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46.攻防
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「動きを封じる」
「どうやってかな?」
「ロープを……あ、」
「動き回る蔦相手にロープは無効だよね。はい次」
「氷で凍らせる」
「悪くない案だけど、あの蔦を全部、凍らせられるのかな?」
「うっ」
「次は?」
一旦、ザイーツの街まで戻って来たあたし達は例の食虫植物擬き(人も捕食するみたいだけど、食人とまでは言いたくない)を倒すべく、作戦を立てていたのだけど。
どうもラインはこのメンバーであれ以上降りることには反対らしく、それを知ったあたしは何とか条件付きでも、とラインを説得している最中だったりする。
(植物だから、土魔法はNGだし、そうなると後は……)
「極小の火魔法」
「うーん、悪くないけどダンジョン内のことを考えると、……息がしづらくなり易い状況を生むのは感心しないね」
(今、絶対一酸化炭素中毒、って言い掛けたよね)
ラインが提示した条件は、『足手まといは困るから、例の階層主を自力で倒せる確実な作戦を立てられたら考えてもいいよ』だった。
もちろん、あたしはすかさず、
『修正を求めますっ!! 考えてもいいよ、じゃなくて、必ず連れて行く、と言って下さいっ!!』
そう突っ込んであげた。
(やだなあ。美人さんが舌打ちなんてしちゃいけないよ)
――小一時間後。
「続きは明日にしようか?」
「え、明日って!?」
「そう慌てなくても、流石にすぐには出発しないよ」
ラインに宥められ、ようやく作戦会議はお開きになった。
「っかー。やっと終わったぜっ!!」
疲れた、というようにカイン様が伸びをした。
「困りましたわね。貴女が妙案を出して下さらないと、私達はここへ置き去りになってしまいますのに」
(ぐっ、カサンドラ嬢、きっつ)
「でしたら、お嬢様がその『妙案』とやらをお出しになられたらよろしいのでは?」
「……セクトル、余計な口出しはよしなさい」
「失礼いたしました」
ちなみにここ、とある居酒屋の二階だったりする。
少し無理を言って(おカネの力ともいう)大部屋を片付けて貰って、そこに机と椅子を入れて会議室風にしてもらったのだけど。
セクトルさんは壁際に立ったまま控え、椅子に腰かけているのはライン、カイン様、カサンドラ嬢、そしてあたしの四人だった。
(う、罪悪感)
だけどこれ、ラインに言わせると使用人としてはごく普通の感覚なんだとか。
『いいかい? ここは身分制度がしっかりしている世界なんだ。決してあちらの常識で行動してはいけないよ』
そんなことを思い返していると、ノックの音がした。
「失礼します。お食事をお持ちしました」
(ん? 食事ならとっくに……)
そう思った時、ラインが立ち上がった。
「ああ。こうなると思って軽食を頼んでおいたよ」
「では、私が」
セクトルさんがトレイを受け取るとラインが、
「仕上げは俺がするから、少し貸して貰えないかな」
そうして受け取ったトレイを真ん中へ置く。
トレイの上にはお皿に載った黒パンが五つ。
そこへラインが、魔道具から出した瓶の蓋を開け、傾ける。
とたんに甘い香りが広がった。
「これ」
「木苺のソース。ああ、それと」
ハチミツもあるよ、と差し出されて逆らえる人なんているだろうか、いや、いるまい。
「うわ、すげぇ」
「いい香りですね」
これまた魔道具から出した、ライン特製ハーブティー。
あたしはすっかり忘れていた。
上手い話には裏がある。
美味しい食事は油断を誘うには充分だということを。
夜半、宿屋の扉を開ける人物がいた。
人目を憚るように路地裏を抜け、ダンジョンの入り口が見えたところでその人物は足を止めて振り返った。
「いい加減、姿を現したらどうだい?」
「あれ、知ってたの?」
あたしが隠れていた建物の陰から姿を見せるとラインは、
「君に尾行の才能はないみたいだね。それより」
どうして効かなかったのかな、睡眠薬。
物騒な言葉を続けてくれた。
「やっぱりそうだったんだ」
何か、ラインの分だけ少なかった気がしたんだよね。木苺のソース。
ラインは不思議そうにあたしを見た。
「そうだよ、木苺のソース。君、好きだろう」
「ああ、それ。ほとんどカイン様に取られました」
ちょうどその時、カサンドラ嬢とセクトルさんの議論()が白熱していたので、ラインも把握できなかったのだと
思う。
その時は、『幾ら王族でも、やっていいことといけないことがあるんですよっ!!』とめちゃくちゃお説教入ってたんだけど、見なかったのかな。
そう説明すると、ラインは額に指先を当てた。
「いや、だから……これは返答に迷うね」
幾ら偉い人でも人様の食べ物を横取りしてはいけません。
とあたしが胸を張って言うと、
「いやまあ、一応人数は減らしたし。だけど……」
何その、『一番面倒なのが残った』みたいな視線は。
「細かいことは気にしない気にしない」
「いや、しようよっ!!」
「どうやってかな?」
「ロープを……あ、」
「動き回る蔦相手にロープは無効だよね。はい次」
「氷で凍らせる」
「悪くない案だけど、あの蔦を全部、凍らせられるのかな?」
「うっ」
「次は?」
一旦、ザイーツの街まで戻って来たあたし達は例の食虫植物擬き(人も捕食するみたいだけど、食人とまでは言いたくない)を倒すべく、作戦を立てていたのだけど。
どうもラインはこのメンバーであれ以上降りることには反対らしく、それを知ったあたしは何とか条件付きでも、とラインを説得している最中だったりする。
(植物だから、土魔法はNGだし、そうなると後は……)
「極小の火魔法」
「うーん、悪くないけどダンジョン内のことを考えると、……息がしづらくなり易い状況を生むのは感心しないね」
(今、絶対一酸化炭素中毒、って言い掛けたよね)
ラインが提示した条件は、『足手まといは困るから、例の階層主を自力で倒せる確実な作戦を立てられたら考えてもいいよ』だった。
もちろん、あたしはすかさず、
『修正を求めますっ!! 考えてもいいよ、じゃなくて、必ず連れて行く、と言って下さいっ!!』
そう突っ込んであげた。
(やだなあ。美人さんが舌打ちなんてしちゃいけないよ)
――小一時間後。
「続きは明日にしようか?」
「え、明日って!?」
「そう慌てなくても、流石にすぐには出発しないよ」
ラインに宥められ、ようやく作戦会議はお開きになった。
「っかー。やっと終わったぜっ!!」
疲れた、というようにカイン様が伸びをした。
「困りましたわね。貴女が妙案を出して下さらないと、私達はここへ置き去りになってしまいますのに」
(ぐっ、カサンドラ嬢、きっつ)
「でしたら、お嬢様がその『妙案』とやらをお出しになられたらよろしいのでは?」
「……セクトル、余計な口出しはよしなさい」
「失礼いたしました」
ちなみにここ、とある居酒屋の二階だったりする。
少し無理を言って(おカネの力ともいう)大部屋を片付けて貰って、そこに机と椅子を入れて会議室風にしてもらったのだけど。
セクトルさんは壁際に立ったまま控え、椅子に腰かけているのはライン、カイン様、カサンドラ嬢、そしてあたしの四人だった。
(う、罪悪感)
だけどこれ、ラインに言わせると使用人としてはごく普通の感覚なんだとか。
『いいかい? ここは身分制度がしっかりしている世界なんだ。決してあちらの常識で行動してはいけないよ』
そんなことを思い返していると、ノックの音がした。
「失礼します。お食事をお持ちしました」
(ん? 食事ならとっくに……)
そう思った時、ラインが立ち上がった。
「ああ。こうなると思って軽食を頼んでおいたよ」
「では、私が」
セクトルさんがトレイを受け取るとラインが、
「仕上げは俺がするから、少し貸して貰えないかな」
そうして受け取ったトレイを真ん中へ置く。
トレイの上にはお皿に載った黒パンが五つ。
そこへラインが、魔道具から出した瓶の蓋を開け、傾ける。
とたんに甘い香りが広がった。
「これ」
「木苺のソース。ああ、それと」
ハチミツもあるよ、と差し出されて逆らえる人なんているだろうか、いや、いるまい。
「うわ、すげぇ」
「いい香りですね」
これまた魔道具から出した、ライン特製ハーブティー。
あたしはすっかり忘れていた。
上手い話には裏がある。
美味しい食事は油断を誘うには充分だということを。
夜半、宿屋の扉を開ける人物がいた。
人目を憚るように路地裏を抜け、ダンジョンの入り口が見えたところでその人物は足を止めて振り返った。
「いい加減、姿を現したらどうだい?」
「あれ、知ってたの?」
あたしが隠れていた建物の陰から姿を見せるとラインは、
「君に尾行の才能はないみたいだね。それより」
どうして効かなかったのかな、睡眠薬。
物騒な言葉を続けてくれた。
「やっぱりそうだったんだ」
何か、ラインの分だけ少なかった気がしたんだよね。木苺のソース。
ラインは不思議そうにあたしを見た。
「そうだよ、木苺のソース。君、好きだろう」
「ああ、それ。ほとんどカイン様に取られました」
ちょうどその時、カサンドラ嬢とセクトルさんの議論()が白熱していたので、ラインも把握できなかったのだと
思う。
その時は、『幾ら王族でも、やっていいことといけないことがあるんですよっ!!』とめちゃくちゃお説教入ってたんだけど、見なかったのかな。
そう説明すると、ラインは額に指先を当てた。
「いや、だから……これは返答に迷うね」
幾ら偉い人でも人様の食べ物を横取りしてはいけません。
とあたしが胸を張って言うと、
「いやまあ、一応人数は減らしたし。だけど……」
何その、『一番面倒なのが残った』みたいな視線は。
「細かいことは気にしない気にしない」
「いや、しようよっ!!」
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