悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ

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24.魔の森③

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「ウィンド・シールドッ!!」


絡みつこうと寄ってくる蔦をウィンド・シールドで防ぐ。

翌日、あたしはこの間のオークと対峙していた。


『ああ、君が倒したオーク? たぶん今ごろは元に戻ってるんじゃないかな。君、魔石取り出さなかったでしょ?』


(うわー、すっかり忘れてた)


『この森の土には魔素がふんだんに含まれているからね。オークくらいなら半日で再生するよ』


その言葉通り、この間あたしが焼け野原と変えてしまった一帯はすっかり元通りになっていた。

(ほんとに魔物って)

弾かれた蔦は思案するように空中に留まっていたが、次の瞬間、襲い掛かってきた。


「――フライ」

飛翔の魔法を自分にかけ、一気にオークの前へ出る。

そしてラインに貰った黒縁眼鏡を外し、オークの顔らしきものと相対する。


「チャーム」

あたしの『魅了』は相手としっかり目を合わせることによって発動するらしい。


(そう言えばお願い事とか聞いてほしいとき、じぃーと見てたなあ。この娘)


もはや乾いた笑いしか出てこないが、発動条件が分かったのは助かる。




『それじゃあ、これをあげるよ』


と貰ったのがこの黒縁眼鏡。


『視線を遮る、ということと、君の場合無意識にやっているものもあるみたいだから、『魅了』そのものを無効にする呪いも掛けておいたよ』


(え、ちょっと待ってっ!? そんなことできるのかなり上級の魔法使いなんじゃっ!?)


付与魔法がついた武具はかなり値が張ると聞く。

(それなのに、ただの生活用品にさらっ、と使っちゃったよ、この人)


魅了を食らったオークの動きが止まる。

「よーし、いい子。そのまま『動くな』」

あとは簡単。

ラインから新しく貰った火打ち石で火を着けるだけ。


(ん? 火魔法? 爪の先くらいの火なら出せるようになりましたよ。МP半分以上使って。白目)


『うーん。ここまで相性が悪いのも珍しいなあ』


(いいもん。風魔法と水魔法があるから)

幸い、あたしにとってこの二つの魔法はМP消費量が少ないらしい。


あの時、ウィンドカッターを無駄遣いしても何とかなったのは、このことが大きいらしいけれど、滅多なことではしないように、と言われてしまった。


『いいかい? МP切れを回復するには回復薬を飲むか、ひたすら休むしかないんだよ。君はこれから先、ひとりで行くんだろう?』

その通り。

パーティを組んでいるならともかく、リスクが大きすぎる。


「さて、と」


思案にくれている間に丸焼けになったオークの残骸を丹念に見ていく。

(何か炭ばっかり。……あ、これかな?)


爪先でつつくと、何か固いものが現れた。


それは濃い緑色をした小石に見えたが、拾い上げると重かった。

(うん。魔力も感じる。これだ)


持って帰ってラインに見せると、


「よかったね。これでオークにも対応できるようだし、明日にも出発できそうだね」

「はい、師匠」


「だからそれは……まあ、いいか。お使い頼んだし」


浮かれていたあたしは、ラインの思わせぶりな台詞を聞き逃してしまったことに気付かなかった。



翌朝、黒縁眼鏡に頭からすっぽりローブを被った姿であたしはラインに礼を述べていた。


「何から何までありがとうございました。このご恩は忘れません」

「そんなたいしたことじゃないよ。そろそろ魔物避けの札を出した方がいいよ。ああ、それと……」


(うん。この感じ、昔どこかで――)

「……お母さん」

「誰がお母さん? というか性別変わってるよねっ!?」



わちゃわちゃしながら街道まで出ると、

「ここを南へ真っ直ぐ行くとお昼前にはザイーツに着くから」

「うん。本当にありがとう」


ザイーツはトレニア国の国境付近にある街で冒険者ギルドと、何とダンジョンまで存在する。


「ああ。そうだ、これ」

ラインが懐から何かを取り出した。


「これは俺特製の、まあ魔法の粉、ってところかな?」

本当に困ったときに使いなさい、と渡されて、


「え、いいんですか?」

「いろいろと手伝って貰ったしね。この粉のことは滅多に話さないように」

あたしは強く頷いて、いとまを告げた。


「それじゃあ、もう行きますね。あ、お使いもしておきますから」


(ギルドの知り合いって人に手紙を渡して、ゼントの街にいる料理人のテオさんに言付けを伝えればいいだけだものね)


急がなくてもいいと言われてもいたので、あたしは軽く考えていた。


「じゃあ、気を付けて」

「はい。師匠も」


のんびりと歩き出したあたしは、これから自分が台風の目に関わることになるなんて微塵みじんも思っていなかった。


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