157 / 260
勇気の炎
しおりを挟むまず俺は地面を蹴って、空に逃げた。体格差が圧倒的すぎる。だからスピードで勝負する。俺は渾身の力を翼に込めた。翼膜が空圧で剥がされそうだ。筋肉がブチギレて、血が出るほど力を込めた。
勝負は短期決戦。スピードで翻弄して、なんとか隙を見つける。そして、ドラゴンバズーカ(体当たり)で首、心臓、肺のどれかを破壊する。即死させなければまず俺に勝機はない。これが唯一の勝ち筋だ。
俺が空中に飛び上がった瞬間、俺は地面にぶつかった。
「ぐがあっ! なんだっ? 何が起きたっ?」
俺はふらつく頭をすぐに回転させた。周囲の様相を素早く視神経から脳に伝える。
「ここは俺がさっきまで立っていた地面の上? 何がどうなっている?」
俺はさっきまで先代竜王がいた箇所を見た。そこには何もいなかった。
背後から、
「親父。あいつ、スピードなら俺らに勝てると思っている見たいだぜ。ヒャヒャヒャ」、「息子よ。なんと愚かなことだろうな。パワーもスピードも我らの方が上だ」
先代の竜王は、憑依状態の影響で、息子と同時に喋る。まるで腹話術でもしているようだ。(二個目の「」内が父親の台詞です)
俺は背後を振り向いた。さっきまで俺がいた空中に先代の竜王がいるのだ。あいつは少年漫画の強敵のように、一瞬で俺の背後をとって攻撃を加えたのだろう。
「バカなっ! その巨体で俺の背後に回り込んだのかっ?」
俺は空中にいる巨竜に向かって声を飛ばす。すると、一瞬で巨竜は俺の視界から消えた。神隠しにでもあったみたいに一瞬で消えた。
そして、俺のすぐ背後から臭い息と共に、
「その通りだ」、「その通りだ」
一瞬で俺の背後を取った先代の竜王は、容赦無く俺の体に攻撃を加えた。
「ぐわっ!」
俺は吹っ飛ばされて地面を幾度か転がった。裂けた皮膚からは鮮血が滲んでいる。
ドラゴンナイト状態でこんなに痛むのか?
全身を激しい痛みが覆い尽くしている。痛みの嵐が肌の上に張り付いて離れない。
「ヒャヒャヒャヒャ! あいつもう死んだな」、「不意打ちも人質も闇討ちも必要がないな!」
先代の竜王は、不気味な笑い声を空にこぼした。
スピードでは勝てない。パワーではなおさら勝てない。さあどうする? どうすれば勝てる?
俺は体制を立て直した。
「ヒャヒャ! あいつまだ諦めていないのか?」、「哀れだな」
先代の竜王は完全に油断している。俺のことをいたぶるつもりだ。とどめを刺さずに、圧倒的な力を見せつけたいのだろう。
もし、俺がこの力の差を感じつつ、果敢に挑んでいったらどうなる? きっと俺は負けるだろう。だが、この世界では力が全て。
諦めない者にだけ、勝機は訪れる。現竜王と戦った時も、さっきも諦めなかったから俺はピンチを切り抜けられた。
きっと今もできる。
この劣勢の状態のままあいつに挑めば、いずれは俺も竜状態の第三段階に到達できるはず。
そこまでいけばまだ勝機はある!
俺は勇気の炎を胸に燃え上がらせた。爆熱の火炎が胸骨から溢れそうだ。
「うおおおおおおおお!」
恐怖を塗りつぶすのは、カラ元気。大声を出して神経をごまかす。俺は怖くなんかない。
例え相手が俺よりも強くても、例え勝つことが不可能でも、百パーセント俺が負けるとしても、俺は決して諦めない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる