魔王に転生したら、前の勇者が迫って来たけど魔王違いで、なのにうっかり惚れて二人の仲取り持とうとしたバカな俺の話する?

神崎 ルナ

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冒険者ランクはクリアしたクエストの内容によって決まる。


難易度の高いクエストをクリアすればする程、ランクは上がるとはいえ、それは生半可なものではなく。


(確か一番上がSSだけど、そんなん、百年に一人の逸材だし、その下のSでさえ、国に数人いるかどうかで)


Aランク冒険者ともなれば、ギルドを任せられてもおかしくない立ち位置のはずで。


俺がそう言うとシュウはわざとらしく肩を竦めた。


「あれ。案外人間界のことに詳しいんですね」


「人外扱いは止めてくれないかなっ!!」

「じゃあ、あなた人間なんですか?」


「ぐっ、」


「そこで詰まったら認めたも同然ですよ」


(その呆れたような視線は止めてほしいんだが)


取り敢えずここに来るまで密かに練っていた設定を口に乗せる。


「俺は魔王様が配下、四天王の一人アスタロトだ。ここへは勇者の情報を探りに来ているが、お前の予想とは違うと思うぞ」


(確か居たな。こんなの)


先々代の魔王から仕えていたという忠臣で、前回の戦いで敗北してからは仮死状態になっているはずだ。


(って。魔王が倒されたら他の魔族は消滅か仮死状態、ってどんだけ人間サイドに有利なんだよ)


だがそれも俺が復活するまでだ。

半月前の俺の復活で、ほとんどの魔族も復活したはずで。


(なら、探し出して合流しても良かったんだけどさ)

先々代の魔王の記憶を浚った俺はがくり、と項垂れた。


(こいつら、濃ゆい)

何というか、あまりにも忠臣めいているのだ。


『魔王様、そこは私めがっ!!』


『魔王様!! 私にお任せをっ!!』


『魔王様、カンザル地方を平定して来ましたぞっ!!』


『魔王様――』




(俺、上手くやっていけるのかなあ)


何というか先回りがしすぎていて、意思疎通に時間がかかっていたような。


(……同じ魔族だよな)


なので今回はできるだけ自分でやってみようと思う。


あいつらが力を取り戻す前に勇者側と和平でも結べたらいいんだが。



「ふうん、てっきりまだ覚醒したばかりの勇者を仕留めにしたと思ったんですが」


キッパリと告げるとうろんげな眼差しが返ってきた。


「うーん、何かかつてのアスタロトとは随分違うような気がするんですよね」


「どういうことだ?」



「まあいずれ分かることだから話しておきましょうか。僕は転生者で先代勇者のパーティの従者をしていたんですよ」





「はああああっ!?」





ひとつの国どころか、世界を滅する程の力を持つ魔王。


勇者がいるとはいえ、わずか数人のパーティで成せるというのは早計で。


勇者達を鍛えている間、各国の軍は対魔王軍用に再編成される。


何しろ、魔王領には膨大な資源が眠っているのだ。


代々の魔王討伐からこの事実を把握している者達は即座に動いた。

そのかいあって勇者によって魔王が討たれた後、潤沢な資源を手にすることが出来、これ以降各国が協力して事にあたることになる。


だが、その上位を占めるのはほとんどが貴族で、勇者パーティの従者もそれに準じたはずだが。


(うーん、従者って確かきちんと世話をのと、ほとんど何もしないのがいたような気がしたんだが)


相変わらず先代の魔王の記憶は曖昧な箇所が多いが、一応勇者パーティの従者達の顔を思い浮かべてみる。


(こんなの、いたか?)


まあ顔立ちは違っているだろうが、上位の魔族を前にしてこれほど肝が据わっている従者など思い当たらない。


「あの討伐にいたのか?」


思わず聞くと首を振られた。


「僕は後方支援でしたから」

そうそう、僕が転生者というのは内緒にしておいて下さいね。


そう続けれて俺は嫌な予感がした。


「何が望みだ」

「やだなあ。身構えないで下さいよ。別にそう大したことじゃないですから」


古今東西、『大したことではない』と言われてそのとおりだったことがあっただろうか。



「何だ?」


「あのですね――」


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