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「はいっ、そうちゃんお茶碗かして」
「…えっ?」
「おかわり、よそってあげるから」
「あ、いえ、僕はもう大丈夫です。もうお腹いっぱいなので…」
「えぇっ?!たった一膳だけ?夜中にお腹すくわよ!」
「や、そんなことないので…、大丈夫です。ありがとうございます。ハンバーグすごく美味しかったです」
「そーお?それならよかったけど…」
「おかん、颯太は俺と違って少食なんだよ。おかわり」
「自分でよそいなさい!…へぇ、そうなの。やっぱり文化部だからかしらねぇ。美術部楽しい?」
「はい、楽しいです」
「なんで俺にはよそってくれねんだよ」
おかんは俺には目もくれず、颯太の近況を根掘り葉掘り聞いている。息子と仲良しのご近所のお利口さんだった坊やが可愛らしいままに成長しているのが嬉しくてしかたないようだ。俺は渋々立ち上がって自分でご飯のおかわりをよそう。
「へー、文化部でも夏合宿ってあるのねぇ」
「はい。今年は海辺のホテルに宿泊して、海岸でサンドアートを作るんです」
「まぁ!すごい!楽しそうねぇ。おばちゃんもそうちゃんの作品見に行きたいなー」
見に行きたいなー、じゃねぇよ。まったく。おかんは礼儀正しくて可愛い颯太にメロメロでさっきから会話を独り占めだ。このまま「今夜は3人で寝ましょうか」とか言い出しそうなテンションで怖い。
「あ、そうそう、今夜だけどね」
ぎく。
「お父さん、飲み会になったらしいから、母さん後で迎えに行ってくるから。…夜中に出かけると思うけど、気にせず樹の部屋でゆっくり寝ててね、そうちゃん」
「あ、はい。ありがとうございます」
おぉ…、よかったー。焦ったわ。マジで一緒に寝ようとか言い出すんかと……、
………………え?
……よ、夜中に、出かける……?
……んじゃ、お、俺は、俺たちは、…………こっ、……この家の中に、ふ、ふ、……二人きりってことか?!夜中に?!マジか!!
その事実に気付いた途端、急に心臓がバクバクと激しく鳴り始めた。…い、いや。いやいやいや。だから何だっていうんだ、おい。別に、ふ、二人きりになったからって、……颯太と何かするわけじゃあるまいし。何を期待してるんだ、俺は。いやだから、別に期待はしてない。何を考えてるんだっていう。
でもヤりたい盛りの俺の脳内では、意に反してやらしい妄想が突然繰り広げられ始める。親が出ていき、二人きりになった暗い部屋の中、……見つめ合う俺たち。す、すごい。こんなチャンス、滅多にあることじゃない。颯太に触りたい。そう思った俺の心を見透かしたかのように、颯太が色っぽく俺に問いかける。
『ねぇ、樹…。樹のベッドに、一緒に入ってもいい…?』
『えっ?!……や、でも……』
『…二人きりなんだよ、今。……何も、しないの?』
「~~~~~~っ!!」
アホか俺は!アホか!颯太が、こ、ここにいるっていうのに……!なんちゅう妄想を……!
思わず颯太の方を見ると、何故か颯太もほんのりと赤い顔をしてこっちを見ていた。
バッチリ目が合ってしまって、俺は慌てて目を逸らした。
「ごちそうさまでした。ほんとに美味しかったです」
「まぁ~そう?よかったわー。こちらこそデザートのプリン、ありがとね、お母さんによろしく言っておいて」
「はい」
食事が終わり、俺はさっさと先にソファーに座りテレビを見ていた。変な妄想をしている時に颯太と目が合ってしまって、なんか気まずい。そ、颯太が何かを勘付いてなければいいのだが……。
そんなことあるわけないんだけど、後ろめたさは人に不自然な行動をさせるものだ。
颯太も何故かさっきから俺と一切目を合わせず、おかんの食器洗いを手伝っている。まぁ~ありがとう~、気が利くわねぇ、うちの誰かさんとは大違いだわぁ~と、おかんがわざとらしく大きな声を上げているが、今そっちに行きづらい俺は無視した。
ふいにおかんが言った。
「お風呂どうするー?あんたたち、一緒に入る?」
「いえっ!」
「や!別々に入るよ!」
俺たちは弾かれたように同時に答えた。
「…あっそ」
おかんはキョトンとしていた。
先に俺がさっさと風呂に入り、次に颯太が入った。風呂上がりの颯太の濡れた髪を見るだけでなんかドキドキする。やたらと色っぽい。…俺がそういう目で見てるからだろうか。
「…髪乾かせよ。風邪引くぞ」
「引かないよ。夏だよ」
「エアコン入れてるだろうが」
「ふふ。お父さんみたい」
「誰がお父さんだ」
「はは。…その前に自分が乾かしなよ。先にお風呂入ったのにまだびしょびしょじゃん」
……あ、そうだった。こいつに気をとられててすっかり忘れてた。ほんとアホだな俺…。
ドライヤーを使うために脱衣所に戻ろうとしている俺に、颯太が何気なく言った。
「…なんか樹、髪が濡れてると色っぽく見えるね」
「?!…………はっ?アホか」
お……、同じこと考えてんじゃねぇよ!
動揺してろくな返事ができなかった。
「…えっ?」
「おかわり、よそってあげるから」
「あ、いえ、僕はもう大丈夫です。もうお腹いっぱいなので…」
「えぇっ?!たった一膳だけ?夜中にお腹すくわよ!」
「や、そんなことないので…、大丈夫です。ありがとうございます。ハンバーグすごく美味しかったです」
「そーお?それならよかったけど…」
「おかん、颯太は俺と違って少食なんだよ。おかわり」
「自分でよそいなさい!…へぇ、そうなの。やっぱり文化部だからかしらねぇ。美術部楽しい?」
「はい、楽しいです」
「なんで俺にはよそってくれねんだよ」
おかんは俺には目もくれず、颯太の近況を根掘り葉掘り聞いている。息子と仲良しのご近所のお利口さんだった坊やが可愛らしいままに成長しているのが嬉しくてしかたないようだ。俺は渋々立ち上がって自分でご飯のおかわりをよそう。
「へー、文化部でも夏合宿ってあるのねぇ」
「はい。今年は海辺のホテルに宿泊して、海岸でサンドアートを作るんです」
「まぁ!すごい!楽しそうねぇ。おばちゃんもそうちゃんの作品見に行きたいなー」
見に行きたいなー、じゃねぇよ。まったく。おかんは礼儀正しくて可愛い颯太にメロメロでさっきから会話を独り占めだ。このまま「今夜は3人で寝ましょうか」とか言い出しそうなテンションで怖い。
「あ、そうそう、今夜だけどね」
ぎく。
「お父さん、飲み会になったらしいから、母さん後で迎えに行ってくるから。…夜中に出かけると思うけど、気にせず樹の部屋でゆっくり寝ててね、そうちゃん」
「あ、はい。ありがとうございます」
おぉ…、よかったー。焦ったわ。マジで一緒に寝ようとか言い出すんかと……、
………………え?
……よ、夜中に、出かける……?
……んじゃ、お、俺は、俺たちは、…………こっ、……この家の中に、ふ、ふ、……二人きりってことか?!夜中に?!マジか!!
その事実に気付いた途端、急に心臓がバクバクと激しく鳴り始めた。…い、いや。いやいやいや。だから何だっていうんだ、おい。別に、ふ、二人きりになったからって、……颯太と何かするわけじゃあるまいし。何を期待してるんだ、俺は。いやだから、別に期待はしてない。何を考えてるんだっていう。
でもヤりたい盛りの俺の脳内では、意に反してやらしい妄想が突然繰り広げられ始める。親が出ていき、二人きりになった暗い部屋の中、……見つめ合う俺たち。す、すごい。こんなチャンス、滅多にあることじゃない。颯太に触りたい。そう思った俺の心を見透かしたかのように、颯太が色っぽく俺に問いかける。
『ねぇ、樹…。樹のベッドに、一緒に入ってもいい…?』
『えっ?!……や、でも……』
『…二人きりなんだよ、今。……何も、しないの?』
「~~~~~~っ!!」
アホか俺は!アホか!颯太が、こ、ここにいるっていうのに……!なんちゅう妄想を……!
思わず颯太の方を見ると、何故か颯太もほんのりと赤い顔をしてこっちを見ていた。
バッチリ目が合ってしまって、俺は慌てて目を逸らした。
「ごちそうさまでした。ほんとに美味しかったです」
「まぁ~そう?よかったわー。こちらこそデザートのプリン、ありがとね、お母さんによろしく言っておいて」
「はい」
食事が終わり、俺はさっさと先にソファーに座りテレビを見ていた。変な妄想をしている時に颯太と目が合ってしまって、なんか気まずい。そ、颯太が何かを勘付いてなければいいのだが……。
そんなことあるわけないんだけど、後ろめたさは人に不自然な行動をさせるものだ。
颯太も何故かさっきから俺と一切目を合わせず、おかんの食器洗いを手伝っている。まぁ~ありがとう~、気が利くわねぇ、うちの誰かさんとは大違いだわぁ~と、おかんがわざとらしく大きな声を上げているが、今そっちに行きづらい俺は無視した。
ふいにおかんが言った。
「お風呂どうするー?あんたたち、一緒に入る?」
「いえっ!」
「や!別々に入るよ!」
俺たちは弾かれたように同時に答えた。
「…あっそ」
おかんはキョトンとしていた。
先に俺がさっさと風呂に入り、次に颯太が入った。風呂上がりの颯太の濡れた髪を見るだけでなんかドキドキする。やたらと色っぽい。…俺がそういう目で見てるからだろうか。
「…髪乾かせよ。風邪引くぞ」
「引かないよ。夏だよ」
「エアコン入れてるだろうが」
「ふふ。お父さんみたい」
「誰がお父さんだ」
「はは。…その前に自分が乾かしなよ。先にお風呂入ったのにまだびしょびしょじゃん」
……あ、そうだった。こいつに気をとられててすっかり忘れてた。ほんとアホだな俺…。
ドライヤーを使うために脱衣所に戻ろうとしている俺に、颯太が何気なく言った。
「…なんか樹、髪が濡れてると色っぽく見えるね」
「?!…………はっ?アホか」
お……、同じこと考えてんじゃねぇよ!
動揺してろくな返事ができなかった。
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