この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜

大和田大和

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勇気の炎

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まず俺は地面を蹴って、空に逃げた。体格差が圧倒的すぎる。だからスピードで勝負する。俺は渾身の力を翼に込めた。翼膜が空圧で剥がされそうだ。筋肉がブチギレて、血が出るほど力を込めた。

勝負は短期決戦。スピードで翻弄して、なんとか隙を見つける。そして、ドラゴンバズーカ(体当たり)で首、心臓、肺のどれかを破壊する。即死させなければまず俺に勝機はない。これが唯一の勝ち筋だ。

俺が空中に飛び上がった瞬間、俺は地面にぶつかった。

「ぐがあっ! なんだっ? 何が起きたっ?」
俺はふらつく頭をすぐに回転させた。周囲の様相を素早く視神経から脳に伝える。
「ここは俺がさっきまで立っていた地面の上?  何がどうなっている?」
俺はさっきまで先代竜王がいた箇所を見た。そこには何もいなかった。


背後から、
「親父。あいつ、スピードなら俺らに勝てると思っている見たいだぜ。ヒャヒャヒャ」、「息子よ。なんと愚かなことだろうな。パワーもスピードも我らの方が上だ」
先代の竜王は、憑依状態の影響で、息子と同時に喋る。まるで腹話術でもしているようだ。(二個目の「」内が父親の台詞です)

俺は背後を振り向いた。さっきまで俺がいた空中に先代の竜王がいるのだ。あいつは少年漫画の強敵のように、一瞬で俺の背後をとって攻撃を加えたのだろう。
「バカなっ! その巨体で俺の背後に回り込んだのかっ?」

俺は空中にいる巨竜に向かって声を飛ばす。すると、一瞬で巨竜は俺の視界から消えた。神隠しにでもあったみたいに一瞬で消えた。

そして、俺のすぐ背後から臭い息と共に、
「その通りだ」、「その通りだ」
一瞬で俺の背後を取った先代の竜王は、容赦無く俺の体に攻撃を加えた。



「ぐわっ!」
俺は吹っ飛ばされて地面を幾度か転がった。裂けた皮膚からは鮮血が滲んでいる。
ドラゴンナイト状態でこんなに痛むのか?

全身を激しい痛みが覆い尽くしている。痛みの嵐が肌の上に張り付いて離れない。

「ヒャヒャヒャヒャ! あいつもう死んだな」、「不意打ちも人質も闇討ちも必要がないな!」
先代の竜王は、不気味な笑い声を空にこぼした。
スピードでは勝てない。パワーではなおさら勝てない。さあどうする? どうすれば勝てる?
俺は体制を立て直した。

「ヒャヒャ! あいつまだ諦めていないのか?」、「哀れだな」

先代の竜王は完全に油断している。俺のことをいたぶるつもりだ。とどめを刺さずに、圧倒的な力を見せつけたいのだろう。
もし、俺がこの力の差を感じつつ、果敢に挑んでいったらどうなる? きっと俺は負けるだろう。だが、この世界では力が全て。

諦めない者にだけ、勝機は訪れる。現竜王と戦った時も、さっきも諦めなかったから俺はピンチを切り抜けられた。
きっと今もできる。
この劣勢の状態のままあいつに挑めば、いずれは俺も竜状態の第三段階に到達できるはず。
そこまでいけばまだ勝機はある!


俺は勇気の炎を胸に燃え上がらせた。爆熱の火炎が胸骨から溢れそうだ。
「うおおおおおおおお!」
恐怖を塗りつぶすのは、カラ元気。大声を出して神経をごまかす。俺は怖くなんかない。


例え相手が俺よりも強くても、例え勝つことが不可能でも、百パーセント俺が負けるとしても、俺は決して諦めない。
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