』水色できれい。これが食べたい。パパは?」
何気なく、パパという言葉で呼ばれ、間宮の顔が赤くなる。うれしくてくすぐったいのだろう。
「パ、パパもそれがいいな。それじゃあ『さざ波』を十二個、それから、この前もってきてくださった水羊羹も、すごく美味しかったので、これを十五個、お願いします」
寒天と砂糖と水を煮溶かした錦玉液に道明寺粉を加え、みぞれ羹に仕立てた和菓子、『さざ波』は、青い海面をイメージしている。
「ありがとうございました」
水羊羹とともに包装し、紙袋に入れて清美に手渡した。
「間宮さん」
「は、はい」
咲人が間宮を呼び、彼の手に翡翠のピアスを握らせた。
「これは……翡翠のピアス……? あ、ありがとうございます。店長さん。対になるピアスは僕が持っています。これからは僕が二人を守りますので」
「ああ、そのほうがいい」
咲人が翡翠のピアスを手に持ち、清美とアカリの耳朶に触れると、白い光が放たれた。一瞬のうちに母娘の耳に翡翠のピアスが輝いている。
対になるピアスを間宮の耳につけると、三人は笑顔で顔を見合わせた。
「それじゃあ、また来ますね」
「お姉さん、バイバイ」
「お世話になりました」
笑みを浮かべ、三人が店を出て行く。
光の中へ小さくなっていく家族の背中を、菜々美は幸せな気持ちで見送った。
いつの間にか、空に大きな虹がかかっていた。
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