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五皿目 見越入道の暴走と和菓子の絆
その14 激闘と菜々美の覚醒
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「誤解だと言っている。頭を冷やせ」
「うるさいっ! 黙れぇぇっ、お前を……殺してやるっ」
目を血走らせ、地響きを立てて向かってくる研也の攻撃を咲人は身軽な跳躍でかわし、街路樹の上に飛び乗った。
そこから飛び降りざまに片手を研也に向け、纏っていた稲妻を放つ。
「ぐぅっ! うおおぉぉ……っ」
突然の閃光に避ける間もなく、研也の体が大きく痺れ、どぉっと倒れた。
「くそっ、さすが高い妖力を持つ妖狐……! しかし、見越入道が負けるわけにはいかない……!」
憤怒に禿頭まで真っ赤にした研也が、大きく息を吸い込み、長い髪をなびかせ身をかわす咲人を執拗に狙う。
「うおおぉぉ……っ」
青ざめている明日香を庇うようにして、店の壁に身を隠していた菜々美は、丸太のような太く長い研也の腕に吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられ、菜々美は一瞬気を失いかける。
「菜々美ちゃん!」
飛び出したのは蘭丸だ。血相を変えて走り寄り、倒れていた菜々美を抱き起す。
「大丈夫かい、菜々美ちゃ……」
「お前達も許さぬ! 叩き潰してやるっ」
ゴッと音を立て、巨大な研也の腕が蘭丸の体を吹き飛ばした。店の壁に叩きつけられ、蘭丸の体がずるずるとその場に崩れ落ちる。
「蘭丸さん……っ」
「よくもあたしの可愛い孫を!」
瑠璃が叫んだ。途端、彼女から凄まじい冷気があふれ出し、氷のような風が周囲を包む。研也目がけて、突き刺さるような氷の礫が襲いかかった。
「邪魔をするな!」
つぶやいた研也の体を大量の糸が巻き付いた。女郎蜘蛛の明日香が指先から糸を繰り出しながら叫ぶ。
「もう止めて! 誤解だって言ってるでしょう! あたしの言い方が悪かったのなら何度でも謝るから……」
「やかましい。貴様だけは絶対に許さぬ! 死ね――っ」
研也は体に巻き付いている糸を両手で力任せに引きちぎると、躊躇なく明日香の体を手で叩きつけた。
「明日香さんっ」
地面に頭を打ち付け、明日香は気を失ってしまう。
その彼女を踏みつけようと足を上げる研也を、跳躍した咲人が疾風のような身のこなしで、背後から蹴りつけた。
地響きをさせて膝をついた研也が、忌々しそうに「うぉぅっ」と呻くと、瑠璃が素早く前に出る。
「戯れがすぎるわよ、見越入道ッ」
「雪女ごときが、生意気な」
さらに強い冷気を吹き上げた瑠璃に、研也の腕が炸裂した。咄嗟に氷の鎧で防いだものの、瑠璃の体が後方へ下がる。
「女は嫌いだ! 厚かましい女は特に。明日香、お前を許しはしない……っ」
目を血走らせ、研也は明日香を睨みつけた。意識を取り戻したばかりの明日香は、朦朧とする頭を押さえたまま動けず、逃げることもできない。
「ぶっ殺してやる」
菜々美は無意識のうちに立ち上がると、まだ痺れが残っている脚を叱咤し駆け出す。
走りながら地面を蹴った。
菜々美の体は街路樹よりも高く跳躍していた。頭の中は真っ白で、ただただ、大切な夕さりの店舗と皆を守ることしかない。
空中で、両手を研也へ向ける。次の瞬間、稲妻が菜々美の体中で生まれ、両手から放たれた。
咲人が繰り出した妖力を同じ技に、研也の巨躯が後方に吹っ飛んだ。
「な、なんだ、お前は! 人間じゃないのか? 妖狐族の妖気を強く感じる……お前は……混じり者か!」
「混じりし……者……?」
「妖怪と人間が混ざり合って誕生した混じり者は、人間でもなくあやかしでもない半妖だ! 能力も妖力もほぼ人間に近いはず。なぜお前は大技を使えるのだ?」
「……」
半妖という言葉に、菜々美は息を呑む。
自分でもわからない。ただ菜々美は、大切な人と場所を守りたかっただけだ。
「余計なことを言うな。それ以上くだらない御託を並べるなら、容赦しない」
怒気を含んだ咲人の声が落ち、大気が揺らぐ。咲人の殺気が妖雲をなって立ち上り、空が黒い雲に覆われた。
「瑠璃! 冷気結界を張れ」
「任せて!」
瑠璃が冷気を飛ばして膜を作った直後、轟音と閃光が研也を直撃した。
瑠璃の結界越しにも、大波のような風が吹きつけ、菜々美は気力を使い果たし、その場に崩れ落ちた。
「菜々美……っ」
咲人の声が聞こえたのを最後に、菜々美の視界は暗転した。
「うるさいっ! 黙れぇぇっ、お前を……殺してやるっ」
目を血走らせ、地響きを立てて向かってくる研也の攻撃を咲人は身軽な跳躍でかわし、街路樹の上に飛び乗った。
そこから飛び降りざまに片手を研也に向け、纏っていた稲妻を放つ。
「ぐぅっ! うおおぉぉ……っ」
突然の閃光に避ける間もなく、研也の体が大きく痺れ、どぉっと倒れた。
「くそっ、さすが高い妖力を持つ妖狐……! しかし、見越入道が負けるわけにはいかない……!」
憤怒に禿頭まで真っ赤にした研也が、大きく息を吸い込み、長い髪をなびかせ身をかわす咲人を執拗に狙う。
「うおおぉぉ……っ」
青ざめている明日香を庇うようにして、店の壁に身を隠していた菜々美は、丸太のような太く長い研也の腕に吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられ、菜々美は一瞬気を失いかける。
「菜々美ちゃん!」
飛び出したのは蘭丸だ。血相を変えて走り寄り、倒れていた菜々美を抱き起す。
「大丈夫かい、菜々美ちゃ……」
「お前達も許さぬ! 叩き潰してやるっ」
ゴッと音を立て、巨大な研也の腕が蘭丸の体を吹き飛ばした。店の壁に叩きつけられ、蘭丸の体がずるずるとその場に崩れ落ちる。
「蘭丸さん……っ」
「よくもあたしの可愛い孫を!」
瑠璃が叫んだ。途端、彼女から凄まじい冷気があふれ出し、氷のような風が周囲を包む。研也目がけて、突き刺さるような氷の礫が襲いかかった。
「邪魔をするな!」
つぶやいた研也の体を大量の糸が巻き付いた。女郎蜘蛛の明日香が指先から糸を繰り出しながら叫ぶ。
「もう止めて! 誤解だって言ってるでしょう! あたしの言い方が悪かったのなら何度でも謝るから……」
「やかましい。貴様だけは絶対に許さぬ! 死ね――っ」
研也は体に巻き付いている糸を両手で力任せに引きちぎると、躊躇なく明日香の体を手で叩きつけた。
「明日香さんっ」
地面に頭を打ち付け、明日香は気を失ってしまう。
その彼女を踏みつけようと足を上げる研也を、跳躍した咲人が疾風のような身のこなしで、背後から蹴りつけた。
地響きをさせて膝をついた研也が、忌々しそうに「うぉぅっ」と呻くと、瑠璃が素早く前に出る。
「戯れがすぎるわよ、見越入道ッ」
「雪女ごときが、生意気な」
さらに強い冷気を吹き上げた瑠璃に、研也の腕が炸裂した。咄嗟に氷の鎧で防いだものの、瑠璃の体が後方へ下がる。
「女は嫌いだ! 厚かましい女は特に。明日香、お前を許しはしない……っ」
目を血走らせ、研也は明日香を睨みつけた。意識を取り戻したばかりの明日香は、朦朧とする頭を押さえたまま動けず、逃げることもできない。
「ぶっ殺してやる」
菜々美は無意識のうちに立ち上がると、まだ痺れが残っている脚を叱咤し駆け出す。
走りながら地面を蹴った。
菜々美の体は街路樹よりも高く跳躍していた。頭の中は真っ白で、ただただ、大切な夕さりの店舗と皆を守ることしかない。
空中で、両手を研也へ向ける。次の瞬間、稲妻が菜々美の体中で生まれ、両手から放たれた。
咲人が繰り出した妖力を同じ技に、研也の巨躯が後方に吹っ飛んだ。
「な、なんだ、お前は! 人間じゃないのか? 妖狐族の妖気を強く感じる……お前は……混じり者か!」
「混じりし……者……?」
「妖怪と人間が混ざり合って誕生した混じり者は、人間でもなくあやかしでもない半妖だ! 能力も妖力もほぼ人間に近いはず。なぜお前は大技を使えるのだ?」
「……」
半妖という言葉に、菜々美は息を呑む。
自分でもわからない。ただ菜々美は、大切な人と場所を守りたかっただけだ。
「余計なことを言うな。それ以上くだらない御託を並べるなら、容赦しない」
怒気を含んだ咲人の声が落ち、大気が揺らぐ。咲人の殺気が妖雲をなって立ち上り、空が黒い雲に覆われた。
「瑠璃! 冷気結界を張れ」
「任せて!」
瑠璃が冷気を飛ばして膜を作った直後、轟音と閃光が研也を直撃した。
瑠璃の結界越しにも、大波のような風が吹きつけ、菜々美は気力を使い果たし、その場に崩れ落ちた。
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