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第2話 ???side
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(ここにもあの女はいなかったか)
とある国の酒場の一角。
麦酒の杯を前に浮かない顔の男がいた。
草臥れた旅装はその男がかなりの間旅をしてきたことを見る者に連想させる。
「どうした? しけた面してんな」
時おり酔った男が絡むが適当に躱す男の耳にある話が入ってきた。
「聞いたか? ミリオナ国の第3王子、姉から妹に鞍替えしたんだとよ」
「何だそれ? 結局同じ家ん中の話じゃないか? その姉ってよっぽどだったのかよ?」
「何でもその妹ってのが再婚相手の連れ子だが、凄い美女らしいぜ」
「継子ってことか?」
「お貴族様の考えるこっちゃ庶民には分からねぇな。まあでもそこまで美人ならそうしたくなるのも分からねぇこともないが」
「姉は地味だが、妹は金髪碧眼らしいぜ」
男は思わず立ち上がっていた。
「その話、詳しく聞かせてくれ。これは俺の奢りだ」
数日後、ミリオナ国の国境を越える男の姿があった。
(こんなところに来て手掛かりが来るとは)
足早に王都を目指す男の姿に迷いはなかった。
王都――。
男はギルドへ来ていた。
情報を集めるなら男にとってここが最適だった。
受付に身分証明のタグを見せ、ギルドマスターを呼び出すように伝える。
「かしこまりました」
幸いすぐに三階の部屋へ通された。
室内は執務室らしく書類があちらこちらに山積していたが、男は特に気にせず奥の机にいた男性に顔を向けた。
ギルドマスターは貫禄のある体型をしていたが、以前はかなり鍛えた冒険者だったことを窺わせた。
「当ギルドへようこそ。俺がここのギルドマスターのヘインズだ」
「俺はイーサン。ここへは聞きたいことがあって来た」
「Sランクの、それも『賞金稼ぎ』がここに来るとはな」
「分かっているなら話は早い。サンシェルジュ侯爵家に入ったという後妻のことなんだが――」
「おいおい、いきなりそんな話か。あそこは元子爵夫人とかで、あんたにはあんまり関係なさそうなんだがな」
相手がSランクでも砕けた口調を崩さないギルドマスターに男――イーサンは少しだけ態度を和らげたように見えた。
「いやそこで合っている。その母娘は金髪碧眼なんだろう」
「ああ。いかにもお貴族様らしい顔立ちをしてるな。どっちもえらい別嬪だ。見た感じはな」
含みのある言い方に、
「それで、どうなんだ?」
「どうとは?」
「言葉遊びはいい。情報料は幾らだ?」
「いや、そこまではいい。この辺でちょっと聞けば誰でも知ってる話だからな。何でもその母娘ってのがいい根性していてな、先にいた娘を虐待してる、って話だ」
イーサンの眉が上がった。
「娘をか?」
「ああ。普通は逆なんだがな。何故か侯爵は見て見ぬふり、いや見かねた友人らが何度か忠告したんだが、どうも聞く耳を持たないらしい」
ギルドマスターの言にイーサンは頷く。
「なるほど」
そんなイーサンの様子にギルドマスターは、
「何だか心当たりがあるようだな」
「まあな」
そのまま部屋を辞そうとするイーサンに、
「まあ待て。何やら事情があるようだが、相手はお貴族様だ。勝算はあるんだろうな?」
「大丈夫だ。ここのことは口にしない」
自信ありげに執務室を後にしたイーサンに、
「そういう意味じゃあなかったんだがな」
ギルドマスターの呟きは届かなかった。
とある国の酒場の一角。
麦酒の杯を前に浮かない顔の男がいた。
草臥れた旅装はその男がかなりの間旅をしてきたことを見る者に連想させる。
「どうした? しけた面してんな」
時おり酔った男が絡むが適当に躱す男の耳にある話が入ってきた。
「聞いたか? ミリオナ国の第3王子、姉から妹に鞍替えしたんだとよ」
「何だそれ? 結局同じ家ん中の話じゃないか? その姉ってよっぽどだったのかよ?」
「何でもその妹ってのが再婚相手の連れ子だが、凄い美女らしいぜ」
「継子ってことか?」
「お貴族様の考えるこっちゃ庶民には分からねぇな。まあでもそこまで美人ならそうしたくなるのも分からねぇこともないが」
「姉は地味だが、妹は金髪碧眼らしいぜ」
男は思わず立ち上がっていた。
「その話、詳しく聞かせてくれ。これは俺の奢りだ」
数日後、ミリオナ国の国境を越える男の姿があった。
(こんなところに来て手掛かりが来るとは)
足早に王都を目指す男の姿に迷いはなかった。
王都――。
男はギルドへ来ていた。
情報を集めるなら男にとってここが最適だった。
受付に身分証明のタグを見せ、ギルドマスターを呼び出すように伝える。
「かしこまりました」
幸いすぐに三階の部屋へ通された。
室内は執務室らしく書類があちらこちらに山積していたが、男は特に気にせず奥の机にいた男性に顔を向けた。
ギルドマスターは貫禄のある体型をしていたが、以前はかなり鍛えた冒険者だったことを窺わせた。
「当ギルドへようこそ。俺がここのギルドマスターのヘインズだ」
「俺はイーサン。ここへは聞きたいことがあって来た」
「Sランクの、それも『賞金稼ぎ』がここに来るとはな」
「分かっているなら話は早い。サンシェルジュ侯爵家に入ったという後妻のことなんだが――」
「おいおい、いきなりそんな話か。あそこは元子爵夫人とかで、あんたにはあんまり関係なさそうなんだがな」
相手がSランクでも砕けた口調を崩さないギルドマスターに男――イーサンは少しだけ態度を和らげたように見えた。
「いやそこで合っている。その母娘は金髪碧眼なんだろう」
「ああ。いかにもお貴族様らしい顔立ちをしてるな。どっちもえらい別嬪だ。見た感じはな」
含みのある言い方に、
「それで、どうなんだ?」
「どうとは?」
「言葉遊びはいい。情報料は幾らだ?」
「いや、そこまではいい。この辺でちょっと聞けば誰でも知ってる話だからな。何でもその母娘ってのがいい根性していてな、先にいた娘を虐待してる、って話だ」
イーサンの眉が上がった。
「娘をか?」
「ああ。普通は逆なんだがな。何故か侯爵は見て見ぬふり、いや見かねた友人らが何度か忠告したんだが、どうも聞く耳を持たないらしい」
ギルドマスターの言にイーサンは頷く。
「なるほど」
そんなイーサンの様子にギルドマスターは、
「何だか心当たりがあるようだな」
「まあな」
そのまま部屋を辞そうとするイーサンに、
「まあ待て。何やら事情があるようだが、相手はお貴族様だ。勝算はあるんだろうな?」
「大丈夫だ。ここのことは口にしない」
自信ありげに執務室を後にしたイーサンに、
「そういう意味じゃあなかったんだがな」
ギルドマスターの呟きは届かなかった。
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