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48.メ*ーさんのひつじ
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「――来ちゃだめだよっ!!」
頭からウツボカズラの袋を被る形になったラインの声がくぐもりながら聞こえたけど、これってどうするべきっ!?
(火魔法はダメだしっ!! 凍らせる? ってラインも凍るがなっ!! あとは……)
脳内会議が紛糾しているなか、ラインを飲み込んだウツボカズラ(大)のお腹(?)からきらり、と光るものが現れた。
その小さなトゲのようなものはたちまちのうちに大きくなり、ラインが持っていた小刀だと分かる。
(あ、そう言えばそうだった)
見ているとウツボカズラ(大)のお腹(?)をサクッと切り開いてラインが現れた。
「様にならないなあ。水もしたたる、っていうよりこれ、粘液だしね」
(うわああぁっ!! 良かったぁっ!)
「ライン、ケガとかない?」
ほっとして近寄りながら聞くと、何故かラインは二歩下がった。
「……ライン?」
「あー。悪いけど、少し離れてくれないかな?」
「……?」
あたしがその指示に従うとラインは微妙な表情をしていた。
「実はね、このローブはありとあらゆる攻撃に耐えられるように加工してあるんだけど。今回はそっちに頼りすぎたみたいだね」
「ライン?」
こほん、と咳払いをしたラインはあらぬ方を向いた。
「つまりこのウツボカズラの粘液は、人や物を溶かすんだけど、遅効性でね。その辺りは俺もうっかりしていたんだけど」
そこで困ったように下を見る。
「ちょっ、ライン、まさかそのローブの下――」
「ああもう!! 察しのいい子は苦手だよっ!! 着替えるから、後ろを向いていてくれないかなっ!!」
(こんなサービスタイム、いらんがなーっ!!)
(ひつじが十匹、ひつじが……)
(メ*ーさんのひつじ、ひつじ~~)
頭の中でひつじさん達を数えながら、BGMに『メ*ーさんのひつじ』を流す、という難題に取り掛かっていると、
「……終わったよ。聞こえてるかな?」
恐る恐るというふうにラインが声を掛け、あたしは顔に当てていた両手を下ろして振り返った。
「まさかここでこんな目に遭うとはね」
(いやもう、これ乙女ゲーム? って展開だったわ)
ラインの様子を見た限り、体までは溶かされてはいなかったようだ。
「四十三層まで行くと最後の近道があるから急ぐよ」
(え?)
どうしてそんなに急ぐんだろう。
ダンジョンには魔物が棲息しているのだ。
おまけにパーティはあたしとラインのふたりだけ。
(普通、こういう時はもっと慎重に行くんじゃ……)
そう思って聞くと、
「そうだね。一応足止めは頼んであるけど、もともと彼はフローズン公爵令嬢の従僕だよね」
(あー。カサンドラ嬢が問いただした場合、抵抗できないか)
「……ライン。ってことは最初からひとりで来るつもりだったの?」
「……」
(ハイ、正解ですね)
思わずじと目になっていると、
「いやだからね。これ以上は本当に危険なんだよ」
「それで?」
目を逸らしてもだめ、とばかりに回り込む。
「どうせ、あの『世界』ではこの街に『ダンジョン』なんて存在してなかった。これは自分が余計な手回しをした弊害じゃないか、とか思ったんでしょ」
「……」
半分は当てずっぽうだけど、当たってたかな。
(もう。そんなに自分ばっかり責任感じることないじゃない。誰も生まれるところなんて選べないんだから)
そう言ってやると、
「君には敵わないな。責任を感じているのは否定しないけどね」
苦笑したようなラインの声音には以前のように思い詰めたものはなかったけれど。
下の層へと移動を始めたラインが振り返った。
「だけどね、このダンジョン、……見付かったのは二百年程前らしいよ」
「はいっ!?」
どこか楽し気なラインは、どう見ても二十代。
「……賢者になると不老不死、とか言わないですよね?」
「まさか。ああ、魔素を扱う機会が多いと、多少の差異は出るみたいだけどね」
その微妙な言い回しにその時のあたしは気付かなかった。
それよりも、
「分かってたなら、先に言ってよっ!!」
ダンジョン内にあたしの叫びがこだました。
頭からウツボカズラの袋を被る形になったラインの声がくぐもりながら聞こえたけど、これってどうするべきっ!?
(火魔法はダメだしっ!! 凍らせる? ってラインも凍るがなっ!! あとは……)
脳内会議が紛糾しているなか、ラインを飲み込んだウツボカズラ(大)のお腹(?)からきらり、と光るものが現れた。
その小さなトゲのようなものはたちまちのうちに大きくなり、ラインが持っていた小刀だと分かる。
(あ、そう言えばそうだった)
見ているとウツボカズラ(大)のお腹(?)をサクッと切り開いてラインが現れた。
「様にならないなあ。水もしたたる、っていうよりこれ、粘液だしね」
(うわああぁっ!! 良かったぁっ!)
「ライン、ケガとかない?」
ほっとして近寄りながら聞くと、何故かラインは二歩下がった。
「……ライン?」
「あー。悪いけど、少し離れてくれないかな?」
「……?」
あたしがその指示に従うとラインは微妙な表情をしていた。
「実はね、このローブはありとあらゆる攻撃に耐えられるように加工してあるんだけど。今回はそっちに頼りすぎたみたいだね」
「ライン?」
こほん、と咳払いをしたラインはあらぬ方を向いた。
「つまりこのウツボカズラの粘液は、人や物を溶かすんだけど、遅効性でね。その辺りは俺もうっかりしていたんだけど」
そこで困ったように下を見る。
「ちょっ、ライン、まさかそのローブの下――」
「ああもう!! 察しのいい子は苦手だよっ!! 着替えるから、後ろを向いていてくれないかなっ!!」
(こんなサービスタイム、いらんがなーっ!!)
(ひつじが十匹、ひつじが……)
(メ*ーさんのひつじ、ひつじ~~)
頭の中でひつじさん達を数えながら、BGMに『メ*ーさんのひつじ』を流す、という難題に取り掛かっていると、
「……終わったよ。聞こえてるかな?」
恐る恐るというふうにラインが声を掛け、あたしは顔に当てていた両手を下ろして振り返った。
「まさかここでこんな目に遭うとはね」
(いやもう、これ乙女ゲーム? って展開だったわ)
ラインの様子を見た限り、体までは溶かされてはいなかったようだ。
「四十三層まで行くと最後の近道があるから急ぐよ」
(え?)
どうしてそんなに急ぐんだろう。
ダンジョンには魔物が棲息しているのだ。
おまけにパーティはあたしとラインのふたりだけ。
(普通、こういう時はもっと慎重に行くんじゃ……)
そう思って聞くと、
「そうだね。一応足止めは頼んであるけど、もともと彼はフローズン公爵令嬢の従僕だよね」
(あー。カサンドラ嬢が問いただした場合、抵抗できないか)
「……ライン。ってことは最初からひとりで来るつもりだったの?」
「……」
(ハイ、正解ですね)
思わずじと目になっていると、
「いやだからね。これ以上は本当に危険なんだよ」
「それで?」
目を逸らしてもだめ、とばかりに回り込む。
「どうせ、あの『世界』ではこの街に『ダンジョン』なんて存在してなかった。これは自分が余計な手回しをした弊害じゃないか、とか思ったんでしょ」
「……」
半分は当てずっぽうだけど、当たってたかな。
(もう。そんなに自分ばっかり責任感じることないじゃない。誰も生まれるところなんて選べないんだから)
そう言ってやると、
「君には敵わないな。責任を感じているのは否定しないけどね」
苦笑したようなラインの声音には以前のように思い詰めたものはなかったけれど。
下の層へと移動を始めたラインが振り返った。
「だけどね、このダンジョン、……見付かったのは二百年程前らしいよ」
「はいっ!?」
どこか楽し気なラインは、どう見ても二十代。
「……賢者になると不老不死、とか言わないですよね?」
「まさか。ああ、魔素を扱う機会が多いと、多少の差異は出るみたいだけどね」
その微妙な言い回しにその時のあたしは気付かなかった。
それよりも、
「分かってたなら、先に言ってよっ!!」
ダンジョン内にあたしの叫びがこだました。
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