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しおりを挟むライナルトに氷鏡が示す、白いモヤと黄金色の光が何を意味するか伝える。そして、番に関して分かることがないと正直に伝えると、ライナルトは「なるほど…………」と呟くと、氷鏡に浮かぶ光と同じ黄金色の瞳を伏せる。
混乱するのも無理はない。
番に関しては何も分からないけれど、未来には幸運が約束されてるなんてライナルト様が望んでいた答えではないもの。自分の不甲斐なさに嫌になる。
何か見落としていないか氷鏡を見ても、先程と同じ白いモヤと黄金色の光が絡み合っているだけだ。
占いの結果について考えているのか、しばらくの沈黙の末、ライナルトは伏せていた視線を上げ口を開く。
「理解しました」
「お力になれずごめんなさい」
なぜかすっきりとした顔で言うライナルトに、私は申し訳なさに謝罪すると。
ライナルトは不思議そうに首を傾げた。
「なぜ謝るのですか?理性と知性を失うことはことがないと分かっただけでも私にとって、とても重要なことです」
「ありがとうございます……」
ライナルト様も番のことが分からなくて不安なはずなのに。
優しい言葉に心からの感謝を口にすると。
「ですが……、番を見つけるのは私の未来を左右するとても大切なことに変わりはありません。番を探すのを手伝ってくれますか?」
「もちろんです」
獣人ではない私には番の大切さは分からないけれど、獣人にとって自分の命より番は大切だと聞く。
ライナルト様の長い未来には幸運と成功が待っている。獣人であるライナルト様の幸運と成功。それはつまり、番に出会い運命を共にすること。
大丈夫。まだ私に出来ることはある。
私の言葉にライナルトはホッと安心したように微笑んだ。
「改めてこれからもよろしくお願いします」
そう言って差し出されたライナルトの手を握ると、氷鏡の模様が何かに反応するように不安定に揺れ動いていた――。
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