24 / 73
24.魔の森③
しおりを挟む
「ウィンド・シールドッ!!」
絡みつこうと寄ってくる蔦をウィンド・シールドで防ぐ。
翌日、あたしはこの間のオークと対峙していた。
『ああ、君が倒したオーク? たぶん今ごろは元に戻ってるんじゃないかな。君、魔石取り出さなかったでしょ?』
(うわー、すっかり忘れてた)
『この森の土には魔素がふんだんに含まれているからね。オークくらいなら半日で再生するよ』
その言葉通り、この間あたしが焼け野原と変えてしまった一帯はすっかり元通りになっていた。
(ほんとに魔物って)
弾かれた蔦は思案するように空中に留まっていたが、次の瞬間、襲い掛かってきた。
「――フライ」
飛翔の魔法を自分にかけ、一気にオークの前へ出る。
そしてラインに貰った黒縁眼鏡を外し、オークの顔らしきものと相対する。
「チャーム」
あたしの『魅了』は相手としっかり目を合わせることによって発動するらしい。
(そう言えばお願い事とか聞いてほしいとき、じぃーと見てたなあ。この娘)
もはや乾いた笑いしか出てこないが、発動条件が分かったのは助かる。
『それじゃあ、これをあげるよ』
と貰ったのがこの黒縁眼鏡。
『視線を遮る、ということと、君の場合無意識にやっているものもあるみたいだから、『魅了』そのものを無効にする呪いも掛けておいたよ』
(え、ちょっと待ってっ!? そんなことできるのかなり上級の魔法使いなんじゃっ!?)
付与魔法がついた武具はかなり値が張ると聞く。
(それなのに、ただの生活用品にさらっ、と使っちゃったよ、この人)
魅了を食らったオークの動きが止まる。
「よーし、いい子。そのまま『動くな』」
あとは簡単。
ラインから新しく貰った火打ち石で火を着けるだけ。
(ん? 火魔法? 爪の先くらいの火なら出せるようになりましたよ。МP半分以上使って。白目)
『うーん。ここまで相性が悪いのも珍しいなあ』
(いいもん。風魔法と水魔法があるから)
幸い、あたしにとってこの二つの魔法はМP消費量が少ないらしい。
あの時、ウィンドカッターを無駄遣いしても何とかなったのは、このことが大きいらしいけれど、滅多なことではしないように、と言われてしまった。
『いいかい? МP切れを回復するには回復薬を飲むか、ひたすら休むしかないんだよ。君はこれから先、ひとりで行くんだろう?』
その通り。
パーティを組んでいるならともかく、リスクが大きすぎる。
「さて、と」
思案にくれている間に丸焼けになったオークの残骸を丹念に見ていく。
(何か炭ばっかり。……あ、これかな?)
爪先でつつくと、何か固いものが現れた。
それは濃い緑色をした小石に見えたが、拾い上げると重かった。
(うん。魔力も感じる。これだ)
持って帰ってラインに見せると、
「よかったね。これでオークにも対応できるようだし、明日にも出発できそうだね」
「はい、師匠」
「だからそれは……まあ、いいか。お使い頼んだし」
浮かれていたあたしは、ラインの思わせぶりな台詞を聞き逃してしまったことに気付かなかった。
翌朝、黒縁眼鏡に頭からすっぽりローブを被った姿であたしはラインに礼を述べていた。
「何から何までありがとうございました。このご恩は忘れません」
「そんなたいしたことじゃないよ。そろそろ魔物避けの札を出した方がいいよ。ああ、それと……」
(うん。この感じ、昔どこかで――)
「……お母さん」
「誰がお母さん? というか性別変わってるよねっ!?」
わちゃわちゃしながら街道まで出ると、
「ここを南へ真っ直ぐ行くとお昼前にはザイーツに着くから」
「うん。本当にありがとう」
ザイーツはトレニア国の国境付近にある街で冒険者ギルドと、何とダンジョンまで存在する。
「ああ。そうだ、これ」
ラインが懐から何かを取り出した。
「これは俺特製の、まあ魔法の粉、ってところかな?」
本当に困ったときに使いなさい、と渡されて、
「え、いいんですか?」
「いろいろと手伝って貰ったしね。この粉のことは滅多に話さないように」
あたしは強く頷いて、暇を告げた。
「それじゃあ、もう行きますね。あ、お使いもしておきますから」
(ギルドの知り合いって人に手紙を渡して、ゼントの街にいる料理人のテオさんに言付けを伝えればいいだけだものね)
急がなくてもいいと言われてもいたので、あたしは軽く考えていた。
「じゃあ、気を付けて」
「はい。師匠も」
のんびりと歩き出したあたしは、これから自分が台風の目に関わることになるなんて微塵も思っていなかった。
絡みつこうと寄ってくる蔦をウィンド・シールドで防ぐ。
翌日、あたしはこの間のオークと対峙していた。
『ああ、君が倒したオーク? たぶん今ごろは元に戻ってるんじゃないかな。君、魔石取り出さなかったでしょ?』
(うわー、すっかり忘れてた)
『この森の土には魔素がふんだんに含まれているからね。オークくらいなら半日で再生するよ』
その言葉通り、この間あたしが焼け野原と変えてしまった一帯はすっかり元通りになっていた。
(ほんとに魔物って)
弾かれた蔦は思案するように空中に留まっていたが、次の瞬間、襲い掛かってきた。
「――フライ」
飛翔の魔法を自分にかけ、一気にオークの前へ出る。
そしてラインに貰った黒縁眼鏡を外し、オークの顔らしきものと相対する。
「チャーム」
あたしの『魅了』は相手としっかり目を合わせることによって発動するらしい。
(そう言えばお願い事とか聞いてほしいとき、じぃーと見てたなあ。この娘)
もはや乾いた笑いしか出てこないが、発動条件が分かったのは助かる。
『それじゃあ、これをあげるよ』
と貰ったのがこの黒縁眼鏡。
『視線を遮る、ということと、君の場合無意識にやっているものもあるみたいだから、『魅了』そのものを無効にする呪いも掛けておいたよ』
(え、ちょっと待ってっ!? そんなことできるのかなり上級の魔法使いなんじゃっ!?)
付与魔法がついた武具はかなり値が張ると聞く。
(それなのに、ただの生活用品にさらっ、と使っちゃったよ、この人)
魅了を食らったオークの動きが止まる。
「よーし、いい子。そのまま『動くな』」
あとは簡単。
ラインから新しく貰った火打ち石で火を着けるだけ。
(ん? 火魔法? 爪の先くらいの火なら出せるようになりましたよ。МP半分以上使って。白目)
『うーん。ここまで相性が悪いのも珍しいなあ』
(いいもん。風魔法と水魔法があるから)
幸い、あたしにとってこの二つの魔法はМP消費量が少ないらしい。
あの時、ウィンドカッターを無駄遣いしても何とかなったのは、このことが大きいらしいけれど、滅多なことではしないように、と言われてしまった。
『いいかい? МP切れを回復するには回復薬を飲むか、ひたすら休むしかないんだよ。君はこれから先、ひとりで行くんだろう?』
その通り。
パーティを組んでいるならともかく、リスクが大きすぎる。
「さて、と」
思案にくれている間に丸焼けになったオークの残骸を丹念に見ていく。
(何か炭ばっかり。……あ、これかな?)
爪先でつつくと、何か固いものが現れた。
それは濃い緑色をした小石に見えたが、拾い上げると重かった。
(うん。魔力も感じる。これだ)
持って帰ってラインに見せると、
「よかったね。これでオークにも対応できるようだし、明日にも出発できそうだね」
「はい、師匠」
「だからそれは……まあ、いいか。お使い頼んだし」
浮かれていたあたしは、ラインの思わせぶりな台詞を聞き逃してしまったことに気付かなかった。
翌朝、黒縁眼鏡に頭からすっぽりローブを被った姿であたしはラインに礼を述べていた。
「何から何までありがとうございました。このご恩は忘れません」
「そんなたいしたことじゃないよ。そろそろ魔物避けの札を出した方がいいよ。ああ、それと……」
(うん。この感じ、昔どこかで――)
「……お母さん」
「誰がお母さん? というか性別変わってるよねっ!?」
わちゃわちゃしながら街道まで出ると、
「ここを南へ真っ直ぐ行くとお昼前にはザイーツに着くから」
「うん。本当にありがとう」
ザイーツはトレニア国の国境付近にある街で冒険者ギルドと、何とダンジョンまで存在する。
「ああ。そうだ、これ」
ラインが懐から何かを取り出した。
「これは俺特製の、まあ魔法の粉、ってところかな?」
本当に困ったときに使いなさい、と渡されて、
「え、いいんですか?」
「いろいろと手伝って貰ったしね。この粉のことは滅多に話さないように」
あたしは強く頷いて、暇を告げた。
「それじゃあ、もう行きますね。あ、お使いもしておきますから」
(ギルドの知り合いって人に手紙を渡して、ゼントの街にいる料理人のテオさんに言付けを伝えればいいだけだものね)
急がなくてもいいと言われてもいたので、あたしは軽く考えていた。
「じゃあ、気を付けて」
「はい。師匠も」
のんびりと歩き出したあたしは、これから自分が台風の目に関わることになるなんて微塵も思っていなかった。
20
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる