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地面に熱が集まるのを察知して高く跳躍する。
ほとんど同時についさっき俺がいたところからマグマが間欠泉のように噴き出した。
「危ねぇっ!!」
「ちっ、避けられたか」
残念そうに舌打ちしたのは金髪碧眼の美青年だった。
俺は空中で紐が切れて纏わりつく、魔族と魔王の印でもある黒髪をととのえてから、
「少しは加減しろっ!! 近くには今代の勇者達もいるんだぞっ!!」
するとこの美青年はさして興味なさげに、
「ああ、そうでしたね」
淡々と呟き、後方をちら、と見た。
向こうには魔王である俺を討つべく選出された勇者達が呆然とした表情でこちらを見ていた。
(というかまだ言ってなかったのか)
五年前、魔王に不本意にも転生してしまった俺が情報収集のために、人間達の街へ行ったときこいつは前世の知識を上手く使って勇者一行の手伝いとして紛れ込みやがった。
(おまけに俺まで騙しやがって)
俺は空中で剣を持ち直す。
「ったく。何が剣を見たいから、だ。人を騙しやがって」
「貴方、魔王ですよね」
まあ、そういうところも好きですが。
続けられた言葉は俺の胸を抉るには充分だった。
「ふざけるなっ!!」
俺は知っている。
その言葉は俺に向けられたものではないことを。
――その昔、まだ目の前のこいつが正式な勇者だった頃、俺からしたら先代の魔王と恋仲だったらしい。
だが、もちろんそんなもの実るハズもなく。
先代の魔王は討たれ、勇者であったこいつはどさくさに紛れて始末されたらしい。
「どうしても信じて貰えませんか」
せつなげな眼差しはかなり蠱惑的だったが、俺の前世は先代魔王ではない。
(これは俺が受け取るべきものではない)
そう思い知らされる度、心の奥がひどく苦しくなるが魔王にそんなものあるはずもなく。
「俺は先代の魔王ではない」
目の前の双眸が悲し気に曇るが、そこはぐっと堪え、
「俺はお前に討たれるつもりはない」
わざと反対のことを言ってやる。
魔王は勇者の剣で倒される存在。
世界の理に逆らうのは至難の業だ。
だけど。
(こいつに俺がしてやれるのはこれ位しかない)
俺は一世一代の勝負に出た。
こちらの世界の力ある存在、がダル神と取り引きをしたのだ。
消失した先代魔王を戻してほしい、と。
もちろん、そのためなら何でもする。
そう告げるとがダル神は交換条件を出した。
一つの世界に二人の魔王は存在を許されない。
だから俺が勇者の剣で討たれ、消失したなら先代魔王を次代の魔王として復活させよう、と。
俺はすぐに是、と答えた。
意外だったのだろう。
何度かそれでいいのか、と聞かれただもちろん俺の返答が変わるはずもなく。
ほんとに。
――どうしてこんなんなっちまったんだろうなあ。
ほとんど同時についさっき俺がいたところからマグマが間欠泉のように噴き出した。
「危ねぇっ!!」
「ちっ、避けられたか」
残念そうに舌打ちしたのは金髪碧眼の美青年だった。
俺は空中で紐が切れて纏わりつく、魔族と魔王の印でもある黒髪をととのえてから、
「少しは加減しろっ!! 近くには今代の勇者達もいるんだぞっ!!」
するとこの美青年はさして興味なさげに、
「ああ、そうでしたね」
淡々と呟き、後方をちら、と見た。
向こうには魔王である俺を討つべく選出された勇者達が呆然とした表情でこちらを見ていた。
(というかまだ言ってなかったのか)
五年前、魔王に不本意にも転生してしまった俺が情報収集のために、人間達の街へ行ったときこいつは前世の知識を上手く使って勇者一行の手伝いとして紛れ込みやがった。
(おまけに俺まで騙しやがって)
俺は空中で剣を持ち直す。
「ったく。何が剣を見たいから、だ。人を騙しやがって」
「貴方、魔王ですよね」
まあ、そういうところも好きですが。
続けられた言葉は俺の胸を抉るには充分だった。
「ふざけるなっ!!」
俺は知っている。
その言葉は俺に向けられたものではないことを。
――その昔、まだ目の前のこいつが正式な勇者だった頃、俺からしたら先代の魔王と恋仲だったらしい。
だが、もちろんそんなもの実るハズもなく。
先代の魔王は討たれ、勇者であったこいつはどさくさに紛れて始末されたらしい。
「どうしても信じて貰えませんか」
せつなげな眼差しはかなり蠱惑的だったが、俺の前世は先代魔王ではない。
(これは俺が受け取るべきものではない)
そう思い知らされる度、心の奥がひどく苦しくなるが魔王にそんなものあるはずもなく。
「俺は先代の魔王ではない」
目の前の双眸が悲し気に曇るが、そこはぐっと堪え、
「俺はお前に討たれるつもりはない」
わざと反対のことを言ってやる。
魔王は勇者の剣で倒される存在。
世界の理に逆らうのは至難の業だ。
だけど。
(こいつに俺がしてやれるのはこれ位しかない)
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消失した先代魔王を戻してほしい、と。
もちろん、そのためなら何でもする。
そう告げるとがダル神は交換条件を出した。
一つの世界に二人の魔王は存在を許されない。
だから俺が勇者の剣で討たれ、消失したなら先代魔王を次代の魔王として復活させよう、と。
俺はすぐに是、と答えた。
意外だったのだろう。
何度かそれでいいのか、と聞かれただもちろん俺の返答が変わるはずもなく。
ほんとに。
――どうしてこんなんなっちまったんだろうなあ。
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