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47.階層の主
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わちゃわちゃしながら(ちなみにセクトルさんは事前に知らされていたみたい。その上でカイン様の護衛も引き受けて貰ったんだとか)ダンジョンの入り口に着き、門番さんに扉を開けて貰った。
「静かですね」
――四十層。
前回来た時と同様、通路内にはところ狭しと蔦が蔓延っているのだけど、どこか勢いがないみたいだった。
あたしは空中をへろへろと伸びて来た蔦をぺしん、と叩き落とした。
「何か、ずいぶんと元気がないんだけど、どうしたんだろ」
「どうやら効いたみたいだね」
「……は?」
思わず、くるりとラインの方を振り返ると、軽く肩を竦めながら教えてくれた。
「さっき小刀を使っただろう。それにちょっとね」
(まさか毒っ!?)
あたしが慄いていると、
「似たようなものかな。植物の成長を阻害する薬を塗っておいたから」
強いていうなら除草剤かな。
(いや、魔物倒すのに除草剤って)
しばらくあたしの頭の中では、三角巾と割烹着を身に着けて除草剤をスプレーしているラインの姿が離れなかった。
奥へ進むにつれ、除草剤()の効き目が薄れるのか、蔦の動きが活発になってきた。
「ここかな」
ラインが太めの茎に小刀を入れると、もがき苦しむようにのた打ち始めた。
「何も、全部凍らせる必要はないんだよ。こうして魔力の補給を絶てばいいんだから」
(いやそれ、見極めるのが難しいんじゃ……)
あたしの脳内突っ込みを余所にラインは小刀を動かし続け、やがて開けた場所へ出た。
(うわあ……)
蔦、蔦、蔦……。
視界に入るものがそれの上に、袋状の花が咲いているのだ。
加えて何やら甘い匂いまでしてくる。
「知ってのとおり、ウツボカズラはこの甘い匂いで獲物を呼び寄せて袋の中で溶かしてしまう。さて、本命はあれみたいだね」
促されてそちらを見ると、奥に居ました。特大のウツボカズラ。
その袋は人が入れるくらいで、うっかり落ちたら出られそうにないように見えた。
おまけにそれは五つもあった。
(ひええっ)
「やはり魔素の影響だね。いつもなら特大のが一つだけなんだけど」
小刀を持ち直しながらラインがあたしを見た。
「さて、どうやってアレを倒す?」
「……その小刀、貸して下さい」
「いいけど、これで袋を支えている茎を切る、っていうのかな?」
「違います」
意外そうな顔をしたラインから小刀を受け取り、大きく振りかぶる。
「あの中にコレを放り込むんですっ!!」
「待って、ちょっと待ってっ!! それだと小刀の無駄遣いになるじゃないかっ!! それに袋は五個あるんだよっ!! 残りはどうするんだいっ!!」
「予備くらいありますよね」
「疑問形じゃないのよそうかっ!? あるけど、五本も無駄にするつもりはないからねっ!!」
(ちっ、ダメか)
「じゃあ、『アイス』で凍らせます」
「悪くはないね。どの辺りをかな?」
「えっと、辺り一面」
そう答えると、ラインの周囲の温度が下がったようだった。
「君ねぇ。魔力の無駄遣いは止めなさい、ってあれほど言ったじゃないか」
言い終えるなり、頭をがしがしと撫で()られた。
「いたいいたいいたいっ!! ――セットが乱れるっ!!」
「そんなに強くはやってないよ。というか、『セット』って。気を抜きすぎじゃないのかい?」
(シリアスがどうの、とか呟いてるみたいだけど、聞こえない聞こえない)
オハナシアイ()の結果、小刀に塗っていたのと同じ薬を『フライ』でウツボカズラの袋の中へ放り込む、ということになったのだけど。
「え!? 蓋が閉じたっ!?」
「どうやら異物と感知されたようだね」
上から飾りだとばかり思っていた蓋がばたん、と降りて口が閉まってしまったのだった。
ラインはしばらく考え込んでいたようだけど、
「気は進まないけど仕方ないな」
魔導具を抱え直して、小刀を二本取り出した。
「君は下がっているように」
そう言われ、入り口付近まで下がると、
「この魔物は普段はひとり(?)で行動するんだよ。そしてこれほど大きいのは一つしかなくてね、自力歩行で襲ってくるんだけど」
(ひええっ!!)
それが獲物を前にこんなに大人しいのはおかしい、とラインが続けた。
「何かあったら君はいったん、上へ戻るように」
そう告げてウツボカズラ(大)へ慎重に近付くライン。
(うーん、上へ戻れって言われてもなあ)
はっきり言ってそのつもりはないので、返事はしないでおく。
「……返事は?」
「う、はい」
(お見通し(白目)
もしそんなことになったら超特急で上へ行って、一瞬だけいたらまた超特急で戻ってやる、とこっそり気合を入れていると、
「何だろう。物凄く不安しかないんだけど」
「気のせいですよ」
「返しが早いっ!!」
そんなことを言っているうちに、ウツボカズラ(大)の根元に着いたラインは小刀をふるって、ウツボカズラ(大)を支えていた茎をスパッと切った。
とたん、ウツボカズラ(大)がくたり、と二つ折りになって倒れたっ!!
「おっと」
倒れかかってくるウツボカズラ(大)を避け、次々と小刀をふるう。
(はやっ!! ってか、こんなに早く済むならもっと早くできたんじゃ)
などと考えていると、最後の一つ(かなり上の方なので大変そう)に手をかけたラインが、
「――しまった」
「え、ええっ!!」
小刀が入った瞬間、最後のウツボカズラ(大)がラインに覆い被さるように倒れ込んで来た。
「静かですね」
――四十層。
前回来た時と同様、通路内にはところ狭しと蔦が蔓延っているのだけど、どこか勢いがないみたいだった。
あたしは空中をへろへろと伸びて来た蔦をぺしん、と叩き落とした。
「何か、ずいぶんと元気がないんだけど、どうしたんだろ」
「どうやら効いたみたいだね」
「……は?」
思わず、くるりとラインの方を振り返ると、軽く肩を竦めながら教えてくれた。
「さっき小刀を使っただろう。それにちょっとね」
(まさか毒っ!?)
あたしが慄いていると、
「似たようなものかな。植物の成長を阻害する薬を塗っておいたから」
強いていうなら除草剤かな。
(いや、魔物倒すのに除草剤って)
しばらくあたしの頭の中では、三角巾と割烹着を身に着けて除草剤をスプレーしているラインの姿が離れなかった。
奥へ進むにつれ、除草剤()の効き目が薄れるのか、蔦の動きが活発になってきた。
「ここかな」
ラインが太めの茎に小刀を入れると、もがき苦しむようにのた打ち始めた。
「何も、全部凍らせる必要はないんだよ。こうして魔力の補給を絶てばいいんだから」
(いやそれ、見極めるのが難しいんじゃ……)
あたしの脳内突っ込みを余所にラインは小刀を動かし続け、やがて開けた場所へ出た。
(うわあ……)
蔦、蔦、蔦……。
視界に入るものがそれの上に、袋状の花が咲いているのだ。
加えて何やら甘い匂いまでしてくる。
「知ってのとおり、ウツボカズラはこの甘い匂いで獲物を呼び寄せて袋の中で溶かしてしまう。さて、本命はあれみたいだね」
促されてそちらを見ると、奥に居ました。特大のウツボカズラ。
その袋は人が入れるくらいで、うっかり落ちたら出られそうにないように見えた。
おまけにそれは五つもあった。
(ひええっ)
「やはり魔素の影響だね。いつもなら特大のが一つだけなんだけど」
小刀を持ち直しながらラインがあたしを見た。
「さて、どうやってアレを倒す?」
「……その小刀、貸して下さい」
「いいけど、これで袋を支えている茎を切る、っていうのかな?」
「違います」
意外そうな顔をしたラインから小刀を受け取り、大きく振りかぶる。
「あの中にコレを放り込むんですっ!!」
「待って、ちょっと待ってっ!! それだと小刀の無駄遣いになるじゃないかっ!! それに袋は五個あるんだよっ!! 残りはどうするんだいっ!!」
「予備くらいありますよね」
「疑問形じゃないのよそうかっ!? あるけど、五本も無駄にするつもりはないからねっ!!」
(ちっ、ダメか)
「じゃあ、『アイス』で凍らせます」
「悪くはないね。どの辺りをかな?」
「えっと、辺り一面」
そう答えると、ラインの周囲の温度が下がったようだった。
「君ねぇ。魔力の無駄遣いは止めなさい、ってあれほど言ったじゃないか」
言い終えるなり、頭をがしがしと撫で()られた。
「いたいいたいいたいっ!! ――セットが乱れるっ!!」
「そんなに強くはやってないよ。というか、『セット』って。気を抜きすぎじゃないのかい?」
(シリアスがどうの、とか呟いてるみたいだけど、聞こえない聞こえない)
オハナシアイ()の結果、小刀に塗っていたのと同じ薬を『フライ』でウツボカズラの袋の中へ放り込む、ということになったのだけど。
「え!? 蓋が閉じたっ!?」
「どうやら異物と感知されたようだね」
上から飾りだとばかり思っていた蓋がばたん、と降りて口が閉まってしまったのだった。
ラインはしばらく考え込んでいたようだけど、
「気は進まないけど仕方ないな」
魔導具を抱え直して、小刀を二本取り出した。
「君は下がっているように」
そう言われ、入り口付近まで下がると、
「この魔物は普段はひとり(?)で行動するんだよ。そしてこれほど大きいのは一つしかなくてね、自力歩行で襲ってくるんだけど」
(ひええっ!!)
それが獲物を前にこんなに大人しいのはおかしい、とラインが続けた。
「何かあったら君はいったん、上へ戻るように」
そう告げてウツボカズラ(大)へ慎重に近付くライン。
(うーん、上へ戻れって言われてもなあ)
はっきり言ってそのつもりはないので、返事はしないでおく。
「……返事は?」
「う、はい」
(お見通し(白目)
もしそんなことになったら超特急で上へ行って、一瞬だけいたらまた超特急で戻ってやる、とこっそり気合を入れていると、
「何だろう。物凄く不安しかないんだけど」
「気のせいですよ」
「返しが早いっ!!」
そんなことを言っているうちに、ウツボカズラ(大)の根元に着いたラインは小刀をふるって、ウツボカズラ(大)を支えていた茎をスパッと切った。
とたん、ウツボカズラ(大)がくたり、と二つ折りになって倒れたっ!!
「おっと」
倒れかかってくるウツボカズラ(大)を避け、次々と小刀をふるう。
(はやっ!! ってか、こんなに早く済むならもっと早くできたんじゃ)
などと考えていると、最後の一つ(かなり上の方なので大変そう)に手をかけたラインが、
「――しまった」
「え、ええっ!!」
小刀が入った瞬間、最後のウツボカズラ(大)がラインに覆い被さるように倒れ込んで来た。
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