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1.嫌われ公女は諦める
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公爵令嬢ナディアは今日、二度目の人生を諦めた。
第二王子であるイサークに婚約破棄を告げられた瞬間、周囲の視線が一斉に突き刺さる。
ナディアは涙を必死に耐え、アメジストの瞳をまっすぐ婚約者に向けた。
婚約破棄の原因は、イサーク様の友人である令嬢をいじめたから。
身に覚えのない行為で批判され、口を開こうとすると。
「やっぱりね」「なんとはしたない」「公爵家の嫌われ者」
――嘲笑の声が学園の広場に響く。
努力した。笑顔を振りまき、完璧な令嬢であろうとした。
なのに、誰も私の言葉に耳を傾けず、好きになってくれなかった。
広場の騒ぎを静かに見守る、兄ルペルトと視線が合う。
お兄様は私がそんなことしないと信じてくれるはず。
友人でもあるイサーク様にも、誤解だと言ってくれるかもしれない。
ルペルトのもとに駆け寄り「お兄様ーー」手を伸ばすと。
冷たい音と共に、手を振り払われる。
ジンジンと痛む手。
驚きで声も出せずにいると。
「俺は馬車で帰る。お前は一人で帰れ」
冷たい言葉と共に、ルペルトはナディアに背中を向けて去って行ってしまう。
どうして?
お兄様は信じてくれると思ったのに。
その光景を周囲は笑みを深めて、冷たい言葉を囁く。
「お可哀想なナディア様」
そう言ったのはナディアがいじめたとされる、イサークの友人である令嬢。
婚約者にも捨てられ、兄にも捨てられたナディアにはその声は届かなかった。
家に着いたのは、外が真っ暗になった時間だった。
本来なら、ルペルトとナディアは同じ馬車で帰ることになっている。
兄が先に帰ったため、ナディアは平民たちが使う乗合の馬車で帰るしかなかった。
だから、こんな遅い時間に帰ることになったのに、帰宅したナディアを兄は冷たい視線で見つめる。
「父上には俺から話しておいた。これ以上騒ぎを起こして、父上を煩わせるな」
夜遅くに帰った妹に心配の言葉もなく、吐き捨てられる棘のある言葉。
ナディアは悲しみで涙が止まらず、夜ご飯も食べずに部屋に引きこもる。
ーー前世の記憶が蘇ったのは、そんな絶望の夜だった。
これは乙女ゲームの世界。
私は攻略対象の婚約者で悪役令嬢。
攻略対象の愛を求めて、ヒロインとの恋を阻めば破滅エンド確定の存在。
愛されたいと望んだら破滅エンド確定なんて、なんという皮肉だろう。
……だったら、もういい。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
鏡に映る泣きはらした自分の顔に、そう呟いた。
涙は枯れた。
代わりに、胸の奥がスッと軽くなった。
――その瞬間から、世界が少しずつ、狂い始めた。
第二王子であるイサークに婚約破棄を告げられた瞬間、周囲の視線が一斉に突き刺さる。
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身に覚えのない行為で批判され、口を開こうとすると。
「やっぱりね」「なんとはしたない」「公爵家の嫌われ者」
――嘲笑の声が学園の広場に響く。
努力した。笑顔を振りまき、完璧な令嬢であろうとした。
なのに、誰も私の言葉に耳を傾けず、好きになってくれなかった。
広場の騒ぎを静かに見守る、兄ルペルトと視線が合う。
お兄様は私がそんなことしないと信じてくれるはず。
友人でもあるイサーク様にも、誤解だと言ってくれるかもしれない。
ルペルトのもとに駆け寄り「お兄様ーー」手を伸ばすと。
冷たい音と共に、手を振り払われる。
ジンジンと痛む手。
驚きで声も出せずにいると。
「俺は馬車で帰る。お前は一人で帰れ」
冷たい言葉と共に、ルペルトはナディアに背中を向けて去って行ってしまう。
どうして?
お兄様は信じてくれると思ったのに。
その光景を周囲は笑みを深めて、冷たい言葉を囁く。
「お可哀想なナディア様」
そう言ったのはナディアがいじめたとされる、イサークの友人である令嬢。
婚約者にも捨てられ、兄にも捨てられたナディアにはその声は届かなかった。
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本来なら、ルペルトとナディアは同じ馬車で帰ることになっている。
兄が先に帰ったため、ナディアは平民たちが使う乗合の馬車で帰るしかなかった。
だから、こんな遅い時間に帰ることになったのに、帰宅したナディアを兄は冷たい視線で見つめる。
「父上には俺から話しておいた。これ以上騒ぎを起こして、父上を煩わせるな」
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ナディアは悲しみで涙が止まらず、夜ご飯も食べずに部屋に引きこもる。
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……だったら、もういい。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
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代わりに、胸の奥がスッと軽くなった。
――その瞬間から、世界が少しずつ、狂い始めた。
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