6 / 10
6:一人
しおりを挟む首元には首輪。腕にはベッドと手枷を繋ぐ鎖で繋がれた不自由な身体。
開かない窓に外側から鍵のかかった扉。
必要最低限の物が取り揃えられたこの部屋で、レオンは一人退屈な時間を過ごしていた。
この部屋を訪ねてくるのは、定期的に食事を運んでくるマルセルの騎士であるハイネケンだけ。
主人であるマルセルが側にいないとハイネケンは、レオンが話しかけたら口数少なく話すだけ。
話し相手には不十分な寡黙な騎士としか顔を合わせない毎日に、レオンは飽き飽きとしていた。
「あいつは何をしているんだ」
あいつとはレオンを誘拐し、この部屋に閉じ込めたマルセルのこと。
ベッドに横たわり、レオンは自分を部屋に閉じ込めた犯人であるマルセルのことを思い浮かべて、恨めしそうに呟いた。
レオンは一人。この部屋でマルセルがやって来るのを待っていた。
最後にマルセルと話したのは五日前。誘拐されて二日目に会ったのが最後。
こんなところに閉じ込めて首輪まで付けたかと思ったら、三日目から放置するマルセルに、レオンは苛立ちを覚えていた。
これだから金持ちのボンボンは嫌なんだ。
『僕のモノになってください』と言っておきながら、会いに来るどころか世話をしようともしない。
三日目まではマルセルと顔を合わせなくていいとせいせいしていたレオンだったが、四日目を過ぎた日から何もすることがない毎日に、首輪と腕に付けられた鎖を見るたび苛立ちを覚えだした。
身体を起こしてベッドのふちに座って、レオンは代わり映えのない窓の外を眺める。
この窓からは屋敷に出入りする人を一瞬だが、見ることができる。
屋敷を出て行くマルセルの後ろ姿を見てから、屋敷に帰って来ていないマルセルの姿を追って、レオンは無意識に窓の外を見ていた。
もしかしたら、自分が寝ている時に帰ってきてるのかもしれない。だが、そうだとしたどうしてあいつは……。
次に続く言葉にレオンは舌打ちをして、拳をベッドに叩きつける。
クソッ。これだと俺が帰りを待っているみたいじゃねぇか。
俺はただこの部屋から出たいだけ。あいつの帰りを待っているわけじゃない。
誘拐犯の帰りを待っているなんて……、そんなのは気狂いのすること。俺は主人がいないとろくに喋ろうとしない堅物に飽き飽きしてるだけだ。
前髪をクシャッと掴み、レオンは部屋を去る時のマルセルの意地悪な笑顔を思い出していた。
応援ありがとうございます!
28
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる